原油価格の高騰に株式市場の注目が集まる一方、あまり知られていない石油派生製品の供給不足が日本のサプライチェーン(供給網)により差し迫った混乱をもたらす可能性がある。

出光興産や三井化学など複数の石油化学メーカーは、中東情勢の緊迫化を背景としたプラスチック製造に不可欠な原料であるナフサの供給不安を理由に、生産削減を相次いで発表した。イランでの戦争が始まってから2週間余りで日本国内にある約12カ所のエチレン生産拠点のうち、半数が減産している。エチレンはナフサを原料に製造される基礎化学品だ。

こうした動きは、食品からテクノロジーまで幅広い業種での生産を抑制し、企業業績を押し下げかねない。ナフサは原油を精製して作られる石油製品で、ペットボトルや建材、家電製品などの原料として使われるほか、ガソリンの製造にも利用される。

企業アドバイザリー会社のBCMGの創業者兼マネジングディレクターを務めるマティーン・チャウドリー氏は、市場は「ナフサの供給が途絶えた場合の連鎖的な影響を十分に織り込んでいない」と指摘。日本は「炭鉱のカナリア」になり得る問題に大きくさらされていると述べた。

石油化学工業協会のウエブサイトによれば、日本はナフサの約6割を輸入しており、その約7割を中東が占める。サプライチェーンにとって重要な資源であるにもかかわらず、ナフサ不足への備えが十分ではなく、ホルムズ海峡での海上輸送の混乱に対して極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。

イランでの戦争開始以降、日本のナフサ価格は約66%上昇した。信越化学工業は16日、エチレンの供給制約を理由に塩化ビニール樹脂の国内向け販売価格を引き上げると発表した。

シティグループ証券の西山祐太アナリストによると、日本の原油備蓄は約250日分ある一方、ナフサの備蓄は約20日分にとどまっている。西山氏はリポートで、放出されたナフサの多くはガソリン向けに優先的に回される可能性が高く、仮に備蓄が放出されたとしても石油化学業界にとって「即座の楽観材料にはならない」とみる。

韓国など他のアジア諸国もナフサの中東への依存度が高い。一方、米国は石油化学産業の多くが代替原料としてエタンを使用しているため、影響は比較的小さい。

株式市場ではナフサ不足の影響が下流分野にも出始めている。食品容器メーカーのエフピコの株価は、イランでの戦争勃発以降で約15%下落した。同期間の東証株価指数(TOPIX)の下げは約7%にとどまっている。

BCMGのチャウドリー氏は、多くの投資家がナフサ不足の広範なリスクに気付いていないことを懸念する。「供給網の状況が新型コロナウイルス禍のようになってもおかしくない」と語り、「市場の油断が今の最大の問題だ」と警鐘を鳴らす。

--取材協力:稲島剛史.

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