米ナスダック市場での上場廃止リスクに直面していた小規模な製薬会社が、がん治療の特許取得を発表してわずか2カ月で、人工知能(AI)企業への転身に踏み切った。この路線転換により、株価は一時的ながら回復した。

クオリジェン・セラピューティクスは現在、AIxクリプト・ホールディングスに社名変更し、銘柄コード「AIXC」で取引されている。改称後の9月下旬には株価が2倍超に上昇した。

こうした「特効薬」に打って出たマイクロキャップ(超小型)株は他にも数多く、結果はまちまちだ。かつて人気を博したウール製スニーカーメーカーのオールバーズは、AI開発企業への転換計画を発表し、現在はニューバードAIと名乗っている。この方針転換を受けて株価は一時6倍に急騰したが、その後は上昇分の大半を失った。

放物線を描くような株価上昇はウォール街で警戒感を呼んでいる。2021-22年にマイクロキャップ企業が「クリプト(crypto)」や「ブロックチェーン(blockchain)」を相次いで社名に加えた動きや、1990年代後半の「ドット・コム(.com)」ブームを想起させる。いずれのケースも最終的に株価は大きく下落した。最近の例も同様に、短期間の急騰後に長期的な下落に転じるパターンをたどっている。

AIxクリプトの株価は現在、製薬会社だった当時の水準を30%超下回って推移。ニューバードAIは過去最高値から63%下げており、アナリストらはロングアイランド・アイスト・ティーがロング・ブロックチェーンへと改称したものの失敗に終わった事例と比較している。同社は飲料事業からの転換が失敗し、最終的に上場廃止となった。

IGウェルスマネジメントのチーフ投資ストラテジスト、フィリップ・ペターソン氏は、社名変更が相次ぐ現象は歴史的に見て、特定の投資テーマにおける「熱狂のピーク」を示す兆候だと指摘する。

「藁(わら)をもつかむ思いのようなものだ」とし、「その時々で最も注目される名称に合わせて自らを作り替え、テーマに便乗しようとしている。しかし通常、それは誤った方向であることを示す」と述べた。

こうした戦略が株価を押し上げる保証はなく、短期的であっても成功するとは限らない。アカディアン・アセット・マネジメントの分析によると、2023年以降、米主要取引所ではAIテーマを意識した社名変更が33件あったものの、大幅な株価上昇を伴った例はごくわずかにとどまっている。

「企業の社名変更は、AIバブルの可能性を示すシグナルだ。1990年代後半のインターネット株でも、まさに同じパターンが見られた」とアカディアンのポートフォリオマネジャー、オーウェン・ラモント氏は先月、顧客向けノートで指摘した。その上で、この動きを「市場センチメントに『迎合する』企業行動の一形態だ」と評した。

投資会社もまた、暗号資産ブームの際と同様、あらゆるAI関連資産に対する旺盛な投資家需要を取り込もうと動きを加速させている。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータによると、2024年にはAI関連の上場投資信託(ETF)が18本設定され、25年にもさらに8本が市場に投入された。これに対し、暗号資産ブームのピークだった21年と22年には、暗号資産およびブロックチェーン関連ETFの設定本数はそれぞれ10本、12本だった。

AI関連ETFへの資金流入額は、25年7-9月(第3四半期)だけで87億ドル(約1兆3600億円)に上った。一方、23年にビットコインを直接保有するファンドが登場した際は、ETFの新規カテゴリーとして当時過去最高を記録したが、ブロックチェーンや暗号資産関連ETFへの純流入額が最も多かったのは、21年1-3月(第1四半期)の13億ドル弱にとどまっている。

もちろん、AI分野で真に主導的な立場にある巨大テクノロジー企業と、単に流行に便乗している企業には明確な違いがある。データセンターやAI関連インフラの整備は足元の強気相場を通じて株価上昇を後押ししてきた。

今週だけでも、半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が市場予想を上回る見通しを示し、同業他社の株価も押し上げられた。データセンターへの投資拡大が追い風となった。フィラデルフィア半導体株指数は3月の安値から55%余り上昇している。

それでも、この動きを懸念する投資家もいる。

ムリエル・シーバートのマーク・マレック最高投資責任者(CIO)は「ニューバードAIのような企業が存在し、株価が40セントにまで急落していないという事実自体が、何よりも不安材料だ」と述べた。

原題:‘Peak Euphoria’ Seen as Small Companies Jump on the AI Bandwagon(抜粋)

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