(ブルームバーグ):中東情勢の緊迫化や原油価格の高騰が日本株市場を揺さぶる中、日米首脳会談が19日に米ワシントンで行われる。投資家は経済協力や防衛などの議論の行方を注視している。
日米関税合意に基づく5500億ドル(約88兆円)の対米投資計画は、第1弾案件の発表が関連株を押し上げた経緯があり、第2弾の詳細に注目が集まる。トランプ大統領がホルムズ海峡での艦船防衛などイラン戦争への協力を各国に求めた中、日本の防衛負担や役割も焦点の一つとなる。
日本株にとって、首脳会談の結果は物色の手掛かりとなり得る。エネルギーを中東からの輸入に依存する日本の株式は、イラン情勢の悪化を受けて他のアジア市場とともに下落。東証株価指数(TOPIX)は2月末のイラン戦争開始以降に5.6%下落し、米S&P500種株価指数(3.7%安)をアンダーパフォームしている。
ホワイトハウスの公式日程によると、日米首脳会談は米東部時間19日午前11時15分(日本時間20日午前0時15分)から行われる。会談ではトランプ政権による対日関税や通貨政策、中国との関係なども市場を動かす話題となる。
エネルギー
対米投資で注目される分野の一つが原子力発電だ。NHKなどは、第2弾案件として次世代原子炉の建設が検討されていると報じた。中東情勢の悪化を受けて原油供給の混乱に懸念が強まる中、一部の投資家は原子力を含むエネルギーの安定確保に向けた取り組みが進むと期待している。
アバディーン・ジャパンの荒川久志取締役兼運用部長は、対米投資案件はエネルギー関連株のカタリストになる可能性が高いとみている。安全保障の観点から中国企業への依存を抑える必要がある中、日立製作所といった日本企業が次世代原子炉分野で期待されると話した。
昨年10月に公表された「日米間の投資に関する共同ファクトシート」によると、米原発大手ウェスチングハウスが主導する最大1000億ドル規模のプロジェクトに三菱重工業やIHIが関与を検討。また、日立GEベルノバニュークリアエナジーなどが小型モジュール炉(SMR)の建設に関心を示している。
そのほか、対米投資第2弾に含まれる可能性のある分野として、天然ガス発電施設や造船も注目される。
防衛
首脳会談で防衛費の増額や日米の軍事協力強化に関する議論が出た場合、需要拡大期待から防衛関連株の支援材料となり得る。読売新聞は13日、日本政府がトランプ政権が進める次世代型ミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」への参加を伝える方向で調整に入ったと報じた。
英ポーラー・キャピタルでジャパン・バリュー・ファンドを共同運用するクリス・スミス氏は「現在の外部環境を考えると、防衛に注目するのは理にかなっている」と指摘。「イラン情勢を受け、日本はアジアにおける米国の重要なパートナーとしての位置付けが一段と高まっている」と述べた。
防衛力強化を掲げる政府方針を背景に、日本の防衛関連株は「高市トレード」の代表的な恩恵銘柄となってきた。高市早苗首相が昨年10月に自民党総裁に選出されて以降、川崎重工業は84%上昇、IHIは55%上昇している。
アバディーンの荒川氏は、重工株はバリュエーションが高く、防衛費増額をすでに織り込んでいるとみる。一方で、日米首脳会談は割安な防衛関連銘柄にとって新たな材料になる可能性があるとし、爆薬などを製造するカーリット株を保有していると明かした。
防衛協力を巡る議論が首脳会談を複雑にするとの警戒もある。日本にとって、ホルムズ海峡を巡る米国との協調は法的制約などがあり容易ではない。小泉進次郎防衛相は17日、自衛隊の同地域への派遣について「具体的な要請があるわけではない」と述べた。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは「日本が米国の要求をのめない場合には、日米関係に隙間風を吹かせることになるリスクがある」と指摘。関係が悪化すれば追加関税などの可能性も意識され、株式市場には好ましくないとの見方を示した。
重要鉱物
昨年11月の台湾有事を巡る高市首相の国会答弁に反発し、中国が対日輸出規制を強化したことから、レアアース(希土類)など重要鉱物の供給網にも関心が集まる。
赤沢亮正経済産業相は重要鉱物の供給途絶に備え、日米で新たな協議グループを設置することで合意したと発表した。毎日新聞は、南鳥島沖のレアアースの共同開発を首脳会談で確認する見通しだと報道。日本経済新聞は、日米がレアアースや銅など重要鉱物の共同開発で合意し、三菱マテリアルや三井物産が参加するプロジェクトを推進すると報じた。
アストリス・アドバイザリー・ジャパンの投資戦略責任者、ニール・ニューマン氏は「レアアースの供給網と、それに対して米国がどのように支援できるかが主要な議題になる」とし、関連銘柄として双日や豊田通商などを推奨。「米国との協議は重要鉱物の代替供給網を構築する上で、同盟国との連携強化を示すものになるだろう」と語った。
(見出しを更新し、第4段落に首脳会談のスケジュールを追加します)
--取材協力:アリス・フレンチ.
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