(ブルームバーグ):米国とイスラエルのイラン攻撃にロシアは動揺しているものの、イランを支援する力はほとんどない。だが、ウクライナでの戦争には有利に働く可能性があるとロシアは考えている。事情に詳しい5人の関係者が明らかにした。
イランの攻撃に直面したペルシャ湾岸諸国から防空ミサイルの需要が高まり、ウクライナに回る分が少なくなるかもしれないと、関係者の2人は指摘。中東での戦争が長期化すれば、ウクライナに対する米国の兵器販売も減速する可能性があるとの見方も示した。
微妙な問題を話しているとして、関係者は全て匿名を要請した。
ロシアのプーチン大統領は1日の声明で、イランの最高指導者ハメネイ師の殺害を「人類の道徳と国際法のあらゆる規範をあざけるような違反」と非難しつつ、イスラエルやトランプ米大統領を直接名指しはしなかった。2日にはサウジアラビアやカタール、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)などペルシャ湾岸諸国の指導者と電話会談し、即時停戦を呼び掛けた。
プーチン氏はウクライナ侵攻に関連した戦争犯罪の疑いで、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されている。
ウクライナで続く戦争は、同国東部と南部の戦線がほぼこう着状態に陥っている。ロシアは近年で最も厳しい冬の間、ミサイルおよび無人機(ドローン)でエネルギーインフラを狙った激しい攻撃を展開し、ウクライナの人々を屈服させようとしてきた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、こうした攻撃から国民を守るため、より多くの防空ミサイル提供を支援国に繰り返し訴えてきた。同氏は1日、中東での戦争長期化は「間違いなく」自国への兵器供給に影響を及ぼすと警告。2日にはムハンマドUAE大統領とイランの無人機攻撃について電話で協議し、防空強化への支援を申し出たと明らかにした。
ロシアにとってハメネイ師の死は、追放されたシリアのアサド前大統領、米軍に拘束されたベネズエラのマドゥロ大統領に続き、1年半足らずの間に経験した3回目の戦略上の敗北だ。ロシアの支援がほとんど得られていないキューバの共産党政権も、米国の経済的な圧力にあらがうことが難しくなっている。
こうした逆風は、ウクライナ侵攻開始以来強まる周辺地域へのロシアの影響力低下に、拍車をかけている。ロシアに警戒感を強めるコーカサスや中央アジアの旧ソ連諸国は、米国や中国、欧州連合(EU)、トルコといった他の強国との関係強化に動いている。
ロシアと歩調を合わせる国がまた一つ弱体化することは、プーチン氏への打撃に違いない。だが、エネルギー価格の高騰はロシアの財政的苦境を緩和し、ウクライナでの戦争継続に必要な資金の調達を押し上げる可能性がある。
ほんの1週間前まで、ロシア産原油の価格がほぼ3年ぶりの大幅なディスカウントで推移していることに鑑み、これによる歳入減に対応して今年の成長予測を大幅に下方修正することを同国政府は検討していた。西側の制裁でロシアの貿易は下火となり、政策当局者は1バレル=40ドルの原油価格が長期化する事態に備えていた。
だが、3日には国際指標の一つであるブレント原油が2024年7月以来初めて85ドルを超えた。インドや中国といった主要市場への輸送でホルムズ海峡を通過する必要のないロシア産原油のディスカウントは縮小し、ロシアの歳入を押し上げる可能性がある。
一方、モスクワを拠点とする投資銀行家で自身の助言会社を運営するエフゲニー・コガン氏は「石油価格の急上昇は短期的なものかもしれない」との認識を示した。「ロシア石油各社のファンダメンタルズは、依然としてあまり魅力的ではない」とも述べた。
プーチン氏がトランプ氏の計画の全容を把握していたわけではないにしても、軍事作戦が開始される数週間前、イランについてトランプ氏は深刻な意向だとイスラエル側からロシアは強い示唆を受けていたと、事情に詳しい別の関係者は述べた。
プーチン氏が作戦を批判する以外、イランをほとんど支援していないのはそれが理由かもしれないと、関係者は語った。関係者は微妙な問題を話しているとして匿名を要請した。
実際のところ、ロシアに行使できるような影響力はほとんどない。プーチン氏はイランのペゼシュキアン大統領と昨年1月にモスクワで新たな戦略的協力協定に署名したが、その7カ月前に北朝鮮と締結したような相互防衛条項は盛り込まれていなかった。
昨年6月にイスラエルがイランの核施設を攻撃した際にプーチン氏は、イランはロシアに対して防衛支援を求めてこなかったと説明していた。
原題:Russia Sees War in Iran Squeezing Vital Air Defenses for Ukraine(抜粋)
--取材協力:Gina Turner.
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