2006年の大ヒット映画「プラダを着た悪魔」の続編「プラダを着た悪魔2」が5月1日に日米同時公開された。公開直後の週末興行収入は全世界で2億3300万ドル(約370億円)に達し、今年最大級の成績を収めた。世界的に観客の76%を女性が占め、日本でも人気が広がっている。

アナリストのデービッド・グロス氏はブログへの投稿で、「この規模の興行をコメディードラマで達成すること自体がまれであるのに、それをさらに上回る成績を2度目に出す例はほとんどない」と称賛した。

前作は、ファッションに疎いアン・ハサウェイ演じる主人公アンディ・サックスが、業界で最も重要な人物とされる架空のファッション誌「ランウェイ」の編集長ミランダ・プリーストリーのアシスタントとして奮闘する物語だった。冷徹な編集長をメリル・ストリープが見事に演じた。

映画として完璧とは言えないまでも、前作には粗削りな魅力があり、その後のファッション業界の自己認識に影響を与えた。一見どうでもよさそうなセルリアンブルー色のセーターが、実はファッション業界の流れや意思決定の積み重ねによって選ばれているとミランダが語る「セルリアン・モノローグ」は、薄っぺらで不要と評されかねない2兆ドル規模のファッション産業を簡潔に擁護する名場面として知られる。では、20年ぶりの続編は現代社会の何を映し出しているのか。

続編の先行試写会に参加したブルームバーグ・パースーツのエディター、クリス・ロヴザールと、自動車コラムニストでファッション業界にも精通したハンナ・エリオットが作品の印象を語り合った。

クリス・ロヴザール(以下クリス)

「『プラダを着た悪魔2』を見たので話したい。主題は主にメディア業界の危機だが、現在のファッション業界の状況を示すメタファー(比喩)でもあると思う。一部の大手メゾンは20年前の魔法のような魅力をどう取り戻せばいいのか分からず、ただ価格を引き上げたり、過去に人気を博したデザインに頼ったりしている」

「ディオール・オムの2026年秋コレクションでジョナサン・アンダーソンが表現した細身のパンクロック調トップスやダメージデニムは、エディ・スリマンのデザインを20年後にネオンカラーで再現したようなものだった。映画もそれにちょっと似ていて、派手で明るいが過去に依存することで安全策を取っている印象だ」

ハンナ・エリオット(以下ハンナ)

「同感だ。サンローランのバッグを見ても分かる。トム・フォードがクリエイティブディレクターとして2002年春夏に手がけたホーボーバッグ『モンバサ』を復活させている。あるいはグッチ。背中が大きく開き、Tバックがのぞくようなスタイルは、かつてカリーヌ・ロワトフェルドが手掛けていた」

クリス

「純粋に楽しい作品ではあるが、かつての魔法を完全に呼び戻すことはできていない。続編はオリジナルに比べて格段にラグジュアリーで、著名人や華やかなロケーションが多数登場する。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の前での重要なディナーシーンまである。それでも、どこか安易で反復的に感じられる」

ハンナ

「私には、お金を出したいブランドのための巨大な広告のように見えた。商業化は均質化につながる。映画の中にも、今のSNSで見るファッションの大半にも、個性や独自性が感じられない」

「さらに不自然で表面的な点もある。記者職に転じて20年のキャリアがあるはずのアンディが、未熟でプロ意識に欠ける印象だ。率直に言って、いら立たしい。ストリープ演じる編集長には同情を禁じ得なかった。まるで核の冬や宇宙人の侵略から部下を守ろうとする老将軍のようだ。まったくもって、むなしい」

クリス

「ただ、それは現実でもある。メディアに関する描写はかなり的確だった。特に、ファッション雑誌VOGUE(ヴォーグ)の編集長だったアナ・ウィンターがこの作品を支持したのは意外だった。というのも、続編の筋書きが、ヴォーグをジェフ・ベゾスとローレン・サンチェス(ベゾス氏の今の妻)が支配するのではないかとのうわさを強く想起させるからだ」

ハンナ

「ニューヨークのリンカーンセンターで開かれたワールドプレミアも残念だった。ファッション業界の著名人が集う場ではなく、インフルエンサーが中心だった印象だ。誰もがスマートフォンに目を落としていた。陳腐に聞こえるかもしれないが、クールで個性的に見える人々が集まり、自分のコンテンツ作りではなく、会場内の人々に向き合っていた時代が懐かしい」

「映画はメディア業界の危機を確かに描いている。最終的に主導権を握るのは億万長者と人工知能(AI)の影であり、ミランダ・プリーストリーのような存在が活躍する余地はない。暗い結末だ」

原題:Devil Wears Prada 2 Does No Favors for Fashion: Pursuits Weekly (Correct)、‘Devil Wears Prada’ Sequel Pulls In $233 Million Worldwide (1)(抜粋)

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