米テキサス州選出のベテラン共和党上院議員、ジョン・コーニン氏は、トランプ大統領の手によって政治生命を断たれた。大統領が支持したパクストン州司法長官が予備選で勝利し、共和党支持層に対するトランプ氏の求心力が改めて示された。一方でこの展開は、今後数カ月の政権運営に逆風となる可能性もある。

不祥事続きのパクストン氏にコーニン氏が敗北を喫したことにより、これまで「共和党優位」とみられていたテキサス州上院選は、民主党にも勝機が生まれた。超党派のクック・ポリティカル・リポートはテキサスが「完全な激戦州になった」と分析した。共和党は同州の選挙に巨額の資金を投入せざるを得なくなる見通しだ。

テキサス州オースティンでスピーチするコーニン米上院議員(中央)

さらに今回の結果は、予備選敗退や引退で、失うものがなくなった共和党上院議員らを勢いづけている。ノースカロライナ州のティリス議員やルイジアナ州のカシディ議員らはすでに、トランプ政権に対する抵抗勢力となりつつある。

コーニン議員自身はこれまで、トランプ氏が推し進める政策に99.2%の割合で賛成票を投じるなど、忠実な姿勢を見せてきた。2024年大統領選での支持表明が遅れたこと以外、大きな対立はなかったが、パクストン氏は銃規制や移民政策を理由に、コーニン議員を「名ばかり共和党員(RINO)」と非難した。

トランプ大統領はソーシャルメディアへの投稿でパクストンを祝福し、「大規模で美しい集会」を開くと表明しつつ、「ジョン(コーニン議員)はこれからもずっと私の友人だ」と述べ、関係修復も図った。

ただ、残り7カ月の任期でコーニン議員が反トランプ陣営に回れば、政権にとって大きな脅威となり得る。コーニン議員は敗北後、「今後7カ月、議員としての仕事を続ける」とだけ語り、記者団の質問には答えなかった。

抵抗勢力が誕生

共和党上院指導部の重鎮として、コーニン議員は資金集めにも強く、将来の院内総務候補とも目されていた。そのため、政権への抵抗勢力になれば影響力は大きい。

同様の動きはルイジアナ州選出のカシディ上院議員にも見られる。カシディ議員は予備選敗北後、イラン戦争終結決議案の審議入りに賛成し、ホワイトハウス大宴会場の建設費や、司法省が新設した約17.8億ドル(約2800億円)規模の「政府の武器化」被害者救済基金を批判した。この基金は共和党上院議員への資金提供にも使われ得るとされており、党内で強い反発を招いている。

共和党予備選の敗北を認めたカシディ上院議員(中央、ルイジアナ州バトンルージュで、5月16日)

ティリス議員やメーン州のコリンズ議員、ネブラスカ州のリケッツ議員らは、この基金への制限を要求。マコネル元上院院内総務も、暴徒にも補償金が支払われる可能性があることを「愚かで不道徳」と非難し、ティリス議員に加わった。

ノースカロライナ州選出のティリス上院議員

上院では共和党議員1人の造反でも、法案や人事に影響を与え得る。これまではトランプ氏への反乱は考えにくかったが、予備選シーズンが進み、不満を抱く議員が増える中、これが大きなうねりとなる可能性は高まりつつある。

背景には、トランプ氏の低支持率と経済への不満もある。消費者心理は過去最低を記録し、キニピアック大学の世論調査では経済運営への支持率は33%、不支持は64%だった。無党派層の70%が不支持と答えている。

政治的な潮目

不満を抱く議員は、敗北組や引退組に限らない。コリンズ議員やアラスカ州のマカウスキ議員もトランプ氏に距離を置くことで知られる。ただ、昨年は減税延長を目指す共和党の結束で、大型減税・歳出法案可決にマカウスキ、カシディ両議員は協力していた。

カシディ上院議員(左)とマカウスキ上院議員(右、米連邦議会議事堂、2021年)

しかし当時と今では状況が異なる。トランプ氏は政敵に対する報復キャンペーンを強め、イスラエルとともにイラン戦争を始めたほか、ホワイトハウス大宴会場の建設を強行、「政府の武器化」被害者補償基金の創設などを進め、共和党内の空気は一変した。

テキサス州では民主党候補のジェームズ・タラリコ氏が勢いを見せている。オバマ元大統領とともに選挙活動を行い、エネルギー価格や税制政策を打ち出し、今年第1四半期だけで2700万ドルを集めた。

Photographer: Joel Angel Juarez/Getty Images

テキサス州は長年、民主党の手の届かないところにあった。同党は1988年を最後に、この州から上院議員を出していない。しかしタラリコ氏は強力な資金調達能力と、有権者が重視する政策案を打ち出し、世論調査でも高い支持率を得ている。

また、テキサス州は選挙コストにおいても全米屈指の州だ。パクストン氏の勝利により、共和党は本来別の地域に使いたかった数億ドル規模の資金をテキサス州に投じざるを得なくなる恐れがある。上院での多数派奪還に4議席純増を必要とする民主党にとって、これはさらなる政治的追い風となる。

ティリス議員は先週、自身や多くの共和党議員が抱く懸念を率直に語った。

「11月の選挙で共和党は善戦しなくてはならない。しかし愚かなことばかりしていては、そのチャンスをみすみす失ってしまう」とティリス議員は述べた。

原題:Trump’s Defeat of Cornyn Is a Win for Him, But Also Democrats(抜粋)

--取材協力:Bill Allison、Joe Lovinger、Erik Wasson.

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