英エセックス州チェルムスフォードのシティー競馬場に夕日が沈むころ、英右派ポピュリスト政党「リフォームUK」の党首、ナイジェル・ファラージ氏がヘリコプターから降り立った。

青いスーツに色とりどりのネクタイ、愛国心を示すユニオンジャックのピンを身に付けた彼は、シャンパンを片手に祝杯の準備をしていた。

7日に行われた地方選の投票の結果、イングランド南東部のエセックス州をはじめ多くの自治体の議会で、リフォームUKは議席を得た。ファラージ氏は、同党が奪った全ての議席に言及し、対立候補ら痛烈に批判した。

しかし問題なのは、ファラージ氏の政策が実際にどのようなものか知る人がほとんどいないという点だ。今年1月に世界経済フォーラム(WEF)年次総会( ダボス会議)に参加した同氏はブルームバーグに対し、英経済のルールブックの「あらゆる基本理念」を覆したいと述べたが、その詳細は今も策定中だ。

英国の欧州連合(EU)離脱の推進派として知られるファラージ氏(62)は、キャリアの初期段階では、顧客をランチで酒盛りに誘う金属トレーダーとして有名だった。政治資金を提供する富裕層と親しく交流し、今や新たな権力基盤と、党の政策を白紙の状態からつくり直す好機を手に入れた。その重大局面に立ち向かうことが課題となるが、彼自身の陣営も難しさを認識している。

チェルムスフォードでの集会に参加した安全衛生コンサルティング会社のオーナー、ダレン・デニス氏は「われわれは今、足掛かりを得た。総選挙前に結果を出すため2、3年の猶予がある」と語った。

リフォームUKは今回の地方選で、世論調査の支持を実際の票に結び付けることに成功した。イングランド全体で1400議席余りを獲得して首位に立ち、スコットランドとウェールズでも議席を上積みした。ファラージ氏は、愛国心をあおり、EUを批判し、移民に否定的な党のブランドを確立する確かなチャンスを得た。

彼の前に広がる機会はますます大きくなったと思われる。より広い観点で見れば、与党労働党と最大野党・保守党への支持急落は、英国の伝統的な二大政党制を弱体化させ、政治状況の亀裂を露呈させた。

トランプ米大統領の盟友であるファラージ党首にとって、リフォームUKの議席増は、監視の目と責任が厳しくなることを意味し、反エスタブリッシュメント(既得権益を持つ支配層)的振る舞いは難しくなる。暗号資産(仮想通貨)ディーラーからの500万ポンド(約10億6600万円)の寄付が明らかになったような問題を簡単に片付けることもできなくなるだろう。

避けて通るのが好都合と考えていた分野でも、特定の立場を取るよう求める圧力が高まるはずだ。本性を明らかにすることが、ファラージ氏にとって最も厳しい試練になるかもしれない。

選挙運動で街頭に立つファラージ氏(ウェールズ、4月)

原題:Once Ridiculed, Farage Is Closing In on His Quest to Rule the UK(抜粋)

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