(ブルームバーグ):がんは職場の問題であり、企業規模を問わず実効性のある対応が可能な課題だ。
仏広告大手ピュブリシス・グループの最高経営責任者(CEO)、アーサー・サドゥン氏はこの3年間、がん患者の就労支援に向けた世界的なキャンペーンを展開する中で、他の経営者に対し企業の役割を説いてきた。
足元では同氏の主張を裏付ける統計も増えている。
生涯でがんに罹患(りかん)する人は最大で2人に1人に上るとされ、働き盛り世代の診断件数も急増している。ある推計によれば、50歳未満の若年発症は1990年から2019年にかけて79%増加。30年までに世界でさらに30%増える見通しという。
一方で、企業の支援が有効であることも科学的に証明されつつある。
米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターなどの分析によると、就労継続や復職はそれが可能な患者にとって多くの利点があることが過去25年間の研究で示された。19カ国の研究を精査した結果、就労中の患者は生活の質(QOL)が高く、身体機能も良好な傾向がみられた。その背景には経済的、心理的、社会的要因が複合的に関係しているとされる。
同センターのがん専門医、ビクトリア・ブラインダー氏は「就労継続はアイデンティティーや安定、幸福感の重要な源になり得る。身体面でも感情面でもポジティブな影響を与える可能性がある」と述べる。
サドゥン氏が強調するのも、まさにこの点だ。同氏が主導する「Working With Cancer(がんと共に働く)」キャンペーンは3年目に入り、これまでに小規模事業者から大企業まで5000社超が参加。従業員総数は4000万人規模に上る。各社は治療中、あるいはがん患者の介護に携わる従業員の支援を約束している。
サドゥン氏は、罹患中の就労は個人の選択であり、一律に求めるべきではないと認める一方、企業側の対応が「人々の健康や回復に実質的な影響」を与えることができるとして、経営陣への働きかけを強めている。
同キャンペーンは最近、参加企業向けにカスタマイズ可能な対話アプリも公開した。各企業が医療給付や休暇制度などがん診断を受けた従業員に関連する勤務上の配慮事項に関する情報を安全にアップロードできる仕組みで、従業員は匿名かつ非公開でアクセスし、個別の助言を受けられる。
サドゥン氏(54)は22年に自身ががん治療を受けた経験が、ピュブリシスの社内制度を見直すきっかけとなり、支援が必要な瞬間に従業員が余計なストレスを感じたり、混乱したりしなくて済むよう、情報共有の在り方を改善する動機になったと語った。
「あなたが企業を経営していて、人口の50%が生涯でがんと診断されること、その多くが就労期間中に起きること、さらに患者の半数が恐怖心から病気であることを開示しないことが分かっているのであれば、行動を起こすことが重要だ」と同氏は述べた。
原題:Why Cancer Is Becoming a Workplace Matter: Management & Work(抜粋)
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