米首都ワシントンの連邦準備制度理事会(FRB)本部改修工事を巡り、連邦地検のピロ検事正が進めているパウエルFRB議長の刑事捜査に関する裁判資料が13日、公表された。

それによれば、パウエル氏は5月15日の議長任期満了後も、少なくとも法的プロセスが完了するまでは、理事としてFRBにとどまる必要性を感じていることが示された。同氏は議長退任後も2028年1月末まで理事として留任することができる。

パウエルFRB議長

裁判資料で明らかとなった地検とFRBの双方のやり取りは、パウエル氏が議長退任後も理事として留任できる選択肢を活用する可能性を初めて公に示唆する形となる。

FRBの弁護士は提出書類で、「連邦準備制度の独立性を守るため、刑事捜査が行われている間は、パウエル議長は辞任できない」ことをパウエル氏自身の弁護士が明確にしたと説明した。

退任する議長は通常、任期満了とともにFRBを離任する。しかしパウエル氏が理事任期を残して辞任した場合、FRBの構成を政権寄りの理事で固めたいトランプ大統領に、新たな人事の機会を与えることになる。

連邦準備制度と議会の関係に関する著書を共同執筆したマーク・スピンデル氏は、「これは皆が考えてきたことだ。パウエル氏は5月半ばに議長任期が切れた後も留任の可能性がある。あと数年の任期が残っており、理事会や連邦準備制度を支配したいという大統領の思惑をくじくことになる。非常に価値の高い切り札だ」と指摘した。

トランプ氏は連邦準備制度に対する大幅な利下げ注文を繰り返しており、パウエル氏は刑事捜査について、中央銀行としての独立性に対する政治的な攻撃だと指摘。一方で議長は自身の去就に関してこれまで公にコメントしていない。

主張の相違

改修工事やパウエル議長が昨年6月に行った議会証言に関連し、司法省は1月にFRBに大陪審への召喚状を送付。しかし、ワシントンの連邦地裁判事は不適切だとしてこれを退けた。この判断を受けてピロ氏は13日、控訴する方針を表明している。

13日公表の裁判資料によれば、司法省側は1月29日の会合で、議長としての任期が満了した時点でも捜査が続いていれば、パウエル氏は理事会を離れないと感じていると、議長の個人弁護士が伝えたと主張。ただ、捜査が終了すれば状況は異なる可能性があるという。

これに対しFRBの弁護士は、この会合の解釈に反論。やり取りは本来機密扱いとされるべきだとした上で、パウエル氏が捜査打ち切りと引き換えに辞任をオファーしたかのようような指摘は誤りだと論じた。

それでもFRB側は、連邦準備制度の独立性を守るため、刑事捜査が続いている限りパウエル氏は職にとどまらざるを得ないと感じていることは認めた。FRBはコメントを控えている。

捜査が長期化した場合、トランプ氏が次期FRB議長に指名したケビン・ウォーシュ元FRB理事の上院での承認手続きが大きく遅れる可能性がある。上院銀行委員会メンバーのティリス議員(共和)は、捜査が続く限りFRB人事の承認を阻止すると表明している。

連邦準備制度を研究するコロンビア大学のキャサリン・ジャッジ法学教授は、捜査が長引くほど、金融政策に影響力を及ぼそうとするトランプ氏にとって障害が大きくなると指摘する。

「現時点では、控訴を試みることは政権の利益に反する可能性が高いと考えられる。ウォーシュ氏の承認を遅らせ、根拠に乏しいと見受けられる捜査を長引かせることになる。ピロ氏は最後まで進めたいと考えているかもしれないが、それが政権にとって最善とは限らない」と解説した。

原題:Court Papers Show Powell to Stay at Fed If Probe Continues(抜粋)

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