議論紛糾…検察のホンネは?
小川彩佳キャスター:
議論はなぜここまで紛糾するのでしょうか。自民党側が何度も修正案を求めるという異例な展開になっていますが、検察側としてはそもそも何がネックになっているのでしょうか。

弁護士 若狭勝さん:
まず前提として、冤罪は最もあってはならないと思います。私は冤罪を防ぐために検事になったので、冤罪の問題には非常に思い入れがあります。
ただ一方で、大きく言えるのは「有罪確定判決」の重みです。有罪確定判決には11人ほどの裁判官が審理に関与しています。その重みがあるので、あまりにも手続き的に簡単に再審を認めると、有罪確定判決の重みが揺らぎ、そうすれば司法の信頼が揺らいでしまうと検察は一番考えていると思います。
藤森祥平キャスター:
現在の再審制度は、地裁が再審開始を決定し、検察側が抗告、不服を申し立てると、高裁で再審を検討し、高裁が再審を支持した場合はもう1度検察側が特別抗告できます。その過程を経て最高裁まで進むため、時間がかかり、袴田さんの場合は最終的に再審が決まるまでに9年もかかってしまいました。
そのため、検察の抗告を「全面禁止」しようという議論が始まりましたが、法務省側が出した見解は「原則禁止」でした。

▼現在の再審制度
地裁 再審開始を決定→(抗告)→高裁 再審を支持→(抗告)→最高裁 再審を支持→(確定)→再審(裁判やり直し)
▼修正案
地裁 再審開始を決定→再審(裁判やり直し)
検察が例外規定を乗せるところにこだわっているのはなぜなのでしょうか。
弁護士 若狭さん:
有罪確定判決の重みがあるので、慎重に再審開始決定に臨まなくてはいけないと思います。しかし、袴田事件はあってはならないと思っていて、長期に渡るのは大問題なので、今までのやり方には問題があると思います。
結論からいうと、抗告は1回限りで認めて、そして高裁における審議の期間を1年程度に限定するのがいいと思います。確定判決の重みと、冤罪にかかった人を早期に救うこととのバランスがいいと思います。

小川彩佳キャスター:
素朴な疑問としては、検察に異論があるのであれば、再審という裁判の中で争えばいいのではないかという考えもあると思うのですが…
弁護士 若狭さん:
そういう考え方もあります。ただ刑事訴訟法は、有罪確定判決の重みを鑑みて、その前に再審開始を認めるかどうかという手続きを要しているんです。例えば、銀行のアプリを使うときにはダブルチェックがあるように、重要な問題であるために、きちんと何個も関門を設けようとするのが法律の制度趣旨なんです。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
バランスを取らなくてはいけないという考えは分かりますが、国民目線からすると、冤罪を生んできた側が、自分たちに都合がいいルールをつくろうとしているような不信感があると思います。
今回も最初は「全面禁止」であったのが「原則禁止」になり、しかも「本則」ではなく「付則」にしようとどんどんラインが後退してきてしまっていると感じます。本来であれば証拠の全面開示や、取り調べの可視化なども含めて冤罪を生まないようにしていこうという話が、中途半端に改正した事実だけで丸め込まれてしまうのではないかという不安があります。