今週に入り、パキスタンのタンカーがイラン沿岸を航行し、ホルムズ海峡を通過した。米国が同海峡を巡り主導権の確立を目指す中でも、イランの影響下で通航できるルートが確認された。

ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、パキスタン船籍のタンカー「カラチ」はホルムズ海峡の通過を公然と発信しながら、イランのララク島とゲシュム島の間にある狭い水路を15日に航行。その後、イラン沿岸に沿ってオマーン湾へ抜けた。

イランに寄港していたばら積み船2隻も16日午前に同じルートを航行し、位置情報を発信した。安全上の理由からトランスポンダーを停止する船も多い中での行動だった。

14日午前にはインド船籍の液化石油ガス(LPG)タンカー2隻もホルムズ海峡を通過。ガンビア籍の一般貨物船も17日に同海峡を出たばかりだ。ララク島付近で3隻の信号が断続的に確認されたが、この海域では電子妨害により船舶からの情報が妨げられるため、航路全体は特定できなかった。

友好国向け航路

このルートの利用が続いた場合、イランが通航管理の仕組みを導入している可能性があると、戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア海洋透明性イニシアチブで、副ディレクター兼フェローを務めるハリソン・プレタ氏が指摘する。イランは従来ルートで船舶を攻撃したり、機雷を使用したりする一方、友好国のタンカー向けには航路を維持しているかもしれない。

プレタ氏は「これまでのところ、このルートを利用しているのは、イランが海峡通過を事実上認めた船舶に限られているようだ。イラン当局にとって、この海域の方が管理しやすいという点で合理的だ」と話す。

米国とイスラエルによる攻撃が始まってから2週間余りで、イランはホルムズ海峡周辺で複数の船舶を攻撃。同海峡は事実上封鎖された。このため、ペルシャ湾内にとどまる船舶や入域できない船が出ており、エネルギー取引に前例のない混乱をもたらしている。アジアを中心に供給不足や価格高騰が広がった。

混乱の長期化を受け、一部の国は貨物の最低限の流れを確保するため、イランに安全通航を要請している。インドやトルコの当局者は、船舶に対する通過許可を得たと報告している。パキスタンは自国船の航行状況についてコメントしていない。

イランに近接するルート

JPモルガン・チェースのアナリスト、ナターシャ・カネバ氏らはリポートで、「ホルムズ海峡が正式に封鎖されていない一方で、通航がイランとの政治的了解にますます依存するシステムが生まれている」と分析する。

通常であれば、安全保障上のリスクから船舶がイランにこれほど接近して航行することはまずない。ホルムズ海峡を出る船はイラン側ではなく反対側の航路を通るのが一般的だ。

インドは現在、ペルシャ湾内にある別のタンカー6隻の安全通航確保を進めているが、どのルートを通るかは不明だ。

EOSリスク・グループのアドバイザリー部門責任者マーティン・ケリー氏は、「ララク島とゲシュム島の間を通ることが、ホルムズ海峡通航の承認条件になっている可能性もある」と語る。

こうした通航は石油トレーダーに一定の安心感を与えているものの、イランに近接するルートであることは保険会社や商品取引に融資する銀行にとって問題となる。保険契約には高リスク地域を明示する条項が設けられている場合が多く、銀行も資金を提供した船舶がイラン近海を航行していると判断した場合、コンプライアンス部門にリスク警報を出すことがある。

さらに重要なのは、航行している船舶が通常のフローに比べごく一部にとどまっている点だ。

CSISのプレタ氏は「承認された少数の通航だけでは、通常の船舶の往来やエネルギー供給の回復には到底及ばない」と述べた。

原題:Escape Route Through Strait of Hormuz Now Involves Iran Detour(抜粋)

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