トランプ米大統領が開示した最新の金融取引記録には、米企業の株式を中心に3711件もの売買が記載された。現職大統領として前例のない規模だとして注目を集め、インサイダー取引の疑惑も浮上した。

しかし、取引の検証と専門家へのインタビューからは、トランプ氏の取引には複数の特徴があり、単純な解釈には当てはめにくいことが分かる。そのパターンには複数のポートフォリオ戦略が重なっているほか、指数連動とみられるものが多く、大半は自動化されている可能性が高いため、全容の解明は難しい。

トランプ・オーガニゼーションは、トランプ氏の金融資産は第三者金融機関が独立して運用しており、同氏や家族は関与していないと説明している。バンス副大統領も、ホワイトハウスの大統領執務室から売買しているとの見方を「ばかげている」と否定した。

ホワイトハウスにコメントを求めたが、質問はトランプ・オーガニゼーションに向けるべきだとの回答だった。

議員による株取引を禁じる法案を支持してきたキャンペーン・リーガル・センターの法務顧問、ケドリック・ペイン氏は「大統領が株式や個別企業を保有する限り、利益が確実な投資を行っているとの疑いは必然的に生じる」と指摘し、「大統領職を私益に利用しているとの印象があってはならない」と語った。

この文書の開示後直ちに、特定の取引を大統領による公的な行動や発言に結びつけた批判が上がった。ウォーレン上院議員(民主)は、エヌビディア株100万ドル(約1億6000万円)相当をトランプ氏が購入したのは、中国向け先端半導体の販売が承認される前だったと指摘した。「トランプ氏の行動は違法と見なされるべきだ」と自身のウェブサイトの動画で批判した。

節税売買

開示された取引の多くは、イラン情勢で変動性(ボラティリティー)が上昇した3月に集中し、同月だけで2000件を超えている。

取引件数の多さや、対象銘柄の幅広さ、小口の取引が中心であることから、自動取引の可能性が高い。一部の銘柄は1日のうちに複数回売買されており、これは開示文書が複数の口座をまとめて記載している可能性を示唆している。専門家らはまた、低調なパフォーマンス後に株式が売却されているとして、税務関連の取引である可能性を指摘した。

約800億ドルを運用するヴァイズの共同創業者、サミール・バサバダ氏は「税負担軽減のための損失確定売りは、超富裕層では一般的な戦略の一つだ」とし、「今回の開示は、その大規模な実例だと考えられる」と述べた。

動画:トランプ氏による3711回の株取引は複数の戦略が関与している可能性がある  出所:ブルームバーグT

データにはダイレクトインデックス戦略との整合性も見られた。これは指数連動ファンドではなく、個別株を保有し、値下がり銘柄を売却して損失を確定しながら指数に似た値動きを再現する運用手法だ。

また取引の多くは、主要株価指数のリセット日と重なっていた。2番目に取引が多かったのは3月23日で、この日はS&P500種株価指数や、S&P600種、400種、100種指数のリバランスだけでなく、特定のFTSEラッセル指数への新規銘柄採用と一致していた。

開示文書にある個別銘柄はRussell3000指数の構成銘柄と約90%重なると、バサバダ氏は述べた。

指数リバランス日の近くだけでなく、相場下落日の近辺に取引が集中しているのは、こうした状況で説明がつく可能性がある。開示文書には、S&P500が1%超下落した2月12日に155件、3月18日に124件の売却が記されている。

「数百または数千の個別ポジションを保有し、システムが日々、損失確定の機会をスキャンしているのなら、多数の取引になるのは当然だ」と、バサバダ氏は述べた。

公表されたデータは限定的であり、アナリストが決定的な結論を導き出すのは難しい。開示は正確な取引規模ではなく、広範な価値帯しか示しておらず、いかなるポジションの損益も表示せず、口座別の内訳もない。

それでも、いくつかのパターンは際立っている。例えば1月と2月はいずれも、物価統計の発表前日に取引が急増した。3月は物価統計公表日とその翌日の両方で、取引が活発だった。

これらは物価統計とは無関係な、カレンダーベースのポートフォリオ調整か、マクロまたは金利感応型ファンドの取引である可能性もある。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合前に取引が急増したのは、後者の論拠を支える。

一方、報告された3711件の取引のうち、大半は米国株関連で、625件は「顧客主導」に分類されていた。つまりブローカーではなく、顧客の判断によって実行された取引を指す。

顧客主導の取引はほぼ全てが3月に起きており、米国がイスラエルとイランを攻撃した後、最初の営業日に急増した。それらは圧倒的に買いが多く、開示書類に記されたシステマティックな取引とは異なり、より場当たり的に見える。

取引量に「唖然」

データが確実に示しているのは、現職大統領が関与する資産で異例の活発な取引が行われたことだ。大統領は政策や発言によって、企業やセクター、あるいは市場全体の見通しを変えることができる。歴代大統領では在任中、ブラインドトラストや広く分散された投資信託を利用したケースが多い。

政治的要因が金融市場に与える影響を研究しているワシントン大学の金融学助教授ウィリアム・キャシディ氏は「例えば政府契約を受注する企業を予測するビジネスにとっては、こうした開示から何らかの示唆を見いだす可能性がある」と述べた。

同じく政策に関与し企業に影響を与えかねない議員らとは異なり、トランプ氏は個別企業について直接的にコメントすることがあると、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の博士課程学生バーニー・チェン氏は述べた。同氏は議員の金融取引に関する論文を共同執筆した。

例えば、開示文書には3月初旬にアップル株100万~500万ドル相当を「顧客主導」で購入したことが記されている。それはトランプ氏がアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)を公に称賛する約1週間前のことだった。

チェン氏と論文を共同執筆したダートマス大学のブルース・ササードート教授は、トランプ氏の取引ではその量が際立っていると述べた。ただし、市場平均を上回る成果を上げた明確な証拠は確認されなかったという。

「取引の量には、唖然とした」と同教授は語った。「政策変更やソーシャルメディアへの投稿があった場合を含め、同氏のパフォーマンスが市場を上回った強い証拠は見当たらない」と続けた。

原題:Trump’s 3,711 Trades Point to Multiple Stock-Market Strategies(抜粋)

(チャートを差し替えて更新します。更新前の記事では、見出しの文言を訂正済みです)

--取材協力:Surya Mattu、Mathieu Benhamou、Jade Khatib、Cedric Sam、Geoffrey Morgan.

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