(ブルームバーグ):地政学的緊張がくすぶる中、欧州は経済の競争力と強靱(きょうじん)性に不可欠なインフラ整備を早急に完了させる必要がある。欧州会計検査院(ECA)がこう指摘した。
19日公表されたリポートによると、欧州連合(EU)の主要輸送インフラの建設は一部で予定より約17年遅れており、現在想定されている事業費も当初計画の2倍近くに達する見込み。2030年までに大陸横断ネットワークの中核部分を完成させるという目標は達成できないとの見通しも示された。
ECAメンバーで、今回の監査を主導したアネミー・トゥルテルボーム氏は記者会見で、「極めて重要な輸送リンクで、10年単位の遅れをこれ以上許す余裕は欧州にはない」と指摘。「このインフラは人の移動や単一市場、競争力、そして欧州の強靱性にとって不可欠だ」と述べた。
トランプ米大統領はグリーンランドを巡る自身の構想に抵抗する一部のEU諸国に対し、新たな関税を課す方針を示している。EU内では報復措置の選択肢が検討されており、景気の足を引っ張り、需要を圧迫してきた貿易戦争で新たな局面に突入する可能性もある。
今回の調査結果は、インフラや防衛支出の拡大計画を欧州が効率的に実行できるのかについても疑問を投げかけている。
行き詰まり
ECAは13のEU加盟国の鉄道路線4本、水路1本、高速道路1本、複合輸送拠点2件の進捗(しんちょく)状況を調査した。これらは50年の完成を目指す欧州横断輸送ネットワークの一部で、加盟国は13年に中核部分を30年までに整備することで合意していた。
検証対象となったプロジェクトの中には、当初は早ければ10年にも完成する予定だったものもある。セーヌ北欧運河はその一つで、開通はようやく32年と見込まれている。事業費も想定より225%増えている。
ベルギーで閣僚経験を持つトゥルテルボーム氏は、「大きな野心があり、非常に優れた戦略が多く、本当に良い意図もあるが、結局は行き詰まってしまうことが多い」と語った。
計画と実行の乖離(かいり)は、欧州の競争力を左右する他の重要分野でも広がっていると同氏は分析。EUの強化に向けて各国政府に前進を促した。
「現在の地政学的現実の中で、単一市場はわれわれが強靱性を保ち、直面している競争圧力に立ち向かうための最も強力な資産だ」と、トゥルテルボーム氏は訴えた。
原題:EU Is Decades Behind, Billions Above Plan on Key Transport Links(抜粋)
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