ある国を爆撃し、その指導者を排除するのは戦争行為だ。米国の憲法の下では、大統領がそうした行動を取る前に、議会が宣戦布告を行うか、武力行使を承認しなければならない。

米国とイスラエルの攻撃により、イランの最高指導者ハメネイ師は殺害された。トランプ政権は1月にはベネズエラで軍事作戦を展開し、マドゥロ大統領を拘束した。2011年にはオバマ政権(当時)がリビア空爆に参加し、これがカダフィ大佐の排除につながった。相手国がどこであれ、原則は同じだ。

他国を統治している人物が道義的に忌まわしい存在であろうと、米国にとって永遠の敵であることが確認されていようと関係ない。合衆国憲法上、外国の指導者を排除する行為は戦争であり、国際法上もそうであるのは言うまでもない。

米憲法の制定時、議会には大統領が承認なしに戦争を始めないようにする法的権限のみならず、実際に止める力もあった。

常備軍は存在せず、議会が軍を編成し資金を拠出する必要があったためだ。財政支出の権限も議会が握っており、特定の歳出承認なしに戦闘を長期にわたり続けることはできなかった。

第2次世界大戦後の世界では、米大統領は世界で最も破壊力の高い兵器と相当規模の軍事力にアクセスできる。連邦議会の承認を得ずに戦争を開始した大統領でも、しばしばそれをやり通せてしまう。

米議会が大統領の戦争遂行権限を抑えるために設けた手段が、1973年の戦争権限決議だ。当時のニクソン大統領が議会の承認なしにカンボジアとラオスを違法に爆撃し、ベトナム戦争の戦火を大きく広げたことを踏まえ、この決議が成立した。

戦争権限決議は、大統領に対し敵対行為に従事してから48時間以内に議会へ通知することを義務付ける一方、その後60日間は軍事作戦の継続を認める。その期間内に議会が武力行使を承認しない場合、あるいはその間に議会が行動を阻止する決議案を可決した場合、敵対行為は正式に違法となる。

下院民主党は現在、イランで新たに始まった戦争を巡り、まさにそのような決議案の可決を試みることを検討している。仮に可決されても、トランプ大統領が署名することはないだろう。議会がニクソン氏の拒否権を覆して戦争権限決議を成立させた時代は、はるか昔のように思える。実際、その通りだ。

大統領は戦争権限決議を全面的に無視しても、やり過ごせる場合がある。99年には当時のクリントン大統領が、議会の承認を得ないまま60日間の期限が切れた後も2週間にわたりコソボ爆撃を継続した。

事実上合法

さらに重大だったのは、オバマ大統領がリビア爆撃は戦争権限決議上の敵対行為には当たらないとの法的立場を取ったことだ。任務は「限定的」で、攻撃は空から行われ、「米軍部隊の展開は限定的」であるとした。

そのため「エスカレーションのリスク」も限定的だと主張。これはヒラリー・クリントン国務長官の下での国務省の見解だった。しかし、これは司法省法律顧問局および国防総省の認識と矛盾していた。

オバマ氏がこうした法理を採用したことで、空から実施される戦争行為については戦争権限決議が適用されないと主張する道が大統領に開かれた。言い換えれば、オバマ政権下で大統領による一方的な戦争遂行が事実上合法となった。

これが歴史的な誤りだった理由を如実に示しているのが、トランプ氏によるイラン攻撃だ。イランとの戦いが60日を超えて続くかどうかにかかわらず、これは明らかに戦争だ。対イラン攻撃が良い判断だったかどうかにかかわらず、憲法は議会の関与を求めている。

歴代大統領の中でも、トランプ氏は議会を無意味な存在にし、法律を顧みずに統治することに最も踏み込んだ人物だ。そのため、少なくとも民主党には、問題がより鮮明に映っているのかもしれない。

しかし問題は、トランプ氏以前から存在していた。大統領命令による攻撃の合法性は、カダフィ政権のようにイランの体制が崩壊するかどうか、あるいはイランが米国に対し長期戦を戦い抜くかどうかに左右されるべきではない。

また、今まさに危険にさらされている米軍の無傷性といった想定に依拠すべきでもない。戦争は戦争として理解されなければならず、敵対行為は敵対行為として理解されなければならない。

明確にしておきたいのは、戦争権限決議案の可決を議会は試みるべきだということだ。その大半が象徴的な取り組みに終わるとしても、議会に残された宣戦権限の最後のよりどころとなるからだ。

この権限は、憲法起草者が構想した立憲共和政の根幹だった。その喪失は、憲法秩序における権力の均衡を変えてしまう。そして、それは決して望ましい方向ではない。

(ノア・フェルドマン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、米ハーバード大学の法学教授です。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Presidents Keep Ignoring the War Powers Act: Noah Feldman(抜粋)

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