「米国版100円ショップ」のダラー・ツリーが昨年、テキサス州プレイノに9000号店をオープンした。ここから数マイル圏内には、仏高級ブランドのルイ・ヴィトン店舗や525ドル(約8万円)の和牛を提供するステーキハウスに加え、アウディ、ポルシェ、フェラーリなど高級車のディーラー店舗も軒を連ねる。

店内では来店客の多くが手頃な商品を求めていたが、必ずしも生活に必要だからではない。開店初日には、駐車場に英高級車レンジローバーが3台止まっていた。

店内を見て回っていたステファニー・ウィリアムズさんは「ダラー・ツリーを『アドオン』と呼んでいる」と語った。買い物リストの「ちょい足し」アイテムを探す場所だという。その日は同僚に配るために購入したお菓子を入れるギフトバッグを物色していた。

ダラー・ツリーのマイケル・クリードン最高経営責任者(CEO)は新店舗の立地について、数年前であれば、1ドルショップ運営の小売業者にとっては高級過ぎる地域だったと指摘する。

「それが変わった」と同氏。「あらゆるものが、少しずつ上の水準にシフトしている」と述べた。

 

ダラー・ツリーは高所得層地域への出店を全米で拡大している。ブルームバーグ・ニュースの分析によると、過去6年間に開業したダラー・ツリー新店舗のうち、ほぼ半数が大都市圏の比較的裕福な地域に立地した。それ以前の6年間では、この割合は41%にとどまっていた。

同社によれば、年収10万ドル(約1540万円)超の顧客層が現在の成長の大半を支えている。直近四半期では、新規顧客の60%が年収10万ドル以上だった。高所得層は低所得層に比べて来店頻度は低いものの、1回の来店当たりの支出額は平均で1ドル多いという。この差は無視できない規模に膨らむ。こうした来店頻度の低い顧客が年に1回多く来店するだけで、年間売上高は10億ドル増える計算になると、同社は説明する。

ダラー・ツリーが発表を予定する2025年業績は、10%超の増収となると見込まれている。そうなれば過去約10年で最も高い伸びだ。株価は1年前から67%上昇している。

米国の1ドルショップはこれまで、消費者が低価格商品に切り替える景気低迷局面で収益を伸ばしてきた。ダラー・ツリーが前回、より高所得の地域に進出したのは世界的な金融危機に見舞われていた2008年だった。

だが、足元の高級化傾向は、一時的な節約志向というより、むしろ富裕層中心に構築されつつある米経済の構造に起因する。上位10%の高所得層に消費が集中する中、低価格戦略をうたうウォルマートのような小売業者でさえ、高所得層の呼び込みに余念がない。消費者による低価格商品への切り替えを待つのではなく、小売業者が自らが高級路線を進めているのだ。

プレイノのダラー・ツリー店舗の店頭に並んでいるのはいわゆる「アドオン」商品だ。クリスマス前には緑と赤のリボンが整然と並び、正面の通路を彩っていた。

シャンプーや冷凍食品、缶詰など、低所得層がダラー・ツリーでまとめ買いすることが多い生活必需品は、奥の方にひっそりと置かれている。

同社は2019年、過激な決断を下した。1ドルショップの看板に反して、一部店舗で最高5ドルの商品の販売を開始した。2年後には、この試験的取り組みをさらに多くの店舗で導入。基本価格も1ドルから1.25ドルに引き上げた。2025年には最高7ドルの商品も販売し、全店舗で様々な価格帯の商品を揃えるようになった。同年には業績不振だったファミリー・ダラーを売却。低所得層への浸透拡大を目指し、2015年に80億ドル超で買収した同社を手放した。

一段と高価な商品を提供することで、ダラー・ツリーは高所得層地域への進出が可能になった。昨年開店したダラー・ツリーの店舗の4分の1以上が、世帯収入が中央値で10万ドル以上の郵便番号区域だった。

プレイノのジョン・マンズ市長は「新規店舗は小売業が活発な地域に進出したため、地域の衰退を示す存在とは受け止められなかった」と語る。「我々が想像する典型的な1ドルショップではない」と市長。むしろターゲットやウォルマートのような「ちょっとした買い物を済ませる場所」でありながら、大型店舗よりもアクセスしやすいと話した。

もっとも、ダラー・ツリーは低所得の顧客を見捨てたわけではない。都市部の低所得層が多い地域にも進出しており、前四半期には年収2万ドル未満の世帯を含む全所得層で支出が増えたとしている。

原題:Porsche, BMW and Dollar Tree? Discount Store Targets Rich Towns(抜粋)

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