(ブルームバーグ):トランプ米大統領は1年足らず前に中東で演説し、同地域で「終わりなき戦争」を繰り返してきた歴代米大統領を痛烈に批判した。特に2003年のイラク戦争に言及し、歴代政権が「自分たちですら理解していない複雑な社会に介入した」とし、その結果「築いたより破壊した国の方がはるかに多い」と非難した。
そのトランプ氏が今、自らが理解していない複雑な社会に介入している。「あなたたちの自由の時は目前にある」と、米国とイスラエルによるイランへの大規模かつ全面的な軍事作戦の開始を発表する際、イラン国民にそう呼びかけた。イラン側は反撃しており、ペルシャ湾岸地域の米国関連施設を標的にしている。
これは昨年6月に米軍がイランに対して実施した「ミッドナイト・ハンマー作戦」のような精密かつ限定的な攻撃ではない。今回は全面戦争であり、予測不能で制御不能に陥る恐れがある。「勇敢な米国の英雄たちの命が失われ、犠牲者が出るかもしれない。戦争ではそういうことが起きる」と、トランプ氏は攻撃発表の際に認めた。
大統領は、「米国を再び偉大に(MAGA)」のスローガンに賛同する自らの支持基盤に対し、「終わりなき戦争」の終結と回避を約束したが、今まさにその最新版を始めてしまったのだろうか。
2026年と03年の相違点と類似点は不気味なほどだ。当時も今も、米国の軍事介入の理由は表向きには大量破壊兵器を巡るものだったが、実際にはそうではなかった。イラクには結局、大量破壊兵器は存在せず、イランも現時点では保有していない(米国はイランの核施設を「壊滅させた」としているが、イラン政権が秘密裏に核開発計画を再建できるかどうかは不透明だ)。
当時も今も、真の戦争目的は不明確であり、変転し続けている。米国の保守派ですら「核兵器が問題だったわけでもなければ、イラン国民を助けるためでもなく、イランは外交的解決に向けて真剣に交渉していた」と指摘しているほどだ。
相違点の中には、今回の攻撃をより悪質に見せるものもあると、米国の駐ロシア大使などを務め、現在はスタンフォード大学フーバー研究所教授のマイケル・マクフォール氏は投稿で指摘した。
ブッシュ大統領(子)は03年のイラク戦争に際し、国連安全保障理事会の承認を得られなかったが、少なくとも取得を試みた。トランプ氏はそれすらしていない。
さらに当時のブッシュ氏は議会承認を得たが、トランプ氏はそれを得ていない(トランプ氏は国家安全保障担当大統領補佐官を兼任するルビオ国務長官を派遣し、議会指導者8人に大規模な作戦が迫っていると通知しただけだった)。ブッシュ氏は03年、40カ国余りが参加する「有志連合」を率いて開戦したが、トランプ氏の今回の攻撃を支持する同盟国はイスラエルだけだ。
今後の展開は不透明だ。イラン政権は体制存亡の危機であることを理解しており、あらゆる手段を尽くして戦うだろう。さらに、米国の航空戦力がいかに圧倒的であろうとも、歴史が示すように、地上部隊の投入なしでの体制転換の実現、ましてや国家建設は困難であり、ほぼ不可能に近い。そしてトランプ氏は地上部隊投入を避けたいと考えている。MAGA支持基盤がそれを容認しないことを知っているからだ。
米議会が宣戦布告に関する憲法上の独占的権限を取り戻すべき時があるとすれば、まさに今がその時だ。民主党と、残念ながらごく少数である共和党議員(ランド・ポール上院議員の名は特筆に値する)は、1月のトランプ氏によるベネズエラ大統領排除に先立ち、戦争に関する大統領権限に制約を設けたニクソン政権時代の戦争権限法の復活を試みたが失敗した。議員らは来週、再び試みる予定だ。
米国の建国の父たちのため、また、米国の共和制、中東と世界のためにも、米議員らは大統領が議会を再び追認機関におとしめることを許してはならない。トランプ氏は国民に対し開戦の大義を説明していない。
03年にイラク指導者のサダム・フセイン氏は悪だと主張するだけでは不十分だったように、イラン政権が「邪悪」だと世界に訴えるだけでは今も不十分だ。終わりなき戦いになりかねない戦争を始める権限はトランプ氏にはない。その権限は議会にある。
(アンドレアス・クルス氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、米国の外交と安全保障、地政学を担当しています。以前はハンデルスブラット・グローバルの編集長を務め、エコノミスト誌に執筆していた経歴もあります。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Iran Strikes Feel Like 2003 All Over Again: Andreas Kluth(抜粋)
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