年明けからまだ3カ月しか経っていないが、2026年はすでに波乱の幕開けとなっている。1月には異例の寒波が全米の広い範囲で企業活動を停止させ、翌月には連邦最高裁判所が世界の貿易相手国・地域に対するトランプ大統領の大規模な関税措置を無効とした。3月に入ると、イラン戦争が世界貿易に新たな障壁とリスクをもたらした。

こうした中、ソニーグループは3月27日、世界経済の混乱を理由に、家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)」の最上位機種「PS5 Pro」の価格を1万8000円(15%)引き上げ、13万7980円にすると発表した。標準モデルのPS5も9万7980円に値上げした。発売から数年経ったゲーム機にこれだけの大幅値上げを行うのは異例だ。時間の経過とともに価格が下がるという従来の通例に逆行している。

企業は通常、発売から数年が経過した段階ではハードウエアの効率化や改良を進めると同時に価格を引き下げ、より多くのユーザーを取り込もうとする。こうした積極的な価格設定の狙いは明確で、マイクロソフトや任天堂といった競合に先を越されないよう、できるだけ多くのユーザーを新プラットフォームに呼び込むことにある。

しかし過去1年、人工知能(AI)向けデータセンターが先端半導体の供給をほぼ独り占めし、ソニーのような企業はそのあおりを大きく受けている。

TDカウエンのアナリスト、ダグ・クロイツ氏は「メモリー価格が大幅に上昇し、製造コストが最大で100ドル(約1万5900円)程度増加している可能性がある」と指摘。「その結果、メーカーは値上げに踏み切るか、現在以上に1台あたりの損失を拡大させるかのいずれかを選択せざるを得ない」と話す。マイクロソフトはすでに値上げを実施しており、任天堂も追随する公算が大きいという。

ソニーの新たな価格設定は前例のない水準であり、従来なら高性能なゲーミングPCの価格帯とされてきた領域に踏み込んでいる。あらゆる電子機器メーカーがコスト上昇分を価格に転嫁し始めており、こうした傾向はますます一般的になりつつある。PCゲーマーは、AI需要による価格上昇の影響を最初に受けたゲーム関連製品はエヌビディアのグラフィックスカードだったと指摘するだろう。

スマートフォン分野でも、低価格に強みを持つオッポ(Oppo)やビボ(Vivo)といった中国のメーカーがすでに値上げの方針を示している。調査会社IDCの分析によると、100ドル以下の端末では採算が合わない。アップルも目立たない形で値上げを行い、コスト増に対応している。最近では「MacBook Air」の新型モデルで最低メモリー容量を512GBに引き上げるなど、低スペックモデルを廃止している。

われわれは目下、未知の領域に入りつつあり、先行きには不透明感が漂う。前出のクロイツ氏は、ゲーム業界全体について「健全なペース」で成長すると予想しているが、足元では暗いニュースも目立つ。

エピックゲームズは1000人超の人員削減を実施したほか、ソニーは2月に傘下のゲーム開発会社ブルーポイント・ゲームズを閉鎖。仏ユービーアイソフト・エンターテインメントは1月に大規模な再編を発表し、株価は1日で40%急落した。言わずもがな、2026年の1-3月期(第1四半期)は波乱に満ちたものとなった。

ソニーのPS5値上げ発表後、サカーナのアナリスト、マット・ピスカテラ氏は半ばあきらめにも似たコメントをSNSブルースカイに投稿した。

「(ゲーム機が)1000ドルを超える日も来るのか。確実にあり得る。2027年かもしれないし、2028年かもしれない。それ以降の可能性もある。現状の市場環境では、ハードウエア市場について確実な見通しを持つことは難しい。状況が改善することを願うが、悪化する恐れもある。誰にも分からない」と同氏は書き込んだ。

原題:$900 Game Consoles Are a Fact of Life in 2026: Tech In Depth(抜粋)

--取材協力:Dana Wollman.

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