(ブルームバーグ):人工知能(AI)投資を巡るベンチャー市場の競争が激化する中、創意工夫を凝らしたディール(取引)構造が有力ベンチャーキャピタル(VC)の交渉力を維持させ、そうではない投資家を不利にしている。
ソフトウエア生産向けAIエージェントを手がけるスタートアップ、リゾルブAIの評価額が10億ドル(約156億円)に達したと、ブルームバーグが先週報じた。この資金調達について同社を取材した際、ラウンドは「アンブレンデッド(単一評価額方式)」だったと説明された。プレスリリースではなじみのない表現だが、これは投資が単一の評価額に基づき、全ての株式に同じ価格が適用されたことを意味する。
対照的にシリコンバレーでますます一般的になっているのは、マルチトランシェの調達ラウンドだ。
トランシェ、すなわち通常は異なる取引条件で区切られる資金調達ラウンドの段階は、VCにとって新しいものではない。一般的には、企業が特定の目標を達成することと結び付けられる。例えばスタートアップが大型パートナーから重要な契約を獲得した場合、第2トランシェを完了させ、より高い評価額で追加資金を確保することができる。
しかしAIの時代には、マルチトランシェのラウンドがほぼ連続して即座に実行されるケースもある。リゾルブAIのシリーズAラウンドを主導した投資家ライトスピード・ベンチャー・パートナーズのセバスチャン・デュースターホーフト氏は、次のような展開を目にしてきたという。トップクラスのVC(通常はラウンドのリード投資家)が、第1トランシェで低い評価額で出資し、その後で他の投資家に、より高い評価額での出資を呼びかける、という流れだ。
この場合、スタートアップの創業者は高い価格で資金を調達したと公言でき、リード投資家は良い条件(少なくともより良い条件)を得る。一方で他の投資家はどうか。彼らはその取引に参加できるだけで満足しているのかもしれない。
「先手必勝だ。ラウンドを勝ち取った者が、条件を設定できる」とデュースターホーフト氏は語った。「2番手であれば、決断を迫られる。取引への参加を確保するために、より高い価格で資金を投じる覚悟があるのか、決断しなくてはならない」と続けた。
マルチトランシェの取引条件が公表されることはほとんどない。高い評価額は社外の投資家や従業員に、企業の成功を納得させる効果があるが、取引の内訳を開示すれば同じ効果が得られない恐れがあるためだ。それにリード投資家が共同投資家を公然と出し抜くのも、体裁が悪い。
デュースターホーフト氏はブレンデッドのラウンドを好まない。ライトスピードはこれまでに「何度も」、トランシェ構造を含めディールの条件に納得がいかず、手を引いてきたという。こうした構造は極端に競争が激化したAI市場の副産物にすぎないと、同氏は述べた。
AIの評価額は上昇を続けている。デュースターホーフト氏のような一部の投資家は、こうした評価の上乗せがかえって創業者を苦境に追い込む可能性を心配する。
「高い評価額はいずれ、その価値に見合う存在であることを要求する」と同氏は語った。
原題:Enthusiasm for AI Investments Spurs Unequal Deals: Tech In Depth(抜粋)
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