(ブルームバーグ):高市早苗首相が衆議院解散に踏み切ったことを受け、12日間の選挙戦がまもなく始まる。与野党が公約に掲げる消費税減税は企業業績に与える影響も大きく、業種ごとに勝ち組と負け組が鮮明になりそうだ。やり方次第で「劇薬」になる恐れもある。
食料品を対象とする消費減税が実現すれば、食品スーパーやコンビニエンスストアなどが恩恵を受けそうだ。小売業界に詳しい消費経済アナリストの渡辺広明氏は、食料品が減税となった場合、コンビニの6-7割の商品が対象になると述べた。日用品を「ついで買い」する効果も見込まれ、業績の追い風になるという。
セブン-イレブン・ジャパンで商品開発を担当する羽石奈緒執行役員は、減税で食品価格が安くなる分、素材やボリュームなどの品質向上を加速できる可能性があると述べた。顧客からは単価の上がり方と内容量が見合っていないとの声が届いており、満足感を得てもらう商品開発に取り組んでいるという。
割を食う可能性があるのが外食業界だ。10%の標準税率となっている外食の割高感が増し、店での飲食を控える動きが広がる可能性もある。
政府の経済財政諮問会議で議員を務める第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、一気に食料品の消費税をゼロにするのは「劇薬」だとし、実施する場合は段階的に税率を下げるべきだと指摘する。
消費喚起の効果は限定的との見方もある。食品のような生活必需品は、価格が変化しても販売数量が変わりにくいとされている。
大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、例えば減税で牛乳の実質の値段が下がっても「急に2本、3本も買うわけじゃない」と指摘する。食料品の消費減税で約4兆8000億円の税収減になる一方、消費喚起効果は5000億円程度にとどまるとみる。
仕入れコスト増も
消費減税のリスクにも目を向ける必要がある。各党の公約通りに消費税減税や給付拡大が実行されれば、財政支出増加への懸念から円安や金利上昇が加速する可能性が高い。原材料の輸入価格上昇に伴い加工食品などが値上げされれば、スーパーやコンビニにとっては仕入れコスト増につながる。
一方で、輸出産業や海外事業比率が高い業種には円安が追い風となる。北米を中心に海外で売上高の多くを稼ぐトヨタ自動車は対ドルで1円の円安で営業利益を約500億円押し上げる効果があると見込む。同社は2025年10月-26年3月期の想定為替レートを1ドル145円としており、為替介入の警戒水準とされる1ドル=160円に迫る足下の為替相場はそこから大幅に円安に振れた水準だ。
中小企業の負担増
債券市場では消費減税の財源への懸念などから金利の上昇圧力が高まっている。金利の指標となる新発10年国債利回りは20日、一時2.35%と1999年以来の水準まで上昇した。大和総研の神田氏は、食料品消費減税が「本当に2年で終わるのかという問題がくすぶっている」とし、財源に穴が開いた状態が続くことへの懸念は強いと話す。
金利の上昇局面では、企業は借入金の返済負担が増加する。神田氏は、大企業はより多くの金融資産を持っていることなどから、中小企業の方が金利上昇による影響が大きいと話した。ただ、「日銀が2%の物価安定目標の達成のためにより早期に利上げするとなると大企業でも金利高の負担は重くなっていく」と指摘した。
今回の衆院選について、ブルームバーグ・エコノミクスは基本シナリオとして、与党である自民党と日本維新の会が議席を増やすと予測している。そうなれば高市氏の台湾有事を巡る11月の発言を受けて悪化している中国との関係改善は短期的には見込みにくい。
ブルームバーグ・エコノミクスの木村太郎シニアエコノミストは、高市氏が選挙で勝利した場合、中国側が「二の矢を放ってくる可能性はある」と話す。具体的には日本への渡航やレアアース輸出をさらに絞ってくる可能性があるとして、中国人観光客に依存する観光や小売りの事業者やレアアースを使う自動車メーカーが打撃を受ける恐れがあるという。
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