(ブルームバーグ):ホワイトハウスは、米国がイランと直接協議を行うと発表した。中東で戦闘が続いているほか、レバノンでのイスラエルの攻撃も重なり、6週間に及ぶ紛争で成立したばかりの脆弱(ぜいじゃく)な停戦が崩れる恐れが高まっている。
レビット報道官は、パキスタンの首都イスラマバードで開催される協議について、米代表団をバンス副大統領が率い、ウィトコフ特使とトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏も参加すると明らかにした。初回協議は現地時間11日午前に実施される。
一方、中東地域全体では散発的な戦闘が続き、レバノンではイスラエルが親イラン民兵組織ヒズボラへの攻撃を継続。イラン側はこれを、発効から1日にも満たない停戦合意違反と位置付けた。
イランのアラグチ外相はSNSへの投稿で、「イランと米国の停戦条件は明確だ。米国は選択しなければならない――停戦か、イスラエルを通じた戦争継続か。両方を同時に取ることはできない」と述べた。
イランのガリバフ国会議長はレバノンでの戦闘に加え、イラン領空へのドローン侵入や「イランの濃縮権の否定」とされる動きを挙げ、「このような状況で二国間停戦や交渉は合理性を持たない」と主張した。
イランは湾岸諸国への攻撃を継続し、ホルムズ海峡は依然として事実上封鎖された状態にあり、停戦合意の脆弱さを浮き彫りにした。トランプ米大統領は停戦の条件として同海峡の再開を挙げている。レビット氏は8日、海峡が「直ちに再開」されることをトランプ氏は期待していると改めて述べた。
トランプ氏はSNSへの投稿で、「真の合意が完全に履行されるまで」、米軍はイラン国内および周辺地域にとどまるとの考えを示した。さらに、何らかの理由で履行されない場合は、「『戦闘が始まる』。これまで誰も見たことがないほど大規模で強力なものになる」と警告した。
イランの準国営ファルス通信は、イスラエルの攻撃を受け、ホルムズ海峡の石油タンカー航行が停止されたと報じた。これに対しバンス副大統領は、「海峡が再び開き始めている兆候が見られる」と述べた。
ハンガリー訪問中のバンス氏は記者団に対し、交渉は「正しい方向に進んでいる」と語り、ガリバフ議長の発言には反発。「彼が英語をどの程度理解しているのか疑問だ。発言の一部は意味を成していなかった」と述べた。
バンス氏は、イスラエルが米当局者との協議の中で、「交渉の成功を確実にしたい」という理由から、「レバノンでの行動を少し自制する」意向を示したことも明らかにした。AFP通信によると、ヒズボラは「停戦違反」への対応としてイスラエルに向けてロケット弾を発射したと発表した。
イスラエルはヒズボラに大規模攻撃
イスラエル軍は8日、イランとの戦争開始以降で最大規模となる対ヒズボラ作戦を実施し、10分間で100カ所以上の司令拠点や軍事施設を攻撃したと発表した。ネタニヤフ首相は、今回の軍事作戦によりイラン政権の能力を数年単位で後退させたと評価しながらも、戦争は終結していないと述べた。
トランプ氏は8日、レバノンは「この合意には含まれていない」と述べつつ、同地域の戦闘が広範な合意を損なうことはないとの認識を示した。
フランスのマクロン大統領は8日夜、X(旧ツイッター)への投稿で「イスラエルが本日レバノンで実施した無差別攻撃は、多数の民間人犠牲者を出した」と非難した。
トランプ氏が7日夜に発表した停戦は、イランに大規模な打撃を与えるとした従来の警告からの後退で、長期的な世界的エネルギー危機への懸念を和らげた。
停戦合意を受け、原油価格は8日に17%以上急落した。ただ、停戦に後押しされた世界的な株式相場の急騰は、イラン側がいくつかの条件が破られたと主張したことを受けて失速。市場に残る不確実性が浮き彫りになった。9日のアジア市場開始後、原油価格は上昇し、ブレント原油は約2.5%高となった。
ペルシャ湾内には800隻以上が滞留しており、船主や保険業界団体は、安全な航行が可能か判断するにはさらなる情報が必要だと警告している。
矛盾するトランプ氏の発言
トランプ氏は8日午前、合意内容を巡り混乱を招く発言を相次いで行い、海峡通過船から通航料を徴収するためイランとの合弁事業の可能性にも言及した。
これに対しレビット報道官は、「それはわれわれが最終的に受け入れたと言ったものではない。合弁事業は大統領が提案したものだが、昨夜の声明で明確にした通り、海峡の即時かつ無制限の再開を求めており、それを実現させる」と述べ、この構想に慎重な姿勢を示した。
またトランプ氏は、イランで新たな指導部が発足した兆候がないにもかかわらず、「体制転換」が起きたとも発言した。さらに、7日にはイラン側の10項目の提案を基に協議を開始すると述べていたが、翌日には一転して、米国の15項目案を交渉の基礎とする考えを示した。それでも、制裁緩和についてイランと協議する用意があるとも述べた。
レビット氏は、従来のイランの10項目案は「根本的に真剣さを欠いたもので受け入れがたく、完全に破棄された」としつつ、イラン側が米国に対し「より合理的で全く異なる簡潔な案」を提示したと説明した。
国営メディアが伝えた最高安全保障委員会の声明によると、イランの要求にはホルムズ海峡の支配維持、核濃縮活動の容認、一次および二次制裁の全面解除、米戦闘部隊の地域からの撤退が含まれる。
停戦発表にもかかわらず、クウェートやバーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、イスラエルなどは8日にかけてミサイル攻撃があったとしており、合意の履行を巡る混乱が広がっている。事情に詳しい関係者によると、サウジアラビアの紅海向け石油パイプラインもドローン攻撃を受けた。
トランプ氏による停戦合意の発表は、イランが応じなければ「一つの文明全体が今夜滅ぶ」と警告していた7日の発言から大きく後退するものだった。発電所など民間インフラへの攻撃は、実行されていれば戦争犯罪と見なされた可能性がある。この約6週間の戦争では、これまでに5300人以上が死亡している。
SNSへの投稿でトランプ氏は、「ウラン濃縮は行われない」と述べ、米国とイスラエルが長年にわたって抑え込もうとしてきたイランの核開発に言及した。ネタニヤフ首相も8日、高濃縮ウランは何らかの形でイランから排除されると述べた。
さらにトランプ氏は、イランに武器を販売した国からの米国への輸入品に50%の関税を課す方針も表明した。ただし、米連邦最高裁が一部の関税を単独で課す大統領権限を制限しており、この措置をどのように実施するかは不透明だ。
原題:Vance to Lead Iran Talks as Tehran Says Ceasefire Violated (4)、Vance to Lead Iran Talks as Tehran Says Ceasefire Violated (2)(抜粋)
(トランプ氏のSNS投稿を7段落目に追加して更新します)
--取材協力:John Bowker、Devika Krishna Kumar、Courtney Subramanian.
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