中国のフィンテック大手アント・グループはスーパーアプリ「支付宝(アリペイ)」の大幅刷新を試験しており、AIエージェントを軸とする新たなインターフェースを導入する計画だ。最大のライバルであるウィーチャット(微信)との利用者獲得競争が一段と激しくなりそうだ。

事情に詳しい複数の関係者やブルームバーグ・ニュースが確認したデモ動画によると、アントはユーザーがアリペイの人工知能(AI)に対し、配車サービスの予約やコーヒーの注文、フードデリバリーの手配などをテキストや音声で依頼できる新たなインターフェースを取り入れる予定だ。

関係者によれば、中国語で「阿宝(Ah Bao)」と呼ばれる同アシスタントは、ユーザーの承認を得た上で投資信託の購入など資産運用関連の業務も実行できるようになる見込みだ。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。

アントによる今回のアップデートは、AI業界全体に広がる大きな潮流を反映している。ユーザーに代わって複雑な作業を実行するAIエージェントの利便性が業界の主なテーマとなっており、アリペイやテンセント・ホールディングス(騰訊)のウィーチャットは、その実現を目指している。

こうしたスーパーアプリは、公共料金の支払いから旅行や娯楽の予約まで、中国人の日常生活のあらゆる場面に浸透している。また、中国では自作AIエージェント向けのOpenClaw(オープンクロー)フレームワークが広く受け入れられており、市民の高い関心も示されている。

テンセントはアントと同じく、ウィーチャット内でAIエージェントの試作版をテストしている。アリペイとウィーチャットはいずれも10億人超のユーザーを抱えており、日常的なデジタル業務の自動化を実現するAIアシスタントをモバイルソフトウエアにどう実装するか、そのモデルケースとして注目を集める。

この分野でより優れた成果を上げた企業が、中国インターネット業界における重要な競争で優位に立つことになる。

テンセントは、オープンクロー人気を追い風に相次いで新製品を投入しており、極めて速いペースで展開を進めている。一方、現在は社内テスト段階にある新バージョンのアリペイについては、リリース時期がまだ確定していないという。アントの担当者はコメントを控えた。

主要ネット企業は消費者を自社のエコシステム内に囲い込むため、サービス全体にAI機能を組み込んでいるが、そのコストは増えている。アントの2025年10-12月期利益は、医療AI事業や大規模言語モデル(LLM)の開発に向けた投資拡大を受け、79%減少した。

中国当局によって新規株式公開(IPO)が阻止されたアントは、融資事業の拡大に制限が課された後、AI分野に経営資源を集中的に投入してきた。

アントは昨年、医療相談や基本的な調理作業が可能な同社初のヒューマノイドロボットを公開。また、「AQ」と呼ばれるヘルスケアアプリも開発しており、昨年9月時点の利用者数は1億4000万人に達している。

原題:Ant Prepares for High-Stakes AI Overhaul of Billion-User App (1)(抜粋)

--取材協力:Zheping Huang.

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