(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、イランのエネルギー関連インフラおよび発電所への攻撃計画を5日間延期すると発表した。イランと「実りある会話」を行ったとも述べたが、発言は困惑を引き起こした。
トランプ氏は23日、ウィトコフ特使と娘婿のジャレッド・クシュナー氏がイランの「最高位の人物」と前日に協議し、すでに「重要な合意点」があると記者団に説明。双方とも「合意を望んでいる」とし、23日に再び電話で協議を行うと続けた。
その後、訪問先のメンフィスでトランプ氏は、「イランには米国とその同盟国に対する脅しを終わらせるチャンスがもう1回ある。イランがそれをつかむことをわれわれは望んでいる」と発言。「全員にとって非常に良い合意になる可能性は十分にある」と付け加え、イランの核兵器保有は容認されないと繰り返した。
海上輸送の要衝で、戦争が始まってから事実上の封鎖が続いているホルムズ海峡については、米国とイランで共同管理する可能性をトランプ氏は示唆。「うまくいけば」、海峡の封鎖は極めて近いうちに解除されるだろうと語った。
戦争激化への懸念が高まっていた中でトランプ氏のコメントは全くの予想外で、北海ブレント原油先物は23日の約11%急落後に下げ止まった。しかし、アジア時間24日に入ると上昇に転じ、一時1バレル=103ドル台に再び乗せた。
イラン側が米国との話し合いを否定し、他の湾岸諸国が衝突に巻き込まれるとの懸念が高まった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、ペルシャ湾岸の米国の同盟諸国が、イランとの戦争に加わる方向に徐々に傾きつつあると報じた。
WSJによれば、サウジアラビアのムハンマド皇太子は抑止力の再確立を強く望み、攻撃参加の決定に近づいているという。ファルス通信は、イランのアリー・ニークザード国会副議長が米国との交渉を否定したと伝えた。
トランプ氏によると、イラン側の協議相手は最高指導者のモジタバ師ではない。アクシオスがイスラエル当局者の情報として報じたところによれば、ウィトコフ氏とクシュナー氏はイラン議会のガリバフ議長と協議している。
だが、ガリバフ氏はX(旧ツイッター)で、米国側と交渉したことはないと明言。イラン国営テレビは、過去数日に仲介国を通じて米国から交渉の打診を受け取ったが、イランはまだ返答していないと報じた。
米国は交渉に「5日間」の時間を与え、その期間はエネルギーインフラへの攻撃を控えるとトランプ氏は述べた。
「その行方を見守る。うまくいけば、それで解決する。そうでなければ、ひたすら爆撃を続けるだけだ」と語った。
この発言後、イランはイスラエルと米国の標的にミサイルと無人機(ドローン)で新たな攻撃を仕掛けたことを明らかにし、事態の早期収束期待に水を差した。
これより前にトランプ氏は、ペルシャ湾岸地域への海兵隊派遣を指示。派遣される中には、2000人以上の兵員から成り、沖縄に司令部を置く第31海兵遠征部隊も含まれている。
トランプ氏の第1期政権下で国家安全保障会議(NSC)に在籍したフレッド・フライツ氏は、合意に関する発言について「大統領による、相手を欺く動作かもしれない」と述べつつ、「これが大規模軍事作戦の終わりの始まりになればいいと思う」との期待を示した。
イランとの戦争が始まって以来、戦争に関するトランプ氏の発言は大きく揺れ動き、正確な情報の共有よりも、物価抑制を同氏が優先させていることがうかがわれる。

中東諸国、水面下での協議に関与
トルコやサウジアラビア、オマーンを含む中東の複数の国々は、過去2週間にわたり、戦争の封じ込めと、さらにはイランと米国・イスラエルとの停戦合意を目指し、イランとの水面下の協議に関与してきた。
仲介国はイスラマバードでの米国とイランの会談を実現させようとしていると、アクシオスがイスラエル当局者の情報として報じた。協議は恐らく今週後半で、米国側はウィトコフ、クシュナー氏にバンス副大統領が加わる可能性があり、イラン側はガリバフ氏のほか複数の当局者が出席する見通しだという。
トランプ氏は米東部時間の23日夜までにホルムズ海峡を開放しなければ、米国とイスラエルがイランの発電所への爆撃を開始すると通告していた。これに対しイランは、中東一帯のエネルギー、情報技術および水関連施設を攻撃すると表明していた。
また、イランの国防評議会は23日、自国沿岸へのさらなる攻撃があれば「ペルシャ湾全体」に機雷を敷設すると表明した。
米国とイスラエルが2月28日に対イラン攻撃を開始すると、イランはホルムズ海峡を事実上封鎖した。世界の石油・ガス輸送の約5分の1を担う同海峡の封鎖によって、原油・ガス価格は急騰、インフレや食料危機への懸念が高まっている。
イランは継続的な攻撃への報復として、イスラエルおよびペルシャ湾周辺への攻撃を行っている。これまでの戦争による死者は少なくとも4200人に上り、その4分の3以上がイランで発生している。
イスラエル軍はこれに先立ち、イランのインフラを標的にしていることを明らかにしたが、詳細には言及していない。イランはこれまでもイスラエルおよび湾岸諸国に対して攻撃を続けており、アラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアはドローンやミサイルによる攻撃を受けたと報告しているが、大規模な攻撃があったとの情報はない。また、親イランのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘を続けるレバノンでの地上作戦を拡大する準備を進めていると明らかにした。
先週、イスラエルがイランの主要ガス田を空爆したことをきっかけに反撃の応酬が起き、カタールのラスラファンにある巨大LNGプラントを含む地域の主要エネルギー生産設備の一部が損傷を受けた。
深刻なエネルギー施設の被害
国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は23日、中東9カ国にある40カ所以上のエネルギー関連施設が「深刻、または極めて深刻な」被害を受けており、紛争終結後も世界のサプライチェーンの混乱が長期化する可能性があると指摘した。
ビロル氏は被害の影響により油田や製油所、パイプラインの再稼働には時間を要するとの見通しを示した。
イランによるイスラエルへのミサイル攻撃はここ最近激化している。21日にはイスラエル南部のアラドとディモナで約115人が負傷した。ディモナ近隣には核研究施設がある。イランのメディアは、この攻撃がナタンツの核施設に対する攻撃の報復だと報じた。
イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの核・ミサイル開発を完全に破壊することが自国の軍事目標だと改めて強調。さらに、イラン国民が指導部を打倒するための「条件を整えること」も目標の一つだと話した。
トランプ氏は、戦争開始の理由についてこれまでにさまざまな説明をしており、その中には、イランの核兵器開発能力を排除する必要性も含まれている。一方、イランは核兵器開発を追求しているとの指摘を否定している。
米人権団体ヒューマン・ライツ・アクティビスツ・ニュース・エージェンシー(HRANA)によると、イラン国内の死者は少なくとも3231人に上る。このうち1407人が民間人、1167人が軍関係者で、残る人数の詳細は確認されていない。
イスラエルがヒズボラへの攻勢を強めているレバノンでは、死者が1000人を超えた。イスラエルおよびアラブ諸国でも数十人が死亡している。
原題:Trump Delays Energy Strikes, Sets Five Days for Iran Talks (3)、Trump Touts Fresh Iran Talks, Delays Attacks on Energy Sites (3)、Witkoff Negotiating With Speaker of Iran Parliament, Axios Says(抜粋)
(原油価格を更新し、WSJの報道などを追加して更新します)
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