(ブルームバーグ):ダイアメーター・キャピタル・パートナーズの共同創業者、スコット・グッドウィン氏が米サッカー連盟の大口寄付者となったきっかけを作ったのは、2024年夏、友人たちへ何気なく送った1通のテキストメッセージだった。同氏は2026年のワールドカップまでに、より優れた監督を男子代表チームに迎えるチャンスだと友人らに訴えた。
米国代表はコパ・アメリカのグループステージで敗退し、不本意な結果に終わった。その数カ月後、アルゼンチン人のマウリシオ・ポチェッティーノ氏の監督就任が発表された。その資金の調達には、グッドウィン氏や富豪のケン・グリフィン氏らが関わっていた。
欧州や中南米のサッカー協会には、公的資金の支援を受けるケースもあるが、米国サッカー連盟には直接的な政府支援がない。その不足分を富裕層の寄付が補っており、昨年の収入2億6400万ドル(約423億円)のうち、5000万ドルが寄付金だった。しかもその半分以上には、使途の制限が設けられていた。

フランスで生まれ、米コネティカット州で育ち、スペインのマドリードで学生生活を過ごしたグッドウィン氏(46)は、熱心なサッカーファンだ。米代表監督だったグレッグ・バーホルター氏に不満を抱き、元代表選手らとグループチャットで意見を交換した。
2024年7月にバーホルター監督が解任されると、後任候補としてメディアでは、実力で定評があるドイツ人のユルゲン・クロップ氏の名前が浮上した。連盟に同氏を招く資金力はないと友人たちは指摘したが、グッドウィン氏は「それなら私が払う。本気だ」と申し出たと、当時を振り返った。
その後、元代表選手アレッコ・エスカンダリアン氏の紹介で、グッドウィン氏は米国サッカー連盟のJT・バトソン最高経営責任者(CEO)と、ニューヨークのイタリアンレストランで会談した。
バトソン氏が次期監督の有力候補として挙げた3人に、ポチェッティーノ氏が含まれていた。グッドウィン氏は「選手から親しまれるよりも、尊敬を集める人物が必要だった」と振り返り、適任者の招聘を支援することは愛国心からの行為だと考えたと語った。

交渉の結果、連盟はポチェッティーノ氏と2026年ワールドカップ終了までの契約締結に動いた。バトソン氏から必要な寄付額を聞いたグッドウィン氏は、その大きさに驚き、友人に協力を求めた。その相手がヘッジファンド、シタデルの創業者ケン・グリフィン氏だった。事情を知る関係者によると、ポチェッティーノ氏とスタッフの給与、さらに前監督の契約解除費用を含め、総額は約2000万ドルだったという。連盟は契約の詳細についてコメントを控えた。

ポチェッティーノ氏の招聘を支えた寄付は、米国サッカー界で進む大きなトレンドの一例に過ぎない。女子サッカークラブを複数所有するミシェル・カン氏は、女子代表チーム支援のため5000万ドル超の寄付を約束し、ホームセンター大手ホーム・デポ共同創業者のアーサー・ブランク氏も、今年新設されたトレーニングセンター建設に5000万ドルを拠出した。連盟によると、寄付収入は近く年間7000万ドルを超える見込みで、2024年の約10倍に達する。

グッドウィン氏にとって、この寄付は単なる愛国心ではなく投資でもある。同氏はポチェッティーノ氏と親交を深め、ロンドンやパームビーチで食事を共にする仲になったという。
もっとも、ポチェッティーノ氏(54)は代表選手の選考や国外クラブとの接触を巡って、批判も受けている。
結局のところ、ポチェッティーノ氏の評価は米国がワールドカップでどこまで勝ち進むかによって決まる。ベスト16進出が最低限の期待だとグッドウィン氏は語った。同氏は自身の投資を見守るため、米国チームの全試合を現地観戦する予定だ。
「監督に迎える手助けをしたことで、私の役割は終わった」とグッドウィン氏は語る。「あとは監督と選手たちが全力を尽くすだけだ」と続けた。

原題:Hedge Fund Manager Helps Bankroll US Bid for World Cup Glory(抜粋)
--取材協力:Daniel Cancel、Ari Altstedter.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.