2社が圧倒的シェアを占める肥満治療薬市場の切り崩しを3番手グループが狙っているが、それは容易ではない。

ニューオーリンズで開催された米国糖尿病学会(ADA)の会合で、肥満治療薬で首位の米イーライリリーは次世代の治療薬「レタトルチド」のデータを公表。約2年間で患者の体重を30%減少させる助けになることを示し、その優位性をあらためて印象付けた。

同市場で2位のデンマーク企業ノボノルディスクは、米国で1月に販売を開始した主力の肥満症治療薬「ウゴービ」の錠剤について、処方件数が300万件を超えたと発表した。

これに対し、2強を追う企業の一部は苦戦している。独ベーリンガーインゲルハイムの「サーボデュタイド」は減量効果で競合に見劣りする上、嘔吐(おうと)の発生率も高かったことがデータで示された。これが嫌気され、同薬のライセンスを付与されているデンマークのジーランド・ファーマは8日の市場で株価が一時27%下落した。

スイスのロシュ・ホールディングは、より副作用の少ない代替薬として自社製品を売り込んでいる。だが、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストによると、効果はイーライリリーの類似薬に及ばなかった。

ベーリンガーやロシュ、さらに英アストラゼネカ、米国のファイザー、アムジェンなどは、将来的には減量効果の大きさだけで治療薬が選ばれる時代ではなくなり、利便性や副作用の程度、肥満に伴うさまざまな疾患への効果なども、治療薬を選択する上で伝えられるべきだと主張している。

ベーリンガーの米国医薬品部門を率いるブライアン・ヒルバーディンク氏はインタビューで、「誰が最も大きな減量効果を示せるかという競争から変わる必要がある」と述べた。

しかし、2強であるリリーとノボも、同じところに目を付けている。ノボのマイク・ドゥスター最高経営責任者(CEO)は7日のブルームバーグとのインタビューで、最近注目を集める長寿の分野でも自社製品が役割を果たせる可能性があるか探っているところだと説明した。

ノボノルディスクのマイク・ドゥスターCEO

リリーの心臓・代謝部門責任者、ケン・カスター氏は、同社の報道向け説明会で、太り過ぎまたは肥満の人は世界で数十億人いるのだから、全員が一つの薬で満足するとは考えられないと指摘。「今後は、1つの薬を全員に適用するようなアプローチから移行していく」と語った。

減量が必要な体重、副作用への耐性、抱えている併存疾患は、患者ごとに大きく異なる。利便性を重視する患者もいれば、最大限の減量効果を求める患者もいる。睡眠時無呼吸症候群や心疾患、ひざの痛みなど、複数の疾患を抱えている患者も多い。

ヘルスケア業界に特化した投資銀行リーリンク・パートナーズのアナリスト、デービッド・ライジンガー氏はリポートで、「減量の質、筋肉量の維持、そして減量後の体重維持が次のフロンティアになる」と指摘した。

ライジンガー氏によると、ADA会合で医師たちが特に感心していたのは、リリーのレタトルチドがこれまで研究されていたより少ない用量でも、患者の体重を19%減らす効果を示したことだという。

ニューオーリンズで開催された米国糖尿病学会会合

医師らはコレステロール低下薬のスタチンが普及した時を引き合いに出し、患者が薬を継続的に服用しやすくなる結果だと評価したと、ライジンガー氏は述べた。

「スタチン並みに簡単で、市場が必要としている身近で頼れる治療法という条件を満たしている」と同氏は論じた。

肥満治療薬は、継続して服用しないと効果が表れない。研究者らの推計によると、GLP-1製剤の肥満症治療薬を使用する患者の50-75%が1年以内に服用を中止しており、長期的な服薬継続が最大の課題の一つとなっている。

治療を中止した患者は体重が再び増加することが多く、治療で当初得られた健康上の利益の多くを失うことになる。

リリーの新薬は、ひざの変形性関節症による痛みや睡眠時無呼吸症候群に対しても顕著な効果を示した。現在流通している肥満治療薬とは異なり、レタトルチドは3種類の腸内ホルモンを模倣する作用を持つ。同社はこの薬が肝臓や心臓、腎臓の疾患、背中の痛みなどを抱える患者にも有効かどうかを調査している。

原題:Lilly’s 30% Weight Loss Sets High Bar for Obesity Drug Race(抜粋)

--取材協力:Ashleigh Furlong、Sonja Wind.

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