(ブルームバーグ):半導体株が記録的な上昇を遂げた4月に総じて様子見姿勢を維持していた個人投資家が、一転して前のめりになっている。だが足元では、半導体セクターが息切れしつつあるとの懸念がにわかに強まっている。
JPモルガン・チェースのポジショニングデータによると、個人投資家は先週、テクノロジー株を1年ぶりの高水準まで買い増した。特に人工知能(AI)ブームの恩恵を受けるメモリー半導体メーカーへの関心が高かった。ハードウエア企業への資金流入は過去2番目の規模に達した。
さらなる上昇を妨げる要因はないものの、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は過去6週間で60%上昇しており、ほぼすべてのバリュエーション指標で割高感が意識されている。5月に入ってから同セクターに資金を投じた個人投資家にとっては、相場の勢いが急変し、損失を抱えるリスクがある。
ラウンドヒル・フィナンシャルのデーブ・マッザ最高経営責任者(CEO)は「今回の決算シーズンは、半導体やメモリーが実績を示し、AIインフラ投資の正当性を裏付けた。先行きについては、市場はますます完璧な展開を織り込みつつある」と指摘。その上で「個人投資家が再び参入していること自体は弱気シグナルではないが、既に大きく上昇し放物線的な動きを見せ始めている相場に一段と拍車をかけることになるだろう」と述べた。
個人投資家の復帰は、春先からの転換を示す。イラン戦争を巡る懸念で調整入り目前まで下げていたS&P500種株価指数が反発していた局面でも、個人投資家の多くは当時動かなかった。米国とイランの和平協議が進む中、今ではサンディスク、マイクロン・テクノロジー、インテルといった半導体・ハードウエア銘柄に、個人投資家の資金が再び流入している。同セクターの急ピッチの値上がりにより、ハイテク株中心のナスダック100指数は6週間で25%上昇した。
ストラテガス・セキュリティーズのテクニカル・マクロ戦略責任者クリス・ベローネ氏はリポートで「半導体株は過熱しており、場合によっては1999年より極端な水準にある」と指摘。「放物線的なチャートは独自の動きを見せることがあり、潮目の変化の時期を正確に予測することはできないが、現時点ではポジションを保護し、注意深く状況を見守る必要がある」と述べた。
半導体株の目を見張る快走は、他の市場分野では見られない。S&P500種構成銘柄で200日移動平均線を上回る銘柄の割合は前週の58%から53%に低下。一方、フィラデルフィア半導体株指数では、構成銘柄の約97%が200日移動平均線を上回っている。こうしたモメンタムを測るテクニカル指標から、ストラテガスの調査チームは、半導体株で限定的な「メルトアップ(相場の異常な上昇)」が進行しているとみている。
ニューエッジ・ウェルスのキャメロン・ドーソン最高投資責任者(CIO)は「半導体が買われ過ぎなのは明白で、長期トレンドからの乖離(かいり)は2000年初頭以来の大きさだ」と指摘した。
その上で、投資家にとっての焦点は、足元の上昇が持続的な構造変化を反映したものか、それとも好況と不況を繰り返す同業界の景気循環における一時的な上昇に過ぎないのかだと述べた。
AIブームを背景に底堅い需要が続くとの見方から、半導体銘柄のバリュエーションは恒常的に高まるとの見方もある。だが同氏は、半導体業界について、最大かつ最長のスーパーサイクルの最中にあるものの、依然として景気循環的だとみている。
その上で「このスーパーサイクルは2023年の開始以来、著しく過小評価されてきた」としつつも、「続く間は好ましいが、需要の鈍化はいずれ訪れる。問題は『いつか』であって『起きるかどうか』ではない」と述べた。
SOX指数が200日移動平均線からどれだけ乖離しているかを見ると、モメンタムの過熱度がうかがえる。マクロ・リスク・アドバイザーズのチーフテクニカルストラテジスト、ジョン・コロボス氏によると、同指数は現在この平均線を57%上回っており、1990年以降でこの水準に達したのは1995年と2000年の2回のみだ。いずれも株式市場の下落が後に続き、後者はドットコムバブル崩壊の直前だった。
こうした状況は投資家に難しい判断を迫る。リスク選好の勢いは想定以上に長く続く可能性があり、過熱を理由に売却すれば値上がりを取り逃がすリスクがあるとコロボス氏は指摘。一方で「モメンタム主導の相場への依存度が高すぎれば、トレンドが崩れた際に制御を失う恐れがある」という。
一方、バークレイズのグローバル株式タクティカル戦略責任者、アレクサンダー・アルトマン氏は、足元の上昇に逆張りするのは時期尚早との見方を示す。顧客から半導体株の売却時期に関する問い合わせが増えているものの、極端な熱狂の兆候はまだ広範には見られず、上昇トレンドが完全に終わったとは言えないとみる。
「現時点でVanEck半導体ETF(SMH)を空売りするのは、キャリアを台無しにするような行為に思える」と同氏は述べた。
原題:Retail Floods Into ‘Silly’ Chipmaker Rally as Moves Get Extreme(抜粋)
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