(ブルームバーグ):「非常に厳しい訪米」になると臨んだ日米首脳会談。高市早苗首相はイラン戦争で孤立するトランプ大統領に寄り添う姿勢を示し、協力関係を確認した。ホルムズ海峡への自衛隊派遣は確約せず、ひとまず難題をクリアした。
事前予想の通り、会談でトランプ氏はホルムズ海峡航行の安全に貢献するよう要請した。高市氏は「法律の範囲内でできることとできないこと」について説明し、自衛隊の派遣については確約しなかった。トランプ氏も報道陣の見守る冒頭場面で自衛隊派遣を迫ることはなかった。
高市氏は会談で、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルド(・トランプ氏)だけだ」と大統領を持ち上げた。「共に強く豊かになっていくための話し合いをしたい」、「世界のエネルギーマーケットを落ち着かせるための提案も持ってきた」と経済面での連携強化を進める考えを強調した。
トランプ氏はホルムズ海峡での船舶護衛を各国に呼び掛けたものの、多くの国は事実上拒否した。孤立するトランプ氏にとって高市氏の発言は助け船となった。報道陣から日本の対応に満足しているかと問われ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国とは違って、非常に強固な支援を得てきたと答えた。
キヤノングローバル戦略研究所で理事・特別顧問を務める宮家邦彦氏は、「NATOと差別化するようなアプローチをした日本の勝ちだ」と分析する。どの国もホルムズ海峡に護衛艦を派遣しないことは見えていた中で、可能な範囲で貢献する姿勢を見せたことがトランプ氏にとってありがたかったのではと述べた。
気配り徹底
トランプ氏による真珠湾攻撃への言及が数少ない緊張感高まる瞬間だった。高市氏は一時的に緊張した様子を見せたが、事態はすぐに収まった。外務省関係者によると、この話題は記者団が退出した後の非公開の会談では取り上げられなかった。
気配りも徹底した。高市氏は夕食会で、翌日に誕生日を迎えるトランプ氏の息子、バロン氏を「立派でイケメンに成長した」とほめ上げた。ホワイトハウス周辺では桜が満開の時期を迎える中、米国建国250周年を記念して桜の苗木250本を贈ると語った。
ブルームバーグ・エコノミクスのアダム・ファラー氏は、「高市氏は会談を比較的無難に乗り切り、安堵(あんど)しているだろう」と述べた。「いくつか気まずい発言はあったものの、大統領からは非常に好意的な反応を得ており、両者の個人的な関係の強さが改めて示された」と話した。

経済で貢献
具体的な経済面での貢献策も用意していた。高市氏はアラスカ州を含む米国産エネルギー生産拡大に向けた協力を約束。日本で米国から調達した原油を備蓄する共同事業も申し出た。トランプ氏の重視する米国のエネルギー産業復活と貿易赤字縮小にも合致する提案だった。
中国が供給量を握るため日米の弱みになっているレアアース(希土類)での協力も進展した。昨年合意した枠組みに基づく支援対象となり得る13のプロジェクトを選定。最低価格などの措置を通じた複数国間の取り組み発展に努めるなどとするアクションプランも公表した。南鳥島周辺海域の開発協力も進める。
昨年の合意に基づく対米投融資の「2号案件」として、総額730億ドル(約11兆5000億円)規模の三つのプロジェクトも発表した。
高市氏が防衛力の抜本的強化を掲げる中、ミサイル共同開発・生産でも一致した。米側の発表によると、日本は改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の生産を4倍に拡大するという。同ミサイルは中東での防衛のため需要が高まっている装備の一つだ。
バイデン前米政権で米国家安全保障会議(NSC)上級部長を務めたミラ・ラップフーパー氏は、高市政権下で進められている防衛装備品の輸出規制緩和や、防衛費の対国内総生産(GDP)比目標引き上げに向けた議論が、米国との強固な結びつきを支えていると見る。「日本はさらに中東で建設的な役割を担う意思も示している」と述べた。
中国
会談の前には、台湾有事をめぐる高市氏の国会答弁を巡り日米の解釈の違いが垣間見える場面もあった。米国家情報長官室は、答弁は日本の「重大な転換を示すものだ」とする分析を公表。一方で木原稔官房長官は政府の立場は一貫しており、「重大な方針転換との指摘は当たらない」と述べていた。
米側の発表によると両首脳は「台湾海峡の平和と安定にコミット」し、両岸問題の平和的解決を支持するとともに、武力や威圧を含むいかなる一方的な現状変更の試みにも反対するとした。
日本側の発表は台湾について言及しなかった。尾崎正直官房副長官は詳細は控えるとした上で、台湾や中国に関する諸課題についても議論を行い、今後も日米で緊密に連携することを確認したと述べた。
ユーラシア・グループのシニアアナリストで、米外交官として中国と日本に駐在した経験を持つジェレミー・チャン氏は「今回の訪問により、同盟関係は外見上一段と強固になった」と指摘。「高市氏にとって紛れもない勝利だ」と語った。

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