日本の「コンビニ」は愛されている。多忙な親や空腹のサラリーマンにとっての生命線であり、訪日客にとっては必見の観光スポットでもある。

だが、最初から歓迎されていたわけではなかった。日本で1974年にセブン-イレブン1号店が開業して以来、現在では各チェーン合わせて約6万店に達する日本のコンビニエンスストアだが、さまざまな問題の元凶として批判されてきた。

個人商店を圧迫し、地方衰退を招き、人の孤独を加速させたというものだ。批判派によれば、コンビニは「奇妙に冷たく無愛想な場所」であり、日本の伝統的でより温かみのある商店街を破壊した存在だった。

「コンビニの父」として知られた鈴木敏文氏が先週、93歳で死去した。セブン-イレブンを日本に導入し、日本人の好みに合わせて業態を抜本的に作り替え、そのモデルを海外へ逆輸出したのが鈴木氏だ。

成功の背景には、批判を退けるタイミングを見極める力があった。鈴木氏の死は、コンビニへの批判の妥当性を問い直すだけでなく、セブン-イレブンの親会社セブン&アイ・ホールディングスの苦境が続く中で、型破りな経営手法の価値を改めて考える契機となる。

鈴木氏は2019年のインタビューで、「いま振り返ってみても、あらゆることに全部反対されてきた。そこにやりがいを感じて1つひとつ挑戦していったからいまがあると思っています」と自身の哲学について語っていた。

そもそも、セブン-イレブン事業を立ち上げる段階から社内の反対を乗り越えなければならなかった。後にセブン&アイの「i」となるイトーヨーカドーの幹部だった1960年代後半、米国でコンビニエンスストアという業態に初めて触れた。

鈴木氏が日本でも成功すると主張したことは、当時の常識に反していた。日本の小売り流通システムは小規模小売店が中心であり、規模を必要とするモデルには向かないというのが、当時のイトーヨーカドー社長も共有していた考え方だった。

鈴木氏はその反対を退けた。しかし同時に、米国型モデルを日本向けに適応させ、コンビニエンスストアを「コンビニ」へと進化させる必要もあった。

小規模店舗にとって不可欠なのは、品質とアクセスの良さ、利便性だと考え、これらを徹底的に追求した。こうして鈴木氏の下でセブン-イレブンは、日本人があらゆる用事を済ませる場所になった。

1987年には公共料金支払いを導入し、2001年にはATMを設置するなど金融サービスを拡充したほか、コーヒー販売でも存在感を示した。日本国内では、コーヒーを提供するセブン-イレブン店舗数は、米国のスターバックス店舗数を上回っている。

鈴木敏文氏(2013年)

鈴木氏の革新は店舗そのものにとどまらない。コンビニが販売する食品をおいしくしただけでなく、1978年におにぎりを導入したことで、日本人の食生活そのものを変えた。

それまでおにぎりは家庭料理と見なされ、旅行や農作業時に持参するものだった。しかし今では食生活を象徴する定番となり、セブン-イレブンだけでも年間21億個余りを販売している。

鈴木氏によると、顧客ニーズに応じて各店舗オーナーが発注を行い、本部が在庫配分を決めない世界初のチェーンストアにもなった。

同氏が2016年にセブン&アイの最高経営責任者(CEO)を退任して以降、業界はいまだ次の大ヒット商品を探し続けている。象徴的なのは、セブン-イレブンの沿革を紹介する英語版ページが、まさに2016年で終わっていることだ。

既成概念にとらわれない発想

鈴木氏は人生の最終章もまた劇的だった。アクティビスト(物言う株主)のダン・ローブ氏が関わった取締役会闘争を経て、経営の座を追われた。ローブ氏は、鈴木氏が息子を後継者に据えようとしていると批判したが、同氏は否定した。

鈴木氏失脚は一般的には、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の勝利と受け止められ、「日本が救われた日」と称賛した投資家もいた。

しかしセブン&アイは戦略の方向性を見失ったように見え、アクティビスト投資家や買収提案に翻弄されてきた。同社は最終的にローブ氏の要求の大半を受け入れ、配当を増やし、コンビニ以外の資産の多くを売却した。

それでも、鈴木氏退任後の10年間で日経平均株価が4倍余りに上昇した一方で、セブン&アイ株の値上がり率は20%未満にとどまる。ローブ氏が鈴木氏解任を図った際に次期CEOとして支持した井阪隆一氏も昨年、辞任に追い込まれた。

もちろん、鈴木氏が常に正しかったわけではなく、創業者を祭り上げる形で日本企業は運営されるべきだという意味でもない。また、鈴木氏が留任していた場合に何が起きたかも分からない。

だが、セブン&アイの苦しい10年間を振り返れば、鈴木氏排除は企業の近代化の流れとして当然だったという単純な見方には疑問が生じる。

それはまた、一般に信じられている常識も検証に値することを示している。投資家や社外取締役は必ずしも、1個のおにぎりで人々の日常をより良くする仕組みを築いた鈴木氏のような企業経営者よりも優れた判断をするとは限らない。

鈴木氏のキャリアと、その後のセブン&アイの10年は、企業が金融市場を満足させることよりも、既成概念にとらわれない発想を優先すべきことを示唆している。

「皆がいいなと賛成することは誰もが考えることですから、あまりやる価値はないし、成功しない」という言葉を鈴木氏は残している。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Japan’s Conbini King Was Right to Ignore Critics: Gearoid Reidy(抜粋)

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