中国にとってのグッドニュースは、輸出マシンが依然として十分に稼働している点だ。米国の関税措置にもかかわらず、むしろ好調と言えるかもしれない。

国内経済が勢いを欠いているだけに、なおさらだ。昨年10-12月の国内総生産(GDP)は、2022年末の新型コロナウイルス対策解除後で最も低い伸びとなった。それでも、25年の年間貿易黒字は1兆ドル(約158兆円)を超え、過去最大を更新した。

世界中に商品を送り出し続ける中国の動きを基準にすれば、ホワイトハウスが課した関税によってグローバル化が後退したわけではない。

中国だけでなく、世界経済全体も関税ショックを吸収し続けている。昨年4月の米関税措置発表時に相次いだ悲観的な予測を踏まえれば、安心できる材料だ。

もっとも、トランプ米大統領はシステムの耐久性を試し続けている。デンマークからグリーンランドを何らかの形で取得するとの自身の主張に反対する欧州諸国に対し、関税を課すとまで威嚇した。

「トランプ2.0」の影響を全く受けていない国はほとんどない。貿易は今年、拡大すると見込まれるが、伸びは鈍ると想定されている。しかも、通商パターンが変化しており、新たなゆがみが生じるのは避けられない。

中国の対米輸出は昨年12月に急減し、中国の輸出全体に占める米国のシェアは昨年、過去最低の11%に落ち込んだ。世界最大の消費市場が大きく後退する中、世界の工場で生み出される膨大な量の製品はどこへ向かうのか。中国の東南アジア向け輸出は13%、欧州連合(EU)向けは8%、英国向けもほぼ同程度増えた。

 

これは一面では心強い。1930年代のように関税障壁がほぼ至る所で立ち上がる事態には至っていない。中国を除けば、米国に対抗関税を講じた国は多くない。

米コロンビア大学のアラン・テイラー教授はシンガポールで最近講演し、「この非対称性が重要だ」と述べた。「水が水平な場所を探すように、貿易は道を見つける。ある経路がふさがれれば、財・サービスは次善の代替を探し出す」という。テイラー氏はイングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会(MPC)メンバーでもある。

ただし、こうした楽観論には注意点もある。中国経済は広範なデフレに苦しんでいる。輸出品の価格も、他の仕向け地に向かうにつれて下落している。フランスやドイツといった米国に代わる市場が中国のビジネスモデルを下支えしているが、こうした欧州諸国も中国の輸出急増に対抗する動きに出るかもしれない。

歴史的な視点

問題になっているのは、電気自動車(EV)だ。中国製EVに関税を課しているEUは、対立を和らげる措置として関税を最低価格に置き換えることを検討している。厳しい国内環境に直面している中国のEVメーカー、比亜迪(BYD)は2025年に英国向け販売を5倍超に増やした。

中国が19日に発表した一連の統計で、海外需要の重要性が改めて浮き彫りになっている。昨年10-12月のGDPは前年同期比4.5%増となったが、12月の小売売上高は予想を下回り、投資もつまずいた。

25年の経済成長率は習近平国家主席の目標(5%前後)に辛うじて達したが、中国当局は大規模な刺激策の発動になお慎重だ。他の主要国が中国と同じ状況ならほぼ確実に大型景気対策に訴えるだろう。

こうして、輸出という巨大マシンが最優先となる。ドルへの需要が冷え込む中でも、中国政府が人民元の大幅上昇を容認する可能性は低い。人民元は過去1年で約5%値上がりしたが、マレーシア・リンギットやタイ・バーツ、シンガポール・ドルに比べれば、はるかに控えめだ。

景気を過度に刺激しない理由としては、利下げが自国通貨安を招きやすい点が挙げられる。今年は利下げが実施されるとしても小幅な緩和にとどまるとの見方が多い。

中国や米国の政策だけに過度な重みを置くべきでもない。シンガポールの聴衆を前にテイラー氏は目先の雑音から距離を置き、歴史的な視点でグローバル化を捉え直した。

政府の行動が極めて重要なのは確かだが、イノベーションもまた大きな意味を持つ。貨物輸送のコストは、19世紀半ば以降、断続的ながら低下してきた。

シンガポールが誇る世界有数の港を背に、テイラー氏は1845年にシンガポールに初めて寄港した郵便蒸気船「レディ・メアリー・ウッド号」から、2019年に入港した世界最大級のコンテナ船「MSCイザベラ号」までの変化に言及した。

その間には、後退局面も少なくなかった。二つの世界大戦という悲劇や、数え切れない地域紛争もあった。時に、最も優れた知性でさえ、商取引が1913年以前の活力を取り戻せるのか疑う理由があった。

現時点では、貿易の強靱(きょうじん)さは世界経済にとって大きな追い風だ。中国発の貿易ショックの代償が、あまりに高くならないことを願うばかりだ。

(ダニエル・モス氏はアジア経済を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。以前はブルームバーグ・ニュースの経済担当エグゼクティブエディターでした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:The New China Trade Shock Is Just Getting Started: Daniel Moss(抜粋)

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