(ブルームバーグ):トランプ米大統領が中国の習近平国家主席との首脳会談の延期を求めたことは、2大経済大国の関係に新たな不確実性をもたらす可能性がある一方で、中国にとっては歓迎すべき展開となる公算が大きい。
対イラン戦争が3週目に入る中、トランプ氏は16日、軍事作戦を監督するためワシントンにとどまる必要があるとし、3月末に予定されていた注目度の高い訪中を約1カ月延期する意向を示した。
これに先立ち同氏は、世界的な海上輸送の要衝ホルムズ海峡の航行確保に中国が協力する意思があるかどうかを、訪中延期の可能性と結び付けていた。同海峡はイランによって事実上封鎖されている。
この歴史的会談を前にした米国の準備が不十分だとみて不満を募らせていた中国指導部にとって、今回の決定は後退というより立て直しの機会となる。
他の主要20カ国・地域(G20)首脳の多くと対照的に、習氏はこれまで中国の重要な友好国を巻き込む紛争について沈黙を保っており、中国当局は戦争がもたらす経済的・外交的影響の全体像を見極めようとしている。
アジア・ソサエティー政策研究所シニアバイスプレジデントで、米通商代表部(USTR)次席代表代行を務めたウェンディ・カトラー氏は、「今年はトランプ氏と習氏の複数回の会談が見込まれており、今回の訪問の延期は大きな後退にはならない」との見方を示した。
カトラー氏は一方で、最近の動きについて「昨年10月にまとまった関税を巡る休戦状態を維持する上で、予期せぬ事態が深刻な課題を突き付け得ること、そして最近の二国間関係の安定化がいかに脆弱(ぜいじゃく)であるかを浮き彫りにしている」と指摘した。
トランプ、習両氏は今年4回の会談を行う見通しで、米中関係を揺るがしてきた大規模な貿易戦争の影響を抑える枠組みになるとされていた。
今回の訪中延期は、こうしたスピード感のある動きを鈍らせ、中東での戦争に米国が関与し続ける中で訪中が可能かどうかという疑問を投げかける。中国は中東に大きな経済的な利害関係を持つ。
中国外務省はトランプ氏の延期示唆についてのコメント要請に応じなかった。林剣報道官は16日の記者会見で、延期の可能性について問われ、両国は首脳会談を巡り意思疎通を行っており、首脳外交は代替できないと述べた。
中国側は安全保障上の理由から首脳の日程を直前に発表する慣例に従い、これまでトランプ氏訪中の日程を正式に確認していない。
貿易巡る休戦
中東全域に広がる紛争の封じ込めやエネルギー市場の混乱抑制に加え、習氏とトランプ氏にとっての焦点は、関税を巡る数カ月の対立の末に昨年10月に合意した1年間の貿易協定だ。
米シンクタンク、アジア・グループのパートナーでデジタル分野共同責任者のジョージ・チェン氏は、数週間から最大2カ月に及ぶ可能性のある延期は米中関係に大きな影響を与えないと分析している。ベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相とのパリでの協議が、経済面での米中関係の管理において一定の信頼と進展を示したとみている。
米国とイスラエルが2月28日にイランへの攻撃を開始した後も緊張が続き、習氏はこの問題に直接言及することを避け、外交当局に対応を委ねてきた。
イランが湾岸のアラブ諸国に攻撃を行うなど情勢が激化する中、中国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などとの広範な関係を踏まえ、これまで以上に慎重な対応を迫られている。
中国外務省は、米国とイスラエルによる攻撃で民間人に犠牲が出ていることや、イラン最高指導者ハメネイ師殺害を非難する一方、湾岸諸国の非軍事目標に対するイランの攻撃も批判した。
中国は特使を同地域に派遣するとともに、王毅外相がロシアなど約10カ国と接触し、和平に向けた外交努力を強化していると強調している。
上海にある復旦大学米国研究センターの責任者で、かつて中国外務省の顧問を務めた呉心伯氏は、米国との関係では安全保障や外交面でさらなる進展が必要だと指摘した。
同氏は、首脳会談の延期について、中国の観点からはトランプ氏がこの問題に再び注力できる状況を待ち、準備の時間を確保できるため悪い話ではないと述べた。米国側については湾岸情勢次第だとし、紛争の終結時期は見通せず、これが米国にとって最大の不確実性だと説明した。
原題:Trump’s Delay of Xi Summit Buys China Time to Game Out Iran War(抜粋)
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