12日の日本市場は、午後の取引で円が対ドルで一時1ドル=156円台後半と直前の水準から1円近く急伸する場面があった。日米の財務相会談後はじりじりと円安が進んでいたが、通貨当局による介入への警戒で投資家は神経質だ。

訪日中のベッセント米財務長官は12日、片山さつき財務相と会談後、「為替市場における望ましくない過度な変動に対応する上で、われわれのチーム間のコミュニケーションと協調の水準は引き続き安定的かつ強固だ」とX(旧ツイッター)に投稿した。

片山財務相も足元の為替について日米間でよく連携できていると述べ、金融政策の具体的手法は日本銀行にあると発言。ベッセント氏は今夕、高市早苗首相とも会談する。

債券は下落。中東情勢の混迷を受けた国際原油市況の高止まりとインフレ進行への懸念が強く、売りが優勢だった。この日行われた10年国債入札は良好な結果となったものの、長期金利(新発10年国債利回り)は1997年以来の高水準を更新。株式はインフレを意識した買いが資源セクターに入り、上昇した。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の龍翔太為替ストラテジストは「まとまったドル売り・円買いのフローが入ったのかもしれないが、当局は大型連休中も小規模な介入を行ったとみられており、介入が入った可能性も否定できない」と指摘。ただし、日米財務相会談では「米国側から協調介入を示唆するような発言がなかったため、ドル買い・円売りを止めるのは難しい」ともみている。

ベッセント氏は昨年8月、日本はインフレ問題を抱え、日銀は利上げが後手に回るビハインド・ザ・カーブに陥っている可能性があると指摘。同10月の訪日時には、日銀にインフレ抑制に取り組むための裁量の余地を与えるよう政府に呼び掛けた経緯があった。

為替

円は対ドルで157円台前半で推移。午後3時前に157円台後半から156円台後半まで円が急上昇する場面があった。日米財務相会談では、中東情勢を受けた金融市場の動向について議論すると共に日米の連携を確認した。

ロンバー・オディエ・シンガポールのストラテジスト、ホミン・リー氏は午後の円急伸は4月末以降に見られた幾つかの変動と比べ特に大きいものではないと指摘。日米が円安是正を巡り引き続き協調を行っているという市場の見方を反映している可能性があると話した。

債券

債券は下落(利回りは上昇)。前日の米金利上昇や日本銀行が12日朝に公表した4月の金融政策決定会合の「主な意見」がタカ派的な内容だったことを受け売られた。ただし、この日実施された10年利付国債入札が利回りの高さから順調に消化され、相場の下押し圧力がやや弱まる場面もあった。

10年債入札は投資家需要の強弱を反映する応札倍率が過去12カ月平均(3.23倍)を上回り、昨年9月(3.92倍)以来の高水準。最低落札価格も98円86銭と市場予想(98円79銭)を上回った。

大和証券の尾谷俊チーフストラテジストは、ベッセント長官と高市首相や片山財務相との会談について「円安を止める正攻法は為替介入ではなく利上げなので、財務長官から早期利上げの確度を上げるような発言が出れば、利回り曲線がフラット(平たん)化しながら金利は上昇する」との見方を示した。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、入札は「かなり強い結果」と分析。利回り上昇が奏功して一定の需要が集まり、相場の安定につながると評価した。もっとも、日銀会合の主な意見はタカ派的内容で、「利上げ継続により国内投資家は今の金利水準でたくさん買うわけにはいかないだろう」とし、金利上昇圧力は今後も続くと予想する。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

TOPIX、日経平均共に午前の取引ではマイナスに転じる場面もあったが、インフレ観測を背景に石油や鉱業、商社などの資源セクターが買われ、結局上昇して終えた。その他金融や建設、銀行も上昇。

午前は韓国で人工知能(AI)ブームによる税収を国民に配当として再配分する案が浮上し、株価が乱高下した影響がアジア市場全体に波及した。

個別では今期の利益計画が予想を上回った古河電気工業、自社株買いが好感されたオリックスの上げが顕著。半面、業種別では原燃料高が利益を圧迫する小売りや食料品、水産・農林、機械、空運が安い。

ピクテの松元氏は、金利高は固定負債の比率が高い企業には金利上昇はマイナス要因になるだろうと指摘。物価高が止まらない中、実質ベースの個人の手取りは減少傾向にあり、小売りセクターは手掛けづらいと話した。

朝方発表された3月の消費支出は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同月比2.9%減と4カ月連続のマイナスとなった。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:間一生.

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