トランプ米大統領は20日、幅広いエネルギー事業に連邦資金を投入するため、国防生産法を発動した。イラン戦争の長期化に伴う原油やガソリン、電力コストの上昇に対する消費者の懸念がホワイトハウスに重くのしかかっている。

トランプ氏は同法に基づく決定5件に署名。国内の石炭火力と液化天然ガス(LNG)、石油、送電網インフラが対象となる。同氏はこれらの分野について、こうしたエネルギー不足が国家防衛を脅かしていると述べた。

今回の措置により、エネルギー省はトランプ政権の看板政策である税制・歳出パッケージで昨年確保された資金を活用できるようになる。同省にはエネルギー購入や財政支援などを通じ、資金不足や規制上の滞りといった市場の障壁を克服する権限を与えられる。

支援対象には、石炭火力発電所や製油所、ガスタービン、変圧器など不足が指摘されている電力機器の製造施設が含まれる可能性がある。

ホワイトハウスのロジャース報道官は今回の措置について、トランプ氏の公約である「米国のエネルギー優位性を完全に解き放ち、経済と国家安全保障を守る」ことの実現に資すると説明した。

11月の中間選挙前に電力やガソリンを含む生活費の高騰への有権者の不満が広がれば、共和党の議会主導権を危うくし得る。人工知能(AI)産業への供給増加もあり、電力需要は急増。トランプ氏が引き下げを約束した電気料金の上昇圧力となり続ける恐れがある。

同盟国のエネルギー安全保障

トランプ氏は、国内の石油生産や石炭火力発電の拡大を推進しており、これがエネルギー料金の抑制と、AIなど急成長する産業による電力需要の拡大への対応につながると主張している。

同氏は20日、石炭火力発電について、「防衛施設や産業拡大、AIのような新興テクノロジーの高いエネルギー需要を支えるため」に必要だと述べるとともに、国内の「老朽化し制約のある送電網インフラ」は「国家防衛に対する脅威の増大」だと指摘。特に変圧器や高電圧送電部品などの生産・設置能力が限られている点を問題視した。

さらにトランプ氏は、LNGの供給能力が同盟国のエネルギー安全保障確保に不可欠だとし、パイプラインや処理、貯蔵、輸出能力の不足は「危機時に米国とそのパートナーを危険にさらす」ことになると強調。米国内の精製能力は軍の燃料供給の中核だとし、「直ちに連邦政府の対応がなければ、米国の防衛能力は混乱に対して脆弱(ぜいじゃく)なままとなる」と警告した。

国防生産法は、大統領が米国の国家防衛能力を強化するために単独で措置を講じることを可能にし、重要な産業資材の生産拡大を民間企業に指示することなどが含まれる。トランプ氏はすでに冷戦期に成立したこの法律を活用し、南カリフォルニア沖での石油生産再開に向けた取り組みなど、自らのエネルギー政策を前進させている。

バイデン前大統領も同法を発動し、太陽光パネルや変圧器、ヒートポンプ、燃料電池の国内生産を拡大することを目的にエネルギー技術の強化を図っていた。

原題:Trump Invokes Wartime Powers to Fund New Energy Projects (1)(抜粋)

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