(ブルームバーグ):データセンターやクラウド事業を展開するさくらインターネットは、国内の人工知能(AI)需要に対応するため、今期(2027年3月期)の設備投資を当初計画の7倍近くに引き上げる可能性がある。
同社創業者の田中邦裕社長は、「可能であれば今期中に新たなGPU(画像処理半導体)の導入を進めたい」と述べ、規模は「多ければ200億-300億円の投資になる」とブルームバーグとのインタビューで語った。同社が4月に発表した設備投資計画44億円を大きく上回る。
田中氏によると、AI向けGPU搭載サーバーの稼働率は現在80-90%に達しているという。クラウド事業に関しては30-40%の余剰容量があるものの、足元ではAI関連を中心に受注件数が増えているため、需要増を見据えて容量を「相当増やしていかないといけない」と述べた。
OpenAIやアンソロピック、グーグルなど米国の大手企業がAI開発で先陣を切ってきたが、経済安全保障の観点から足元では自国で開発・管理する「ソブリンAI」の重要性が高まっている。サーバーなど計算資源を提供するさくらインターネットの商機も広がっており、同社の投資拡大は、米大手が主導してきたクラウド市場で、日本勢が安全保障や信頼性を強みにどこまで存在感を高められるかを占う試金石となる。
ブルームバーグのインタビュー配信後に、同社株は一時前営業日比7.5%高の3130円まで上げ幅を拡大し、4月21日以来の日中上昇率となった。
国内勢で初めて
さくらインターネットは、24年3月期から31年3月期までにエヌビディアのGPUなど生成AI向けハードウエアに1130億円を投じる計画で、すでに約半分を実行済みだ。政府はこのうち最大575億円を助成することを決めている。
同社は3月に、国と自治体の共通クラウド基盤となるガバメントクラウドのサービス提供事業者として正式に採択された。23年11月に国内企業で初めて選ばれたが、25年度中に技術要件を満たす条件付きだった。その他の政府クラウド提供事業者には、アマゾン、アルファベット傘下のグーグル、マイクロソフト、オラクルの米大手4社が選ばれている。
信頼と警戒
大手クラウド事業者は米国や中国勢が中心だが、日本企業の「最大の武器は信頼だ」と、田中氏は言う。同社は、データセンターサービスの提供で、タイの見込み顧客と協議している。地政学的な情勢に左右されにくく、価格の安定性と信頼性への評価を背景に、日本の事業者への関心は高いと述べた。
同社の株価は22日時点までの1年で約8%下落しており、AIを追い風とする世界的な上昇相場の中で同業他社に見劣りする。人件費や設備投資負担の増加による利益圧迫への警戒感が、株価の重しとなっている。前期の売上高は過去最高を更新したが、営業損益は前年同期の42億円の黒字から4億300万円の赤字に転落した。
今期は15億円の黒字を見込むが、市場予想の29億円を下回っている。

ホームページの一部は、かつてパソコン向けからスマホ向けへと最適化が進んだように、いま人間向けからAI向けへと最適化され始めている。田中氏は、同社のサービスもAIが利用する形に変わっていくとし、「AIフレンドリーな世界が来る」と述べた。
AI向けサービスへの移行が進展すれば、原価構造が見えやすく価格競争に陥りやすいハード販売から、使いやすさや信頼性、永続性が価値となる継続利用型の高収益ビジネスへの転換が進むと見ている。
(第5段落に株価を追加しました)
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