(ブルームバーグ):米オールバーズが人工知能(AI)へと舵を切る。かつてウール製ランニングシューズでテック業界の人気を集めたサンフランシスコ発のブランドは先週、AIコンピューティングインフラ分野への参入を発表した。
この異例の戦略転換は、ウォール街で即座に思いがけない熱狂を招いた。オールバーズの株価は15日に582%急騰した後、翌日に下落した。
この株価復活がたとえ短命で表面的なものであっても、近年苦境にある同社の長期株主にとっては歓迎材料かもしれない。オールバーズは小売店舗の大半を閉鎖し、時価総額はピーク時から99%減少している。だが、スタートアップの目を見張るような評価額や企業の支出拡大が新たなテックバブルへの懸念を呼んでいる今、AI業界においてミーム株は特に必要とされていない。
問題なのは、社名を「ニューバードAI」に変更する可能性を示唆しただけで株価が押し上げられたように見える点だ。同社の計画に関する詳細は限定的で、「完全統合型GPUアズ・ア・サービス(GPUaaS)」や「AIネイティブなクラウドソリューションプロバイダー」を目指すといった専門用語やバズワードが並ぶにとどまった。これは、ひげそり用品のダラー・シェーブ・クラブが大規模言語モデル(LLM)を発表するのと同じくらい違和感がある。
オールバーズはコメント要請に応じなかった。カリフォルニア州とマサチューセッツ州に残る米国内2店舗にも電話をかけたが、明確な説明は得られなかった。両店舗ともスニーカーの販売は継続していると認めたが、ChatGPT時代に向けた変革に関する情報は得られなかった。ある従業員は、「その話は聞いているが、コンピューターやAIに関連した商品は扱っていない。靴だけだ」と説明した。
もちろん、このオールバーズの状況の奇妙さは、2010年代に見られたスタートアップの度重なる方向転換や、恣意的な評価に支えられた暗号資産(仮想通貨)のブーム・アンド・バスト(急激な拡大と縮小)といった、シリコンバレーで繰り返されてきた典型的な構図を想起させる。しかし筆者がすぐに思い出したのは、ドットコム崩壊時のマーケティング手法だ。象徴的な失敗例として、ペッツ・ドット・コムやウェブバンといった小売企業が挙げられる。インターネットの波に乗りながらも、劣悪な利益率以外に目立った成果を残せなかった。
当時の事例で、オールバーズとの比較対象として特に際立つのがザップ・ドット・コムだ。親会社のザパタは長く複雑な歴史を持つが、インターネット・ポータルへと変身を図った時点ではフィッシュオイル製品を販売していたに過ぎなかった。同社はメディア、電子商取引、ゲームなど多様なウェブ資産を集め、検索エンジンサイトのエキサイトの買収を試みたこともある。結果を先に言えば、ザップの戦略は失敗に終わった。
当時、ザップ傘下の成長途上にあった企業で若手社員だったジェン・ヘック氏は、「ウェブ1.0」の熱狂がいかに急速に崩壊へと転じたかを記憶している。現在では突飛に見えるザパタの方向転換も、インターネット革命の熱気の中では実現可能に思えたという。「『人生ってこんなに簡単なんだ』という感覚から、一気に全てが終わってしまった」と同氏は振り返る。
テックバブルを生き延びた企業は、差別化された製品と適切な創造的思考を持つ人材によって支えられており、単に流行に便乗していただけではなかったと、ヘック氏は指摘する。
オールバーズの方向転換がザパタより成功する可能性はあるが、コアウィーブやオラクルといったAIインフラ分野の競合を渡り合うには、単なる流行を意識したリブランドだけでは不十分だろう。靴からコンピューティングへというビジネスモデルが実証できるまでは、フィッシュオイルを売っていた方がうまくいくかもしれない。
原題:Allbirds AI Move Stirs Memories of Dot-Com Frenzy: Tech In Depth(抜粋)
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