(ブルームバーグ):中国の習近平国家主席は今週、北京で異例のペースで外交日程をこなした。米国がイランとの対立に巻き込まれる中、各国首脳は中国との関係強化に強い関心を示している。
北京で正式な首脳会議が開かれていないにもかかわらず、習氏は少なくとも5件の重要な首脳会談をこなした。中国が主要なサミットを開催した週を除けば、2024年7月以来のハイペースだ。
会談相手は、米国の北大西洋条約機構(NATO)同盟国スペインのサンチェス首相やアラブ首長国連邦(UAE)アブダビのハリド皇太子ら。隣国ベトナムのトー・ラム国家主席兼共産党書記長も訪中した。
トランプ米大統領がイランを「石器時代」に逆戻りさせると爆撃を示唆する中、習氏は中国を安定の基盤であり国際ルール尊重の防波堤として位置付けてきた。
ただし、世界2位の経済大国である中国との関係を深めれば恩恵があるとアピールしてきた中国指導部が、現在のエネルギー危機に直面する国々に具体的支援を提供するかは依然不透明だ。
アジア・ソサエティー政策研究所中国分析センターの中国政治担当フェロー、ニール・トーマス氏は「世界のリーダーが北京に向かっているのは、予測不能な米国に対するヘッジとして中国を見る向きが強まっているためだ」と指摘。「多くの国が、安定や外交、開かれた世界経済の擁護者として、中国政府がより大きな役割を果たすことを望んでいる」と述べた。
連携模索
対照的にトランプ氏は今週、国際舞台での孤立を深めた。イタリアのメローニ首相やスターマー英首相といった従来の緊密な同盟国の首脳を公然と非難したほか、ローマ教皇レオ14世も批判した。
トランプ氏はまた、同盟国に対し、ホルムズ海峡を開放してペルシャ湾から世界へのエネルギー供給を回復させるため米軍と協力するよう圧力をかける手段として、脅しを強めてきたが、成果は上がっていない。
各国首脳は米国抜きのまま連携を模索している。スターマー氏はフランスのマクロン大統領と共に、ホルムズ海峡の自由な航行の回復を目指す約40カ国を集め、オンライン会議を17日に主催するためパリに向かう。これまで韓国と日本、オーストラリアもこの取り組みに参加しており、停戦支援が主な焦点となっている。
日本はすでに資金支援で積極的に動いている。高市早苗首相は今週、東南アジアなどが原油価格高騰に対応できるよう100億ドル(約1兆6000億円)の支援パッケージを発表した。
高市氏はこの支援策を15日の「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)プラス」のオンライン首脳会合で表明。この会合にはベトナムのフン首相も参加した。トー・ラム氏は同じ日に北京で習氏と会談したが、連帯の言葉は示されたものの具体的支援はなかった。
中国のこれまでで最も具体的な公的行動は、ロシアとの「制限なき」友好関係の文脈で示されている。習氏は今週、ロシアのラブロフ外相との会談でロシアとの関係の安定性を改めて強調し、二国間の連携強化を約束した。
イランを支援するロシアと中国は、今月に入りホルムズ海峡の再開に向けた各国の協調を促す国連安全保障理事会決議を拒否権で阻止した。この決議は海峡での軍事行動を事実上容認する内容だった。中国は、この「バランスを欠いた」提案は問題の根本原因に対処しておらず、イランに対する非難に終始していると主張した。
トランプ氏は先週、イランに和平交渉参加を促したのは中国だと公に評価しており、イラン当局者も同様の見解を示したと報じられている。
ただし、中国国営メディアはこれに反論し、この主張は交渉停滞の責任をイランに押し付け、中国に停戦交渉の負担を負わせるものだとしている。中国外務省は停戦に向けて独自の努力を行っていると説明しているが、詳細は明らかにしていない。
批判は容易
シンガポール国立大学(NUS)の荘嘉穎准教授(政治学)は習氏と中国当局は発言を強めつつも、交渉が失敗した場合に責任を負わされないよう距離を保っていると分析。
「北京はワシントンとの関係管理にも懸念を抱いている。交渉により直接的かつ積極的に関与すれば、トランプ政権から評価される可能性がある一方で、怒りや非難を招く恐れもある」と語った。
世界最大の原油輸入国である中国は、現時点ではイラン戦争に一段と積極的に関与する経済的インセンティブを欠いている。膨大な商用原油備蓄により、アジアの他地域を襲う急激な価格上昇の影響をこれまで回避している。
だが、戦争が長期化すれば状況は変わり得る。原油価格の上昇は、長期化していたデフレ傾向を反転させ、すでに低収益に苦しむ産業にさらなるコスト負担をもたらす公算が大きい。
それでも中国は、不安定な紛争に直接巻き込まれることには慎重だ。中国が2023年にサウジアラビアとイランの関係改善を仲介した際には、イランとの友好関係や湾岸諸国との商業的結び付きが前面に出た。
この成果は当時、地域における習氏の影響力拡大を示すものとして広く評価された。しかしその後、中東で戦闘が再燃する中、中国はおおむね一歩引いた立場を取っている。
2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃とその後の戦闘激化は、中国の影響力の限界を浮き彫りにした。公式メッセージは自制と緊張緩和の呼びかけにとどまり、活発なビジネス関係の維持に重点が置かれている。
ローウィー研究所(シドニー)のリチャード・マクレガー上級研究員は、中国は世界経済に深刻な打撃を与える対立の解決に積極的に関与する意思を示していないとみている。
同氏は「米国を批判するのは非常に容易だ。最近では米国の同盟国でさえトランプ政権と対立しているが、いずれ中国は批判者の立場を超え、実質的に外交に関与する必要がある」と述べた。
原題:Xi Welcomes Slew of World Leaders as Trump Fights With Allies(抜粋)
--取材協力:Jing Li、アンスティー・クリストファー.
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