米国とイランは4月に停戦で合意して以降、膠着(こうちゃく)状態に陥っている。数千人が死亡し、世界的なエネルギー不足を招いた戦争を終わらせるため、何が交渉のポイントになっているのか。争点を整理する。

戦闘終結に向けた双方の要求には、まだ隔たりがある。米国とイランは、ホルムズ海峡の通航再開を優先して短期的な合意を目指し、イラン核開発計画の将来といったより難しい問題は、その後の本格交渉に委ねることを模索しているようだ。

ホルムズ海峡

イランとオマーンの間に位置するホルムズ海峡は、通常、世界の原油・液化天然ガス(LNG)供給の約5分の1が通過してきた。他の品目にとっても重要な貿易ルートとなっている。

イランは2月28日の開戦後、ホルムズ海峡の通航を制限。これによってエネルギー価格は急騰し、世界各国にインフレ圧力をもたらした。

一方でイランは、自国産原油の輸出を継続。他国の船舶については、安全航行に関する協議や、時には最大200万ドル(約3億円)の通航料を要求した上で、通航を認めてきた。

米国は、ホルムズ海峡を再び通航料なしで通れるようにするため、イランの港に出入りする船舶への封鎖措置を通じて、イランに対する経済的圧力を強めている。結果として、イランは米国の封鎖解除までホルムズ海峡を全面再開しないとしており、米国も合意締結まで封鎖を維持すると主張し、膠着状態に陥っている。

ホルムズ海峡、そして世界経済への影響力を得たイランが、米国側の譲歩なしにそれを手放す可能性は低い。イランは長期的にも海峡への支配力を維持したいとの考えを繰り返し示している。イランのアミンネジャド駐仏大使は、恒久的な通航料制度の導入についてオマーンと協議していると述べた。

イランの核開発計画

米国は、ブシェール原発を除き、イランの核能力を剝奪し、核兵器製造を不可能にすることを求めている。イランは核兵器開発の意図を一貫して否定しているが、一部の西側諸国は懐疑的な見方を示している。イラン側は民生用目的のウラン濃縮の権利を主張している。

トランプ政権は、イランのウラン濃縮活動に一定期間の停止措置を設けるよう求めている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は関係者の話として、イランは米国が提案した20年より短い停止期間であれば受け入れる用意があると報じた。

将来の濃縮活動に加え、既存の濃縮ウランの保有も問題となっている。イランの保有を最後に確認できたのは、2025年6月の米国とイスラエルによる攻撃前だった。国際原子力機関(IAEA)の査察官は、イランが60%まで濃縮したウラン441キログラムを保有していたと判断した。さらに濃縮すれば、核爆弾約12発分に相当する量だった。

米国は、イランが保有する濃縮ウランを引き渡す必要があるとしている。前例もある。イランは15年の核合意の一環としてロシアに核物質を移送した。ただ、ロイター通信によると、イランの最高指導者モジタバ師は、兵器級に近い濃縮ウランを国外搬出しないよう指示を出した。事情に詳しい匿名のイラン関係者2人の話として伝えた。

イスラエルのネタニヤフ首相は、濃縮ウランを除去し、残存するウラン濃縮能力を解体する必要があるため、米国とイスラエルによる対イラン戦争は終わっていないと述べている。これらの条件を満たさない合意は、イスラエルによる軍事行動再開のリスクを伴う。

レバノン情勢

イランは、戦争終結合意にはレバノンでの戦闘停止も含まれるべきだと主張している。イスラエルはレバノンで、イランが支援する武装組織ヒズボラとの戦争を続けている。

米国はレバノン情勢の緊張緩和に向け、別ルートで外交交渉を進めている。米国が仲介したイスラエルとレバノンの停戦は、4月中旬から不安定ながらも維持されている。両国はワシントンで協議を行っており、追加交渉は6月に予定されている。ヒズボラは協議に参加していない。

協議は突破口を見いだせておらず、停戦発表後もイスラエルとヒズボラは攻撃を続けている。ネタニヤフ首相は5月下旬、イスラエルが攻撃を強化すると述べた。

イスラエルの主な要求の一つはヒズボラの武装解除だ。ヒズボラはこれを拒否しており、レバノン政府も過去に武装解除に失敗している。

制裁、弾道ミサイル、民兵組織

イランは和平合意の条件として、制裁解除や数十億ドル規模の凍結資産の返還も求めている。米ニュースサイトのアクシオスによると、米国は5月の提案でこれらの分野に関する譲歩を提示した。

イランは戦争被害への補償や、中東地域からの米戦闘部隊撤収など、米国が受け入れにくい要求も突き付けている。

一方の米国は、イランに対し弾道ミサイル計画の制限を求めている。弾道ミサイルは、中東地域の外にも届く脅威となるほか、イランが核兵器を開発すれば、核弾頭を搭載できる可能性もある。

トランプ政権はまた、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派など、米国がテロ組織に指定する民兵組織への武器供与・資金支援停止も要求している。イランはこれら代理勢力のネットワークを、中東に影響力を及ぼすための「抵抗の枢軸」の一部と位置付けている。

米国とイランはどこまで譲歩するのか

戦争はイランの軍事・経済の双方に打撃を与えた。インフレは加速し、米国の封鎖措置によってイランの石油産業は減産を余儀なくされている。

もっとも、イランは長年にわたる厳しい制裁を乗り越えてきた経緯があり、経済的苦境への耐性は高い。まだ十分な軍事力を維持しており、近隣アラブ諸国やホルムズ海峡周辺の船舶を攻撃できる能力も示している。

トランプ氏は「全員にとって素晴らしい合意」が成立しなければ戦闘再開も辞さない姿勢を示し、「より大規模で強力な」攻勢を警告している。共和党内の強硬派はさらなる攻撃を求めており、合意案がイランに譲歩し過ぎていると懸念している。

一方で、11月に中間選挙を控える中、トランプ大統領に対しては米国内で、戦争終結への出口戦略を求める政治・経済的圧力が強まっている。ガソリン価格は2022年以来の高水準となる1ガロン当たり4.5ドルを超え、家計を圧迫している。

そのためトランプ氏は、最大限の要求から一部を妥協し、重要課題を未解決のままとする合意を受け入れる可能性がある。

原題:The Key Sticking Points for a US-Iran Peace Deal: Explainer(抜粋)

(最後の中見出し以降の内容を追加して更新します)

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