4つの要因を見極める局面

5月8日の米国株式市場は、米国とイランの戦闘終結に向けた目立った進展がない状態が続いたが、ハイテク関連株や半導体関連株が堅調だった。4月の雇用統計は非農業部門雇用者数が比較的堅調だった上で、平均時給の伸び率が市場予想を下回った。景気についてはポジティブである一方、インフレ懸念を強める内容ではなかったため、株式市場にとっては望ましい雇用統計だったと言える。株式市場は①イラン情勢の見極め、②ハイテク関連の強気見通しの行方、③米景気の下振れリスク、④インフレ懸念とFRBの利上げと金利上昇リスク、といった要因を見極める局面にある。この日は、①イラン情勢に進展はなく、③米景気も④インフレ懸念も強くならなかったことから、②ハイテク関連の強気見通しが続き、ナスダック指数やSOX指数がまとまった幅で上昇した。今後もこの4つの要因のバランスを見定める必要がある。

FRBのスタンスが読めないため、金利は横ばい圏の動き

5月8日の債券市場は、インフレ懸念が小幅に弱まる中で、金利が低下した。長期金利は前日差▲3.2bp、2年金利は同▲2.7bpだった。FF金利先物市場が織り込む年内の利下げ観測は、3月下旬以降はほとんどゼロの状態が続いているが、この日は0.06回となり、前日の0.15回から小幅に減少した。大きな変化ではないが、4月雇用統計において平均時給の伸び率が比較的穏当なものであったことが注目された。当面はFRBの次の一手に関する見通しが定まりにくい展開が予想され、金利は方向感を欠いた動きが続くだろう。

米労働市場は25年後半に悪化したが、26年以降は底堅い動き

5月8日に公表された4月の雇用統計は比較的堅調な結果だった。非農業部門雇用者数変化が前月差+11.5万人と、市場予想(Bloomberg調べ)の同+6.5万人を上回った。失業率は4.3%となり、市場予想と一致した。米国の労働市場は25年後半にやや悪化したが、足元では悪化傾向が止まっているように見える。例えば、25年前半の失業率の平均値は約4.2%だったのに対して、25年後半の平均値は約4.4%となったが、26年以降は約4.3%である。チャレンジャ―社の調査ではレイオフも少なくないことが示されているが、依然として求人件数が高水準なので、再就職ができない状況ではないのだろう。平均失業期間は25年前半が約22.4週、25年後半が約24.0週、26年以降が約24.8週と、比較的落ち着いた動きである。27週以上の長期失業者数は25年前半が約153.3万人、25年後半が約188.4万人、26年以降が約184.2万人である。仕事が見つからずに破綻状態になる家計が増えていることはないだろう。
他方、平均時給の伸び率(前年同月比)は25年前半が約4.0%、25年後半が約3.9%、26年以降が約3.6%となっており、鈍化傾向が続いている。コロナ後のインフレ局面で賃金インフレが生じたことの反動が続いているようである。

平均時給が伸び悩んでいることに加えて、インフレ率が高止まりしていることを考慮すれば、実質賃金の伸び率が鈍化していることは明らかである。米経済は底割れを避けることはできているが、力強い成長を期待することは困難である。特に労働者層の消費には期待しにくい状況であり、アップサイドは株価の上昇を反映した資産家層の消費(資産効果)次第となる。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)