国内で営業する生命保険業界で不祥事が相次いでいる。激しい販売競争の中で、営業現場での法令順守(コンプライアンス)意識の低さや管理体制の不備が露呈した。

第一生命ホールディングス(HD)は12日、傘下の生保3社で社員が出向先の販売代理店から情報を無断で持ち出していた事例が1155件あったと発表した。これにより日本生命保険などを含む大手生保4社での同様の事案は合計で3517件に達した。米系大手のプルデンシャル生命保険の社員らが顧客の金銭詐取などした問題も発覚したばかりだ。

同日会見した第一生命HDの甲斐章文執行役員は「社会の常識から外れた不適切な行為だった」と謝罪した。無断で取得した情報を同社の直接的な営業活動には活用していないものの、自社商品の特色などを説明することなどに利用していた。金融庁からは報告徴求命令を受けたという。4月からは傘下生保3社においてもチーフ・コンプライアンス・オフィサーを新たに任命し、コンプライアンス体制を強化する方針を示した。

「顧客不在の販売競争が進んでしまっている。会社が営業現場を把握できていない」と、福岡大学の植村信保教授は指摘する。いずれの不祥事も保険を提供する側の都合で行われており、「トップラインやシェアに偏った姿勢を改め、顧客を向いて事業を行うという原点に立ち返ることが重要だ」と述べた。

第一生命の看板

大手生保では営業情報以外に販売代理店への出向者が個人情報を自社に漏らしていた事案もあった。プルデンシャル生命では顧客の金銭を着服したり、借り受けたりした金額は計31億円に上った。生保業界全体でコンプライアンスやガバナンス(企業統治)の在り方が問われている。

少子高齢化や若者の意識変化などを受け、保険契約高は減少傾向にある。2024年度末の個人向け生命保険と年金保険の保有契約高合計は883兆1330億円と前年度比約10兆円減少した。相次ぐ不祥事により保険業界への不信感が広がれば、保険販売に影響を及ぼしかねないとの指摘もある。

国内大手生保では出向者による問題を受け、金融機関への出向を原則廃止する方針だ。保険商品などについて高い専門知識を持つ出向者がいなくなれば、営業現場にマイナスの影響を与える可能性もある。プルデンシャル生命では解約が例年に比べ増えているという。

日本生命保険の赤堀直樹副社長は昨年11月の会見で、出向者による不祥事を受け、販売影響を注視する考えを示した。

金融庁、監督強化へ

同志社大学の太田肇名誉教授は「コンプライアンスが重要になる中で、会社側は先回りして組織体制づくりが必要だったが、それを後回しにしてきた問題点がいま露呈している」と分析する。こういった不祥事が続けば業界そのものへの不信感から「保険販売にも影響が出かねない」と語った。

金融庁は今夏、金融機関の不祥事や不正などの課題に対応するため、「資産運用・保険監督局」を新設する。資産運用立国の実現とともに、保険業界での不祥事や不正問題に対応する。同庁は2025事務年度の行政方針で、顧客の立場に立った競争環境の実現などに向け、監督・検査を実施していく方針も示している。

 

(第一生命の記者会見のコメントなどを追加して記事を更新します)

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