マーケットコメント
4月3日金曜日の米国市場は、株式市場が休場で、債券市場は短縮取引だった(グッドフライデー)。
米国債市場では、雇用統計が強めの結果になったことで、金利が上昇した。長期金利は前日差+3.6bp、2年金利は同+4.3bpとなった。強い雇用統計によって利下げ観測が後退し、イールドカーブはベアフラット化した。
FF金利先物市場では、年内の利下げ観測がほぼなくなった。
もっとも、雇用統計は、3月分の非農業部門雇用者数変化が市場予想を上回ったものの、2月分の下方修正が大きく、その反動によって強めの結果になったと言える。総じて、米国の労働市場が停滞状態にあるという評価を変えるものではなかった。
今回の雇用統計がFRBの金融政策の方向性(時期は未定だが利下げ方向)を大きく変えることはないだろう。米経済は、FRBの利下げ判断を急がせるような状況にはない(=中東情勢の影響を見極める時間がある)一方で、利上げが必要なほど過熱していない。
利下げ時期の判断については、引き続き中東情勢の行方が重要である。トランプ大統領は5日、7日夜までにイランがホルムズ海峡の再開に同意しなければ発電所などへの大規模攻撃を始める考えを示した。トランプ大統領は交渉時期を示しながらけん制していることを考えると、何らかの合意を目指しているという方向性は変わっていないとみられるが、不透明な状況が続いている。
雇用統計は均してみれば状況は変わっておらず、FRBに時間的猶予
米国労働省が3日に発表した3月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月差+17.8万人だった。市場予想(Bloomberg調べ)の同+6.5万人を大きく上回った。失業率は4.3%と、前月の4.4%から小幅に改善した。総じて強めの雇用統計となった。
もっとも、2月分がまとまった幅で下方修正(▲4.1万人)されたことは割り引いてみるべきである。
トレンドを示す6ヵ月移動平均は+1.5万人と、小幅なプラスにとどまっている。この数字は25年10月以降、±2万人の狭いレンジの推移になっている。労働市場が安定していることは、FRBの利下げ判断に対して時間的猶予を与えることになる。
なお、筆者はこのような低迷状態が続くと予想している。コロナ後の人手不足状態で雇用者数が必要以上に増えてしまった可能性があり、経済が正常化する中で調整(雇用者の削減)が続くとみられる。
もっとも、これは景気循環とは関係のない話と言え、米経済がリセッションに向かっていくような労働市場の悪化とは言えないだろう。
他方、平均時給は前年同月比+3.5%と、前月から減速した。平均時給の伸び率は22年3月の同+5.9%から着実に鈍化している。FRBが賃金インフレを懸念することはないだろう。
人手不足状態の逆回転が生じているとすれば、賃金には上昇圧力がかかりにくくなっていることは自然なことである。
むろん、インフレについてはイラン情勢悪化以降の原油高の影響が重要だが、賃金インフレの鈍化が続いていることは、FRBにタカ派方向の時間的猶予を与えることになる。
以上を整理すると、FRBにはハト派方向にもタカ派方向にも時間的猶予があると言える。
トランプ大統領の動向が読みにくいことから、FRBがフォワード・ルッキングに行動する可能性も低いため、様子見の時間帯が続きそうである。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)