米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長が利下げを推し進められるよう、トランプ米大統領は現職のパウエル議長を罰することを断念する必要があるかもしれない。

トランプ氏が次期議長に指名したケビン・ウォーシュ氏は通常であればパウエル議長の5月中旬の任期満了に合わせて就任する。だが、パウエル氏はトランプ政権の司法省による刑事捜査の対象となっている。これは前例のない動きで、議会のトランプ氏支持派の一部を激怒させており、問題が解決するまで一切のFRB人事を承認しないと共和党有力議員が明言する事態となっている。

こうした脅しを実行する構えを示しているのは、指名を承認する必要のある上院銀行委員会で結果を左右する票を持つティリス議員だ。同氏は、FRB本部ビル改修を巡る司法省の捜査を中央銀行の独立性への攻撃と非難し、同調する共和党議員も少なくない。彼らは、トランプ氏がパウエル氏を「まぬけ」と呼ぶのはともかく、刑事責任を追及するのは行き過ぎだとの立場を取る。

Photographer:Al Drago/ Bloomberg

ティリス氏はこれまでのところ強硬姿勢を崩していない。1月30日に同氏は「訴追の手続きが終わらない限り、誰の承認にも賛成する気はない。ウォーシュ氏のように優れた人物であってもだ」と述べ、パウエル氏への捜査を「でっち上げだ」と断じた。

トランプ氏も引き下がってはいない。同氏は1月30日に改修工事を巡ってパウエル氏を再び「詐欺師」と呼び、「重大な無能か、さもなければ窃盗だ」と非難した。さらにティリス氏が2027年1月に退任するまで、上院によるウォーシュ氏の承認を待つ用意があるとも述べた。

そうなれば、FRBの暫定的な指導体制を巡る複雑な問題が生じる。さらに政権にとって重要なのは、ウォーシュ氏の下でFRBが金融政策を緩和し景気を刺激する時期が先送りされる点だ。世論調査では有権者が経済に不満を示しており、11月の中間選挙では共和党の議会多数派が危うくなっている。

ウォーシュ氏が5月15日までに承認されない場合、暫定議長を誰が指名できるのか、ホワイトハウスなのかFRBなのかという法的に未解決な問題が浮上する。前例も乏しい。2022年には理事会がパウエル氏を2期目の承認待ちの間、「臨時議長」に指名したが、当時は再任が確実視され、ほとんど注目されなかった。

政権内の側近らは、この問題を検証するような事態を避けたい構えだ。

国家経済会議(NEC)のハセット委員長は、上院での膠着は「早期に解決されるべき問題だ」と述べ、ホワイトハウスのデサイ報道官もウォーシュ氏の迅速な指名承認を期待すると述べた。共和党のスーン上院院内総務も「パウエル氏の件を早く決着させる必要がある」と話した。

政権にはパウエル氏を巡る捜査の出口を探る動機はあっても、そうする動きは見られない。ホワイトハウス高官の1人は匿名を条件に、大統領が司法省に捜査を止めるよう指示しているとは思わないと語った。

FRBと司法省はいずれも、先月FRBに送付された召喚状に応じたかどうかについてコメントを控えている。

原題:Trump Needs an Off-Ramp for Powell Feud to Speed Warsh Into Fed(抜粋)

--取材協力:Chris Strohm、Jarrell Dillard、Skylar Woodhouse.

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