高市早苗首相がトランプ米大統領と前回会談した際、トランプ氏は寛大な姿勢を見せていた。2025年10月の東京訪問時、トランプ氏は、疑問や不安、望みや支援があればいつでも応じ、日本を助けるために対応すると述べていた。

それからわずか4カ月後、焦点はトランプ氏が高市氏のために何ができるかではなく、高市氏が米国のために何ができるかに移っている。

首相として初めてワシントンを訪れる高市氏には、数週間前には想像もできなかった問いが重くのしかかる。ホルムズ海峡の航行再開に向けた取り組みに対し、日本がどこまで貢献を求められるのかという問題だ。

日本は米国の同盟国の中で中東産原油への依存度が最も高いが、イスラエルと米国によるイラン攻撃に先立って日本との事前協議は行われなかった。

また日本政府は、米同盟国の中でもイランと比較的良好な外交関係を維持している。さらに、この紛争は日本国内でほとんど支持されず、とりわけガソリン価格の急騰がその一因となっている。

今回の訪米は、トランプ氏特有の変心ぶりにも翻弄されている。当初は支援を求めていた同氏が、現在は支援は不要だと言い放っている。日本側は正式な参加要請は受けていないとしており、平和憲法の制約もあって、どのような形で法的に支援可能かについても結論を出していない。

とはいえ、他国の首脳がトランプ氏や戦争から距離を置く中でも、高市氏が不満を公にすることは考えにくい。ホワイトハウスでの衝突劇のような展開も起きそうにない。

幾つかの理由から、高市氏はトランプ氏に歩調を合わせ、米国側が成果として示せる何らかの譲歩を提示するのではとみられる。

第一に過去の事例がある。湾岸戦争時に日本の小切手外交に向けられた国際社会の批判は、今も霞が関に重い記憶として刻まれている。

日本はクウェートからイラクを排除するため約130億ドル(現在の為替レートで約2兆円)を拠出したが、米主導の多国籍軍に自衛隊を派遣しなかったことで、貢献がなかったと見なされ、クウェート政府が米紙に掲載した謝意広告から日本が外されたことは象徴的な出来事だった。

これを受け、日本は憲法を順守しつつ関与を示すため、後方支援の枠組みを整備してきた。兵たん支援や給油、情報収集、人道支援に至るまで、過去30年にわたり繰り返し活用されてきた手法がある。今回も同様の対応が可能だ。

国民の反発

第二に、元ホワイトハウス高官のマイケル・グリーン氏が今週指摘したように、高市氏の戦略は米国との「一層強固な安全保障関係」に基づいており、不安定な米政府であっても、中国という差し迫った脅威よりは望ましいとの認識がある。

そして何より重要なのは、国際舞台で受動的な傍観者ではなく、積極的な当事者として振る舞う姿勢を示すことだ。これはトランプ氏にとっても魅力的に映る。

日本が自国の安全保障を重視するようになった主因はトランプ氏ではないが、同氏が自身の功績としてアピールするのを妨げることもない。

中東への関与に対する日本国民の反発は強い。最近の世論調査では、米国とイスラエルの行動に82%が反対し、高市氏の曖昧な立場にも51%が否定的だった。それでも、自衛隊の何らかの派遣を検討する際の決定的な制約にはならない。

対米関係に関して世論は現実的で、多くが同盟国の要求に従わざるを得ない場面があると認識しているからだ。

重要なのは自衛隊員の安全確保だ。海外任務で戦闘に巻き込まれて亡くなった隊員はこれまで一人も出ておらず、中東派遣もその点に細心の配慮がなされてきた。

それでも湾岸情勢は、高市氏にとってタイミングが悪い。2月の総選挙圧勝を受けて政策実行への期待が高まる中、原油価格の上昇は大きな衝撃となり、企業を再びコスト削減へと向かわせかねない。

これは高市氏が転換を促そうとしている方向と逆だ。さらに円安とインフレの悪循環を一段と悪化させる恐れもある。

対中戦略

加えて、今回の訪米は本来、トランプ氏の中国訪問にできるだけ近い時期に直接会談し、米中間の二国間合意から日本が排除されないようにすることにあった。

しかしその訪中が延期され、状況は大きく変わった。高市氏は昨年11月の国会答弁で、台湾有事に日本が巻き込まれる可能性に言及。自身の発言を受けて強まった中国の経済的圧力に対抗するため、トランプ氏からより明確な支持を引き出す意向だったとみられる。

だが現在では、むしろ日本が遠く離れた地域の紛争に引き込まれる可能性が現実味を帯びており、なんとも皮肉が際立つ状況だ。

中東情勢を除いても、今回の訪米は日本がトランプ氏に何を提供できるかが焦点になると見込まれていた。

日本政府はこの点で戦略的に動いている。米連邦最高裁の判断によって「トランプ関税」の根拠が揺らいでいるにもかかわらず、5500億ドル規模の対米投資を着実に進めており、首相が日本の競争力強化を図る分野と一致する領域に重点を置いている。

報道によれば、トランプ氏が推進するミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」への参加や、米国産原油の購入拡大も提案する見通しだ。

トランプ氏の発言とは裏腹に、同氏の下でホワイトハウスがディール(取引)重視になっていることは周知の事実だ。高市氏の目標は、過大な負担を避けつつ、できる限り多くを引き出して帰国することにある。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Takaichi Will Walk a Diplomatic Tightrope in US: Gearoid Reidy(抜粋)

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