(ブルームバーグ):クスリのアオキホールディングスは、17日開催の臨時株主総会で買収防衛策の導入を問う。創業家が経営権を守るのか、大株主が影響力を強めるのか。経営陣の保身につながりやすいとして批判の根強い防衛策に対する株主判断は、創業家支配と少数株主の力関係を改めて浮き彫りにする。
石川県を地盤に北陸や北関東などに展開する同社は、創業家出身の2人の兄弟が経営する。青木宏憲社長と弟の孝憲副社長だ。現在、支配権を巡って筆頭株主のイオンや香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントとの緊張が高まっている。
総会の議案は、議決権ベースで20%以上となる株の買い付けに事前報告を求め、従わない場合には新株予約権を発行する内容だ。「ポイズンピル」と呼ばれる策で、主要株主の一部は少数株主の権利を損なうとして反対を呼びかけている。
仮にポイズンピルが承認されれば、イオンやオアシスを含む既存株主の持ち分は希薄化される可能性がある。クスリのアオキHDは開示資料で、企業価値と株主共同の利益を高めるものだと説明している。青木兄弟は、ブルームバーグの取材に応じなかった。
企業統制の潮流に逆行
青木兄弟の動きは、2008年をピークに減少傾向にある買収防衛策の潮流に逆行する。上場企業の約半数は創業家と何らかの関係を保つとされるが、創業家が支配権を握る水準まで保有する例は多くない。
近年、東京証券取引所や政府はコーポレートガバナンスの強化と、海外投資家にとって魅力的な市場づくりを進めてきた。買収防衛策が経営陣の保身になってはならないとし、適切な運用を促している。
創業家支配に対する懸念の声は散見される。米ヘッジファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントが異議を示している豊田自動織機への株式公開買い付け(TOB)を巡っては、トヨタ創業家が同社グループへの支配力を高める恐れがあるとの指摘もある。
UBS証券の風早隆弘シニアアナリストは、クスリのアオキHDを巡る問題は単なる地方企業の話ではないと述べた。各創業家が目指す会社へのコミットメントを実現するための資本構成を真剣に検討することはどの企業にとっても重要だと指摘する。
仮に青木家が敗れるようなことになれば、アクティビストが他の創業家企業にも攻勢を強める契機となりかねない。逆に防衛策が承認されれば、創業家排除に慎重な少数株主の存在が明確になり、先例になる可能性もある。
イオンへの売却を警戒
クスリのアオキHDが買収防衛策を導入する背景には、オアシスの保有株がイオンに売却される可能性への警戒感がある。過去に同様の例があるからだ。オアシスはかつて、ツルハホールディングス株(約13.6%)をイオンに売却し、ツルハHDはイオンの連結子会社となった。
またツルハHDがクスリのアオキHD株の約5%を保有していたことから、間接的にクスリのアオキHDへの影響力も高まった。また、昨年11月には予告なくクスリのアオキHD株を買い増している。イオンはアオキの創業家が24年にストックオプションを大量行使して持ち分が希薄化したためだと説明したが、関係悪化は決定的となった。
イオンの岡田元也会長はクスリのアオキHDの社外取締役を退任し、両社は20年以上続いた提携関係を解消した。
訴訟
オアシスの創業者セス・フィッシャー氏は、経営からの青木兄弟排除を試みてきた。ストックオプションの行使による新株発行は、他の株主の持ち分を希薄化させると主張し、同社に与えた損害約72億円の賠償を求めて提訴した。
フィッシャー氏は「これは日本で見てきた中でも最悪のガバナンス事例の一つだ。公正な価値の99%割引したストックオプションを発行し、兄弟が信じられないほど安い価格で株式を取得できるようにしている」と述べた。
一方、岡三証券の内山大輔シニアストラテジストはアクティビスト側の事情も指摘する。アセットオーナーから高いリターンを求められる一方、大きなファンドは小規模の企業をターゲットにしづらい。一定規模の企業に強めの要求を出し、経営を揺さぶらざるを得なくなっており、「アクティビズムの難易度は高まっている」という。
議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラス・ルイスはいずれも防衛策に反対票を投じるよう推奨する。ISSは独立社外取締役の数が不足している点を懸念し、グラス・ルイスは株主を保護のための策が不十分と指摘した。
勝敗は、どちらがより多くの少数株主を説得できるかで決まる。ブルームバーグの試算によると、創業家は約36%、イオンとオアシスは合わせて約26%を保有している。イオンは臨時株主総会への態度を表明しておらず、「株主として、アオキの企業価値向上ひいては株主共同の利益に資するかどうかという観点を重視していく」とコメントした。
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