(ブルームバーグ):世界で最も好調ながら、ボラティリティーも最も高い韓国株式市場で今週、個別銘柄を対象とするレバレッジ型上場投資信託(ETF)が初めて上場する。
同ETFは、半導体大手のサムスン電子とSKハイニックスを対象に、両銘柄の日々の値動きの2倍に連動する投資成果を目指すもので、利益と損失の双方を増幅させる可能性がある。両銘柄は、世界的な人工知能(AI)関連株の中でも中心的存在だ。
アナリストは同ETFに対し、韓国の1400万人を超える個人投資家から旺盛な需要が集まるとみている。ただ、韓国総合株価指数(KOSPI)では日中の値動きが5%となるケースも目立つようになっており、こうした熱狂はボラティリティーを一段と高めるリスクがある。
フィボナッチ・アセット・マネジメント・グローバルのジョン・イン・ユン最高経営責任者(CEO)は「このETFは集中リスクという既存の問題を深刻化させる可能性がある」と指摘。「指数のボラティリティーが高止まりすることで、韓国市場での運用が難しくなり、長期投資家にとって構造的な問題となる」と述べた。

レバレッジ型ETFは、デリバティブ(金融派生商品)やスワップ契約を使い、指数や株式、債券、コモディティーなどの原資産の値動きに賭けることで、投資家に大きな利益を得る機会を提供する。一方で、ETF発行体は日々の値動きが約束した倍率になるよう、保有資産を素早く売買する必要がある。このため、既に取引の多い株の値動きが一段と大きくなる可能性がある。
韓国の投資家は近年、こうした金融商品に旺盛な需要を示してきた。世界的なAIブームに乗ろうとする動きで、KOSPIの押し上げにもつながった。半導体株の急騰に加え、株主還元改善を目指す韓国の取り組みを背景に、同指数は2024年末以降で3倍余りに上昇している。
KOSPIに連動するレバレッジ型ETFや、韓国半導体株に連動する香港上場ETFは、韓国のデイトレーダーの間で既に極めて人気が高い。米国上場のレバレッジ型半導体ファンドにも資金が流入している。こうした動きが、韓国で個別銘柄を対象としたレバレッジ型ETFが導入される主因となった。規制当局はこれまで、高リスクを理由にこうした商品を認めてこなかったが、海外に流出した個人投資家の資金を呼び戻そうとしている。
サムスン株の値動きに対して2倍の値動きになる香港上場のレバレッジ型ETFには年初来で約13億ドル(約2000億円)が流入しており、テスラやマイクロソフトなど米ハイテク大手に連動するレバレッジ型ETFを上回る。CSOP・SKハイニックス・デイリー2倍レバレッジETFもほぼ同額を集めており、個別銘柄のレバレッジ型商品として世界最大となっている。

もっとも、こうしたレバレッジ型商品のリバランスによる資金フローが、最近の急激な相場変動局面でボラティリティーを強めたと既に指摘されている。ブルームバーグが後に確認したUBSトレーディングデスクのリポートによると、3月3日にSKハイニックス株が10%超急落した際、取引終了前の1時間における同社株の出来高の最大6割をリバランス関連が占めた。
その後、5月15日には、SKハイニックスの1日当たり出来高の約17%、サムスンは約10%がリバランスによるものだった可能性があるとバークレイズは分析した。この日、KOSPIは一時7.6%下落した。
こうしたリスクを踏まえ、韓国金融監督院(FSS)は、新しいレバレッジ型商品がボラティリティーを増幅させる場合、個人投資家に損失が生じる恐れがあるとして注意を促した。また、トレーダーの間では、4兆5000億ドル規模の韓国株式市場が、KOSPIで約50%のウエートを占めるサムスンとSKハイニックスの二大銘柄への依存をさらに深めるとの懸念もある。
ヘッジファンド、ペトラ・キャピタル・マネジメントのマネジングパートナー、チャン・H・リー氏は「AI関連半導体株を巡る現在の熱狂は、メモリー業界の強固なファンダメンタルズと業績モメンタムに支えられているが、レバレッジ型商品の利用拡大と中心銘柄への集中が進むことで、短期的なボラティリティー上昇につながる可能性がある」と述べた。
レバレッジ型ETFは、個人投資家にとってリスクが高く、規制当局にとっては新たな課題となる。それでも、AI関連株への熱狂が強い韓国株式市場では、旺盛な需要が見込まれている。
5月末に上場予定の、サムスンまたはSKハイニックスの値動きに連動するレバレッジ型ETF14本への純流入額は、最大5兆3000億ウォン(約5500億円)に達する可能性があると、ミラエ・アセット・セキュリティーズのアナリスト、ユン・ジェホン氏は予想する。今年1-2月に、レバレッジ型商品への投資前に義務付けられているオンライン研修を修了した投資家は30万人に達し、2025年通年の人数を上回ったという。
フィボナッチ・アセット・マネジメントのユンCEOは「短期的には、出来高を押し上げ、AI関連の勢いをさらに強めるだろう。ただ、KOSPIの値動きは一段と荒くなる」と指摘。「AI関連株への投資は今や個人投資家の関心を一身に集めており、流動性の大半は既にこれらの銘柄に集中している」と語った。
原題:World’s Most Fervent Day Traders in Korea to Get Risky New Tools(抜粋)
--取材協力:Anthony Stephens.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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