(ブルームバーグ):トランプ米大統領がイランの小型砲艦を攻撃するよう命じたことは、非対称戦略が世界最強の米海軍の行動を妨害している現状を改めて示した。米軍の航空機や駆逐艦は、重要なエネルギー輸送路である海域で一斉に展開する高速小型艇の追跡を余儀なくされている。
トランプ氏は23日、SNSへの投稿で「米海軍に対し、小型艇であってもすべての船を攻撃して撃沈するよう命じた」と述べ、これらの船がホルムズ海峡に機雷を敷設していると主張した。
標的となるイランのいわゆる「蚊の艦隊」は、長年にわたり米当局に認識されており、これに対抗する能力を兵器試験担当者は新造軍艦で定期的に評価している。2020年の緊張時にも、トランプ氏は米艦船を困らせる「イランの砲艦」を標的にするよう海軍に指示していた。
今回の命令は、イラン海軍が壊滅的打撃を受けたとする政権のこれまでの主張を弱めるものとなる。ホワイトハウスのレビット報道官は22日にFOXニュースのインタビューで、イランの「高速砲艦」の脅威を重大視せず、米国がイランの通常海軍能力を破壊したと強調していた。
また、イランによる機雷敷設の規模についても疑問が残る。米中央軍は詳細を明らかにしていない。イラン革命防衛隊の小型艇部隊の規模も不明で、2019年の国防情報局の推計ではペルシャ湾全域に数百隻が配備されているとされた。
約8週間に及ぶ紛争は、米国が合意成立まで封鎖を解除しない一方、イランは封鎖解除がなければ合意しないと主張するという、いわば「ニワトリが先か卵が先か」の膠着(こうちゃく)状態に陥っている。
命令が実行されれば、戦闘作戦の様相が変化し、2週間以上続く停戦が危うくなる可能性がある。これまで米国は空爆に依存し、海上および地上目標を攻撃することで自軍への脅威を最小限に抑えてきた。海上での追いつ追われつの展開は、米艦船が交戦の巻き添えになるリスクを高める。
元米特殊作戦軍司令官のウィリアム・マクレイヴン氏は22日にCNNに対し、「これはイラン側の交渉カードだ。間違いなく、彼らは依然としてホルムズ海峡を支配できる」と述べ、高速攻撃艇は「無人機や短距離弾道ミサイルと組み合わせることで、われわれの艦船を危険にさらす」と指摘した。
元国防総省中東政策担当で海軍大学院大学教授を務めた経歴を持つジェームズ・ラッセル氏は、米国が直面する小型艇による脅威は、第2次世界大戦で米海軍の哨戒魚雷艇に対峙(たいじ)した日本海軍の状況に似ていると述べた。
同氏は「これらの装備を強力な地上配備ミサイルシステムと組み合わせれば、米海軍がホルムズ海峡を強行突破するのを阻止する包括的な接近阻止・領域拒否(A2/AD)体制が構築される」と語った。
こうした脅威は米海軍が長年認識してきたものだ。15年には、沿海域戦闘艦がイランなどの小型艇群への対処能力を検証する演習で苦戦した。
現在紅海に展開する空母ジェラルド・R・フォードは22年、無人航空機や高速で機動する水上目標(小型艇)に対する自衛能力の試験評価を受けたと、試験機関は最新報告で明らかにしている。これらの試験結果は機密扱いとされている。
(元国防総省幹部の発言などを追加して更新します)
--取材協力:Meghashyam Mali.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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