トランプ米大統領は以前から、世界最大の島でありデンマークの自治領であるグリーンランドの支配権を握りたいと述べてきた。大統領2期目の現在、その圧力はさらに強まっている。デンマークとグリーンランドは、島は売り物ではないとして困惑し、苛立ちを募らせている。

米特殊部隊によるベネズエラ大統領の拘束により、トランプ氏が他国の内政に直接介入する用意があることが示され、デンマークは新たな警戒感を抱いている。ベネズエラの作戦後、トランプ氏はグリーンランドに対する野心を繰り返し表明した。デンマークのフレデリクセン首相は4日、「米国に対し、極めて明確に言う必要がある。米国には、デンマーク王国を構成する3カ国のいずれをも併合する権利はない」との声明を発表し、これまでで最も強い反発を示した。

ベネズエラの作戦後、トランプ米大統領はグリーンランドに対する野心を繰り返し表明した

トランプ氏は本当にグリーンランドを獲得できるのか

デンマーク政府は当初、トランプ氏のグリーンランドへの野心を、以前は空想と見なしていた。だが、同氏の発言はエスカレートし、デンマーク側はより真剣に、この問題に向き合うことになった。デンマーク当局は米国大使を繰り返し呼び出し、抗議している。昨年12月には、デンマークの諜報機関が初めて米国を潜在的な安全保障上のリスクと表現した。

トランプ政権はベネズエラへの介入を、19世紀のモンロー主義を現代的に再解釈したものとして位置づけている。モンロー主義とは、米国が西半球を他国による植民地化の対象外と宣言した政策だ。この理屈は理論上、グリーンランドにも適用可能だ。

グリーンランドへの軍事行動は深刻な事態の悪化を意味する。デンマークは米国の緊密なパートナーであり、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国でもある。グリーンランドもデンマークも米国の安全保障に対する脅威ではない。グリーンランドに対する武力行使はNATO同盟国同士を対立させ、軍事同盟の存続危機を招きかねない。

なぜグリーンランドが欲しいのか

2019年に初めてグリーンランド買収の可能性を示唆した際、トランプ氏はこれを「大規模な不動産取引」と位置付け、デンマークの財政を緩和できると主張した。今回のトランプ氏の論点は、グリーンランド支配は米国の安全保障にとって不可欠だというものだ。

トランプ氏は、デンマークが同島の防衛に十分な支出をしていないと主張している。デンマークは、人口5万7000人のグリーンランドに対し、防衛やインフラ整備のための数十億ドルを含む資金を振り向けてきた。

米国とグリーンランドの利害関係は

Photographer: Mario Tama/Getty Images

グリーンランドは長年、世界の大国間の緊張の焦点となってきた。

グリーンランドはメキシコやサウジアラビアよりも広く、北大西洋と北極圏にまたがる戦略的要衝に位置する。この地域には重要な鉱物資源や化石燃料が豊富で、米国や中国、ロシアが狙っている。気候変動によるグリーンランドの氷床の急速な融解は、これらの資源へのアクセスを容易にする可能性があると同時に、北米、欧州、アジア間の通商の面でも、より短い航路が開けることにつながる。

トランプ氏は、グリーンランドのエネルギー資源や鉱物が自身の関心事であるという見方を否定し、同島の支配が米国の安全保障に必要だとしている。

グリーンランドには既に、最北端の米空軍基地と、ミサイル脅威の検知や宇宙監視に用いられるレーダー基地がある。米国は冷戦期には十数カ所以上の軍事施設を運営していたが、その後数十年にわたり規模を縮小してきた。

フレデリクセン氏は、米国がこの地域での軍事的プレゼンスを強化することを認める用意があるとしている。

グリーンランドの人々の考えは

世論調査によると、島民の圧倒的多数が米国への編入に反対している。

グリーンランドでは2025年3月の選挙後、全政党指導者が集まり、トランプ氏の姿勢を非難し、その行動を「容認できない」と表明した。ニールセン首相は「グリーンランドは買える家ではない」と明言し、トランプ氏との交渉でより強硬な姿勢を取る必要があると述べた。とはいえ、グリーンランドの議員の大半は、米国とのさらなるビジネス拡大には前向きだ。

トランプは武力行使なしでグリーンランドを掌握できるか?

トランプ氏がグリーンランド買収案を提起した2019年当時、グリーンランド大学のラスマス・リアンダー・ニールセン准教授は地元メディアに「2009年の自治法に『グリーンランド人は自決権を持つ』と明記されているため、デンマークはグリーンランドを売却できない」と説明した。

合意によってトランプ氏がグリーンランドを獲得する最善のシナリオは、同地域が独立のうえ、何らかの形で米国の一部となる合意に達することだ。実際、デンマークからの分離はグリーンランドで長年議論されてきたが、完全な独立が数年間で実現する可能性は低い。

トランプ氏のグリーンランドへの関心の高まりによって、住民の間ではデンマークからの分離が時期尚早だった場合に何が起きるかについて、不安や恐怖が募っている。2025年3月の選挙では、グリーンランド有権者の4分の3が、独立への緩やかな移行を進める方針の政党に投票した。

原題:Why Trump Is Obsessed With Taking Over Greenland: QuickTake(抜粋)

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