(ブルームバーグ):米大統領は合法的にどのように解任され得るのか。広く知られているのは、米議会に付与された弾劾という手続きだ(行使されるケースは非常にまれ)。だが、米憲法修正第25条という別の仕組みもあり、異例の状況下で大統領自身の政権チームによって解任される道を定めている。
トランプ大統領のイラン戦争への対応を受けて、足元では修正第25条の発動を巡る議論が再燃した。停戦に合意しなければイランの「文明全体」を破壊すると威嚇したトランプ氏の発言が引き金となり、複数の有力議員らが同条項の発動による解任を求めた。
2026年初めにも、デンマーク自治領グリーンランドを巡るトランプ氏の不安定な行動を理由に、民主党の一部議員が同条項の適用を主張していた。トランプ氏に対する修正第25条の適用は、第一次政権時代にも取り沙汰された。
修正第25条の内容は?
同条では、副大統領と閣僚の過半数が大統領について「職務の権限と義務を遂行できない」と判断した場合に解任が可能と定める。大統領がこの判断に異議を唱え、副大統領と閣僚が判断を覆さない場合、議会は上下両院の3分の2の賛成により解任を命じることができる。また、大統領が任期途中で退任した場合、後継者は副大統領であり、大統領が大きな手術を受けるといった場合にも、副大統領が大統領代行を務めると定めている。
なぜ今、取り沙汰されているのか?
トランプ氏は7日、イランに圧力をかけるため、自ら定めた停戦交渉期限の直前に「一つの文明全体が今夜滅び、二度と戻ることはないだろう」とSNSに投稿した。これを受けて民主党議員や一部の保守派論客がトランプ氏の解任を求めた。それに先立つ数日間にも、ホルムズ海峡が再開されなければ、米国がイランの民間インフラを意図的に爆撃するとトランプ氏は警告。戦争犯罪に当たる恐れがあるとの批判を招いていた。
グリーンランドの文脈で言及された理由は?
民主党議員が1月、グリーンランドに対する強硬姿勢を理由に、修正第25条の発動によるトランプ氏解任を求めた。これにはエド・マーキー上院議員、シドニー・カムラガー・ダヴ、ヤサミン・アンサリ、エリック・スウォルウェルの各下院議員が含まれる。トランプ氏は米国がグリーンランドを所有すべきだと主張。米国による支配を認めるようデンマーク政府に要求し、欧州諸国が阻止に動けば新たな懲罰的関税を課すと警告した。トランプ氏はその後、姿勢を後退させた。
第1次政権での議論は?
2017-21年の第1次トランプ政権時代にも、トランプ氏の行動が不安定だとして、批判的な向きから修正第25条の発動の議論が持ち上がった。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)とABCニュースは18年9月、当時のローゼンスタイン副司法長官が前年、同条項の発動を閣僚に呼びかける可能性を検討していたと報じた。ローゼンスタイン氏はこれを否定し、NYTへの声明で同条項発動の「根拠はない」と指摘した。
その数週間前、NYTはトランプ政権の「高官」とする人物による論説を掲載。「多くの人が不安定さを目撃していることを踏まえ、政権内では修正第25条発動の初期的な議論が浮上した。これは大統領解任に向けた複雑な手続きを開始するものだ。しかし、誰も憲法上の危機を引き起こしたくはなかった。そのため、いずれ終わるまで、可能な限り政権を正しい方向に導くことに努める」と記されていた。
また21年1月6日にトランプ支持者が連邦議会議事堂を襲撃したことを受けて、下院は当時のペンス副大統領に修正第25条の発動を促す決議案を可決した。同決議に拘束力はなく、主に象徴的な意味合いにとどまった。その後の事件に関する議会調査では、国務長官を務めていたマイク・ポンペオ氏が議事堂襲撃直後に一部閣僚の間で同条項が話題に上ったことは確かだと明らかにしたが、実際に発動を真剣に検討した事実はないと述べた。
1期目とは対照的に、トランプ氏は自身への忠誠心の強い人物で2期目の閣僚を固めている。
なぜ修正第25条は存在するのか?
憲法が明確に規定していなかった大統領と副大統領の継承問題に対処するためだ。例えば、1841年にウィリアム・ハリソン大統領が在任中に死去した際、副大統領ジョン・タイラーが大統領代行となるのか、大統領に昇格するのか、あるいは副大統領のままなのかを巡る議論が生じた。タイラーはその後、自らの判断で裁判官に大統領就任宣誓を行わせた。
修正第25条は、1963年のジョン・F・ケネディ大統領暗殺を受けて議会に提出され、必要な4分の3の州による承認を得て批准された。ケネディ銃撃直後の混乱で、仮に同氏が半意識状態あるいは重篤な負傷のまま生存した場合、誰が国を統治するのかという切迫した問題が浮上していた。
これまでに使用された事例は?
現職大統領の解任に用いられたことはないが、副大統領の欠員補充には2度使われている。修正条項が発効する以前は、副大統領が長期間不在となるケースもあった。1973年、スピロ・アグニュー副大統領が脱税容疑で辞任に追い込まれた際、当時のリチャード・ニクソン大統領はジェラルド・フォード下院議員を後任に指名し、上下両院の承認を得た。翌年にニクソン大統領が辞任すると、フォード副大統領が大統領に就任し、ネルソン・ロックフェラー元ニューヨーク州知事を副大統領に指名。議会がこれを承認した。
原題:Could the 25th Amendment Be Used to Oust Trump?: Explainer(抜粋)
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