変動の大きい韓国株式市場を世界ランキングの上位に押し上げてきた人工知能(AI)への投資熱は、同国の国債市場に重くのしかかっている。

韓国国債は今年、現地通貨建てで7.5%下落し、ブルームバーグが追跡する44市場で最悪のパフォーマンスとなっている。指標となる3年債利回りは5日、約3.9%に上昇し、2023年以来の高水準を付けた。

国債売りの中心にあるのは、債券市場には強すぎる成長ストーリーだ。AI投資と半導体需要の急増が韓国経済を再び勢いづかせ、物価を押し上げた。その勢いを抑えるため、韓国銀行(中央銀行)が利上げを迫られるとの見方も強まっている。

自国の国債市場が圧力に直面しているのは韓国だけではない。世界的に歳出拡大やイラン戦争に伴うエネルギー価格上昇がインフレ圧力を高めている。ただ、アジアの半導体拠点である韓国では圧力がより強い。サムスン電子とSKハイニックスに投資資金が向かい、株式市場への資金流入と値動きの荒さを強めているためだ。マンション価格の高騰で既にインフレは刺激されていた。さらに、韓国ウォンの下落も輸入コスト上昇への懸念を招き、韓国中銀の追加利上げ観測を強めている。

信栄証券の債券ストラテジスト、チョ・ヨング氏は国債市場の状況について「悪循環が悪循環を呼んでいる」と指摘。「現時点で明確な出口は見えない」と述べた。

利回りは韓国中銀の今後の引き締めサイクルを見越して上昇している。スワップ市場は、政策金利が2.5%から3.25%に引き上げられるとの見方を織り込み、年内少なくとも3回の利上げを見込んでいる。

チョ氏は韓国の3年債利回りと10年債利回りが今年、それぞれ4%、4.4%まで上昇すると予想する。

半導体部門の好況と韓国総合株価指数(KOSPI)の約80%上昇を受け、韓国中銀は今年の成長率予想を従来の2%から2.6%に引き上げた。物価上昇も利上げ論を後押ししている。5月のコアインフレ率は2.5%と、エネルギー以外にも物価圧力が広がっていることを示した。このデータは、新たに韓国中銀総裁に就任したシン・ヒョンソン氏のタカ派姿勢を支える。

タカ派色が鮮明だった直近の金融政策決定会合後、「債券市場は見放されたのではないかと思わざるを得ない」とチョ氏は述べた。

韓国政府は先週、債券市場を注視し、過度なボラティリティーには迅速に対応すると表明した。財政経済省と韓国中銀の当局者が発表資料で示した。

供給リスク

進歩(革新)系の現政権の下で半導体販売による税収が膨らむ中、財政歳出の拡大に伴う国債増発リスクも市場の焦点となる。政府当局者は3月、補正予算の財源として追加発行は行わないと強調していたが、さらなる補正予算を巡る協議が浮上し、トレーダーを神経質にさせている。

27年予算案で大規模な財政パッケージが盛り込まれれば、政策金利に上振れリスクが生じる可能性もある。KB証券の債券アナリスト、イム・ジェギュン氏は、韓国中銀が政策金利を3.5%に引き上げれば、10年債利回りは4.4%にまで上昇すると予想する。

一方、利回りの急上昇を受け、政策当局者は市場への関与を異例の形で強めている。先月以降、財政経済省の国債担当当局者の一部は債券ディーラーや資産運用会社に電話をかけ、市場心理やポジションを探っている。

当局はまた、メッセージアプリ「カカオトーク」の非公開チャットルームを市場参加者や調査担当者と設け、市場状況をリアルタイムで監視している。

ボラティリティー抑制のためのより直接的な措置として、政府は6月の国債発行予定額を5月に比べて約21%削減した。削減は主に長めの年限が対象となった。

それでも、足元の流れは当面続く可能性が高い。イーベスト投資証券の債券アナリスト、ウ・ヘヨン氏は「下期も当面、金利は上昇方向に偏るだろう」と述べた。

原題:Korea’s AI Impact Sparks Pressure Across Government Bond Market(抜粋)

--取材協力:近藤雅岐.

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