高市早苗首相は18日から、就任後初めて米国を訪問する。首脳会談で経済安全保障などで連携強化を目指すが、ホルムズ海峡を巡る同盟国の対応に不満を示すトランプ大統領の出方は不透明で、首相は対応に苦慮しそうだ。

トランプ米大統領と高市早苗首相(昨年10月)

米国訪問は当初、予定されていたトランプ大統領の中国訪問を前に、同盟の強化を確認する場になるとみられていたが、米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、国際情勢は一変した。

トランプ氏が呼び掛けた同海峡での艦船防衛などイラン戦争への協力には多くの国が事実上拒否。トランプ氏は「われわれは誰の支援も必要としていない!」とSNSに投稿した。高市首相は19日、同盟国への不信感をあらわにしているトランプ氏と各国首脳に先駆けて直接向き合うことになる。

首相は今週の国会審議で、ホルムズ海峡への自衛隊派遣に関し、「法的に可能な範囲で何ができるかということを精力的に政府内で検討している」と発言していた。機雷除去、船舶防護、各国軍に対する協力、情報収集などのケースを含め、整理を行っているという。

キヤノングローバル戦略研究所で理事・特別顧問の宮家邦彦氏は、トランプ氏が突然呼び掛けたホルムズ海峡の安全航行確保に向けた米主導の有志連合に「どこがついてくるのか」と疑問を示した上で、実現するかも分からない段階で参加の是非表明は「まだ早い」と述べた。同盟国は情勢を見極める時間が必要だと述べた。

1991年の湾岸戦争ではイラクがペルシャ湾北部に敷設した機雷を除去するため、日本は終結後に海上自衛隊の掃海艇を派遣した。2001年には旧テロ対策特別措置法に基づき、米軍などによる対テロ作戦を後方支援するため、海上自衛隊がインド洋で給油活動などを行った。

20年以降は閣議決定に基づき、ホルムズ海峡やペルシャ湾を含まない3海域の公海で情報収集活動を行っている。

元自民党職員で政治評論家の田村重信氏は、トランプ氏に船舶護衛への参加を求められれば、「派遣するが、戦争が終結もしくは停戦しなければできないと明確に言えば良い」と話す。米が各国に護衛を求める理由は自国だけでは難しいためで、日本は協力の条件として事態の早期沈静化を迫ることができるとの見方を示した。

首脳会談では高市首相が意欲を示す南鳥島周辺海域のレアアース開発の協力など経済安全保障面での協力も議題になりそうだ。NHKは17日、日米両政府が首脳会談にあわせて重要鉱物のサプライチェーンの強じん化を図るための新たな行動計画を策定する方向で調整を進めていることが分かったと報じた。

中国

昨年11月の高市首相の台湾有事を巡る発言を受け、日中関係は冷え込んでいる。日本にとっては中長期的な対中戦略や東アジアの安全保障に関する議論も焦点だ。

米中が貿易合意の可能性を探る中、中国が「核心的利益の核心」と位置づける台湾との関係で、米国がどのような姿勢を見せるかが焦点となる。

米国での政府渉外などに携わってきた丸紅経済研究所の今村卓社長は、東アジア情勢について充実した議論ができるかどうかは「トランプ氏の頭の中をイランがどれだけ占めているかによる」と指摘。「そんなことよりもイランだとなる可能性もある」と述べた。

一方、米中会談に関するトランプ氏の発言も日々変化している。当初は31日から訪中し習近平国家主席との首脳会談を行う予定だったが、対イラン戦争への対応を理由に1カ月程度延期するよう要請したと16日、語った。17日には「会談を仕切り直す」と発言し、「およそ5-6週間」後に開催されるとの見通しを示した。

こうした中、元外交官の宮家氏は、米国にとって中国との関係や、最も経済成長が見込まれるインド太平洋地域の重要性は不変との見方を示す。「中長期的なアメリカの台湾に対する利益は変わらない」と述べ、今回の日米首脳会談では改めて日米安保体制と対中抑止の重要性を確認することになるとの見方を示した。

関税・対米投資

米国の関税措置と日本の対米投資も引き続き議題となる。米国は昨年、日本からの輸入品にかかる一律関税を15%とすることで合意したが、米連邦最高裁判所は国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を違法と判断した。

トランプ政権は代替措置に向けた調査を開始しており、日本側は昨年の合意よりも不利な条件にならないよう求めている。首脳会談に先立ち、赤沢亮正経済産業相は今月上旬に訪米し、ラトニック商務長官に日本側の考えを伝えた。

対米投資に関し、日米両政府は先月3つの「1号案件」を発表。2号案件の選定に向けても協議も進めている。昨年のトランプ大統領訪日の際に合意したレアアース供給確保に向けた協力の進展も期待される。

--取材協力:梅川崇.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.