(ブルームバーグ):イラン戦争に伴う原油の供給停滞を背景に、市バスや都バスといった公共交通機関の運行に不透明感が生じている。各自治体が開く燃料の入札で不成立が相次いでいるためだ。ブルームバーグの調べでは、東京都や京都市、川崎市での入札で購入が見送られる事例が発生している。
公営バスでは、軽油などの燃料調達にあたり入札を実施している。京都市交通局では16日に市バスの運行に使う4ー5月分の軽油の調達で、入札での購入を見送った。担当者はイラン戦争が起きる前に設定した購入予定価格と現在の状況との乖離(かいり)が大きく、業者が難しいと判断したのではないかと説明。必要な燃料の確保に尽力するとした。近年こうした状況になることはあまりなかったという。
東京都交通局でも4-6月分の軽油の入札は不成立となり、川崎市交通局でも1回目の入札で購入を控え、30日に再入札を予定している。
イラン戦争で原油価格が高騰し、国内のレギュラーガソリン平均価格も今週、史上最高値を更新した。消費者に最も身近なガソリンの価格高騰が注目を集める一方、事態の長期化を見据え石油元売りが供給量を削減する動きが出ており、その影響が鮮明になりつつある。
金子恭之国土交通相は17日の閣議後記者会見で、トラック・バス関連の一部事業者から、石油販売会社が大口購入者向けの軽油販売の停止や数量制限を行っており、「従前どおりの軽油の調達が難しくなっていると聞いている」と言及。また、内航海運や旅客船でも重油などの供給に対して販売制限を行う動きがあると明らかにしていた。
秋田県大潟村で唯一のガソリンスタンドでも燃料が仕入れられない状態となっている。JA大潟村の給油所で所長を務める山王丸正人氏(52)は、全農など複数の仕入れ先を持っているが、全ての取引先から出せる在庫がないと言われたと明かす。今後繁忙期を迎える農業への影響を懸念しており、「トラクターとかの作業があり、その燃料となる軽油が出せないのが一番心配だ」と語った。
JA大潟村は16日からは組合員に配布した引換券を持つ人のみにガソリン販売を制限。19日以降は当面の間ガソリン供給が困難と発表している。軽油は16日から数量を制限している。
北海道札幌市内に3カ所のENEOSブランドのガソリンスタンドを持つ札幌河辺石油の河辺善一社長は、ENEOSからは購入量を「去年と同じくらいにしてくれと少し前から言ってきている」と話す。物価高などの影響による販売減少の傾向が続いており、現時点で支障は生じていない。ただ「来週もっと大きな絞りがくれば、足りないという問題が出てこないとは限らない」と心配する。
同じ道内では、「トランプにより入荷無し」と書いた立て札を置いた独立系のガソリンスタンドがX(旧ツイッター)で注目を集めた。同店の担当者はコメントを控えた。
札幌河辺石油の河辺社長は、一部のガソリンスタンドでは仕入れが困難になっていると認識していると話す。石油元売りとすれば自社ブランドマークを掲げる正規の店が優先で、「そうでないところは順番が後になるということだと思う」と述べた。
原油は精製するとガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油といった石油製品が同時に生産され、「連産品」と呼ばれる。製油所の設備構成や原油の種類によって生産される製品割合は一定の調整は可能なものの、特定の燃料油だけを大幅に増減させるのは難しい。
ただ政府は16日、石油の民間備蓄の放出を始めるなど対応をとっており、今後状況が好転する可能性もある。
対応策を検討する企業も現れている。静岡県最大手のクリーニング店「ピュアクリーニング」を展開するホワイトウィングスリテール(静岡市)ではボイラーの稼働に重油を使っている。松浦卓社長は、中長期的に燃料をガスに切り替えるなど、重油のみに依存する体制からの脱却を考えていると話し、8工場での切り替えを想定しているという。
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