(ブルームバーグ):ロシアのプーチン大統領は19日、中国の習近平国家主席との会談に向け北京を訪問する。今年初の外遊となる。イラン戦争を受けたエネルギー市場の混乱は、ロシアにとって中国とのエネルギー関係を深める好機になる可能性がある。
政府関係者によると、ロシアは中東紛争によるエネルギー市場の混乱によって、中国側が大規模なパイプライン構想「シベリアの力2」のガス価格契約交渉でより柔軟な姿勢を示すことを期待している。ロシア政府高官の1人によれば、中国当局は協議加速に関心を示したものの、現時点で確固たる進展はない。
ロシア大統領府のウシャコフ大統領補佐官(外交政策担当)は18日、記者団に対し、同パイプライン構想について「議題に含まれており、われわれは真剣に協議するつもりだ。このテーマについては首脳間で非常に詳細な議論が行われると考えている」と述べた。
ただ、合意進展の可否は習氏次第であり、現時点でロシアが容易に合意に到達できる兆候は乏しい。
ウシャコフ氏によると、プーチン氏と習氏は20日に会談を行い、同日夕には茶会を開いて協議を再開する予定だ。ロシア代表団には副首相5人、閣僚8人、ロシア銀行(中央銀行)のナビウリナ総裁に加え、国営企業や大手企業のトップが参加する。
経済への圧力が強まる中、ロシアはウクライナへの侵攻を巡る西側諸国による制裁の影響を和らげるため、中国との貿易に大きく依存している。トランプ米大統領によるイラン戦争は、ホルムズ海峡の事実上封鎖による混乱を受けて中国がエネルギー安全保障を一段と重視する中、ロシアにとって両国関係を再調整する機会となる可能性がある。
ロシア国立研究大学経済高等学院の中国専門家、ワシリー・カシン氏は、中東紛争について「ロシアが中国向け主要資源供給国としての役割を強化することで中ロ関係が強化される」と指摘。「今回のプーチン氏の訪問は、この新たな地政学的現実を反映するものになる見通しで、ロシアの物流網やエネルギー協力への中国側の関心拡大が示されるだろう」と語った。
ロシア国営エネルギー大手ガスプロムの関係者によると、同社はシベリアからモンゴル経由で中国へ延びるシベリアの力2向けに、非常に競争力の高いガス価格案を提示したが、中国側は計画推進に前向きな姿勢を示さなかった。それでも目標は9月までにガス価格で合意することだという。非公開情報を理由に匿名を条件に語った。
ガスプロム広報はコメント要請に応じなかった。
中国はイラン戦争開始後の3月、5カ年計画においてロシア産天然ガスパイプラインを巡る進展を目指す方針を示した。4月下旬には、ガスプロムのアレクセイ・ミラー最高経営責任者(CEO)と中国石油天然気集団(CNPC)の戴厚良董事長が北京で会談し、「戦略的パートナーシップの発展」を協議した。
プーチン氏は5月9日、石油・ガス協力に関する「事実上全ての主要問題」で中国と合意済みだとし、「訪問中に最終的な取りまとめまで進めることができれば、大変喜ばしい」と語った。
ロシア経由の輸送回廊も長年にわたり二国間協議の議題となってきたが、協議内容に詳しい関係者によると、ロシア側は現在、中国当局が陸路や北極圏の北方航路を通じた輸送網拡大に一段と関心を示しているとみている。
中国人民大学国際関係学院の王義桅教授は、「イラン戦争は、戦略的に重要な従来型輸送ルートや要衝の安全性がもはや当然視できないことを示している。そのため中国は代替ルートを開発し、リスクヘッジをより積極的に進めざるを得なくなっている」と述べた。
今回のプーチン氏訪問は、中ロ善隣友好協力条約調印25周年に合わせた日程となっている。ロシア大統領府によると、先週行われた習氏とトランプ氏の首脳会談に続く形で実施され、プーチン氏にとっては両首脳の協議内容の詳細を把握する機会にもなる。
習氏にとっては、トランプ氏とプーチン氏を相次いで外交相手として迎えるのは今年2回目となる。2月初旬には、習氏は数時間差でトランプ、プーチン氏両氏と個別に電話会談を行った。
プーチン氏と習氏が最後に会談したのは9月で、当時は習氏がプーチン氏および北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と共に10年に一度の軍事パレード式典に出席した。
米国はこれまで、ウクライナ戦争や台湾を巡る中国との潜在的対立に関連した広範な地政学戦略の一環として、ロシアを中国との協力関係から引き離そうとしてきた。ただ、ロシア大統領府内で対中経済・外交依存への警戒感が高まりつつあるにもかかわらず、プーチン氏にとって習氏から距離を置く動機は乏しい。
中国の税関データによると、2025年の中ロ貿易額は前年比6.9%減の2280億ドル(約36兆円)となった。プーチン氏は習氏との電話会談で減少を認めた一方、二国間貿易は3年連続で2000億ドルを大きく上回ったと述べた。
中国は、米国の覇権弱体化や、いわゆる多極的な世界秩序の推進に向け、ロシアを有用なパートナーとみている。一方で、中国は、世界に対し安定の担い手として自国を印象付けようとする中、ロシアのウクライナ戦争に伴うリスクと過度に結び付けられることは避けようとしているようだ。
中国共産党の機関紙、人民日報が18日に掲載した社説は、国際情勢の混乱を受けて、双方が「戦略的調整と包括的な協力を強化すべきだ」と強調。協力する可能性のある分野として、宇宙研究、エネルギー、科学技術、農業、人工知能(AI)、環境対策、バイオテクノロジーを挙げた。
原題:Putin Aims to Unlock Gas Pipeline Project to China in Xi Talks(抜粋)
--取材協力:Rebecca Choong Wilkins、Jing Li.
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