(ブルームバーグ):日本の超長期債利回りが記録的な急騰(価格は急落)となった。与野党による衆院選での消費税減税の公約観測を背景に財政悪化への警戒が高まっている上、この日実施された20年国債入札も低調に終わり、需給に対する懸念が強まった。
ブルームバーグのデータによると、新発30年と40年債利回りの変動幅は米国の関税政策で市場が大揺れとなった昨年4月以来の大きさだ。20日の債券市場で新発30年国債利回りは一時前日比26.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い3.875%まで上昇。新発40年債利回りも27bp高い4.215%を付け、共に過去最高を更新した。日本の国債利回りが4%台に乗せたのは1995年以来だ。
パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は「消費減税を各党が掲げ、財政悪化懸念が強い。発行減額となったものの、需給が改善されない」と述べた。20年債の入札後に超長期が売り込まれたのは、「昨年5月にも見た光景だ」とし、「日本銀行の臨時オペや財務省のバイバックの実施を要望する声が高まりそうだ」と言う。
片山さつき財務相は超長期金利の急騰を受け、「市場を安定させるためのことはやってきているし、これからもやることは必ず約束できる」と述べ、市場に冷静な対応を呼び掛けた。世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)への出席に合わせ、現地でブルームバーグのインタビュー取材に応じた。
財務省が市場関係者と丁寧な対話を重ねてきていることから、「国債の消化には安心感を持っている」とも述べた。
木原稔官房長官は20日午後の定例会見で、超長期金利が急騰していることに関し、「長期金利を含めた金融市場の動向を注視している」と述べた。政府債務残高の対GDP比を引き下げ、財政の持続可能性を実現してマーケットからの信認を確保していく」としている。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、「消費減税の財源が具体的に示されておらず、時限措置なのかということを含めて、市場は悪い方に捉えていいる。債券は買いづらい」と述べた。

高市早苗首相は19日の記者会見で、通常国会召集日の23日に衆院を解散すると表明。食料品にかかる消費税の軽減税率を一時的に引き下げることを公約に掲げ、来月8日投開票の総選挙に臨む考えを示した。
立憲民主党と公明党が立ち上げた新党「中道改革連合」も19日に公表した基本政策に「食料品消費税ゼロ」を盛り込むなど、与野党が消費税減税を掲げて選挙戦に突入する見込みで、選挙結果にかかわらず財政拡張が続く可能性は高まっている。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、首相の会見で消費減税を公約とする一方、財源が決まっていないことが明らかになり、債券市場が「戸惑い、驚いた」ことで金利上昇が止まらなくなっていると話す。
20日の取引では新発10年国債利回りも2.34%と約27年ぶり、新発20年債利回りも一時3.45%と97年以来の高水準を更新した。
20年債入札低調
財務省が20日に実施した20年利付国債入札も低調だった。財政悪化への警戒で投資家は応札を控え、入札結果を受けて国債利回りは一段と水準を切り上げた。市場では28日に行われる40年国債入札をはじめ、2月8日の衆院選までに実施される10年債や30年債の利付国債入札に対しても不安が大きくなっている。
明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、 城内実経済財政政策担当相が財源の話をしていたが、「明確なことは言えず、どうしても財政拡張が意識されてしまう。買いづらさが続くため、入札に対しても懸念が強まる」と警戒する。
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは「政府の積極財政の方針が修正されない限り、海外に逃避した資金の円債回帰はまだ先になる」との見方を示した。
日本証券業協会が20日に公表した統計によると、昨年12月の保険会社による超長期債の売越額は過去最大だった。りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは「買い手不在で売りが止まらない状態だ」と足元の需給の悪さを指摘した。
国債市場への介入
日本政府は4月からの2026年度から国債発行額を削減する方針で、特に超長期債の削減に重点を置く。しかし利回りが上昇を続ける中、一部の市場関係者は日本銀行が国債市場の暴落を食い止めるため臨時の国債買い入れオペの実施を迫られる可能性があると指摘する。
シンガポールのマッコーリー・グループでストラテジストを務めるギャレス・ベリー氏は「日銀が再び必要と判断した場合に備えて温存している無制限の国債買い入れツールを投入する兆候は見られない」と指摘。「売りが続けば、特に世界的に広がった場合には、日銀がこのツールを引っ張り出して活用するだろう。早ければ明日の朝の日銀のオペレーションで」と述べた。
市場では、22-23日に実施される日本銀行の金融政策決定会合に対する関心も高い。円相場がインフレに与える影響に対する日銀の姿勢を手掛かりに、将来の利上げ経路を探る動きが強まっている。今週は政策据え置きが有力視されるが、声明や植田和男総裁の会見内容次第では次の利上げ時期を巡る観測が高まりかねない。
利回りの急上昇により、日本の債券市場は海外投資家にとってますます魅力的になっている。超長期債の利回りはドイツの30年国債が3.4%台と日本が大幅に上回っている状況だ。日本証券業協会のデータによると、海外投資家は現在、月間現物国債取引の約65%を占めている。世界第3位の規模を誇る日本国債市場での取引が活発化する中、シンガポール取引所は長期国債先物を導入する予定だ。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのシニア債券ストラテジストの駱正彦氏は「40年物利回りが4%超は、特に為替ヘッジベースでは利回り上昇幅が大きく、国内外の長期保有者にとってますます魅力的な価値を提供している」と述べた。
(第4-5段落目に片山財務相の発言を追加して更新します)
--取材協力:日高正裕、グラス美亜.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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